2021.01.24

引退を決めた吉田亜沙美からメッセージ「自分自身がプレーするより、教えたいという気持ちが大きくなっていきました」

指導者の道へと進む吉田亜沙美[写真]=バスケットボールキング
取材歴17年目でミニバス、中学、高校、大学、トップリーグに日本代表と様々なカテゴリーをカバー。現場の“熱”を伝えるべく活動中。

 今回、吉田亜沙美は慎重に引退の時を選んだ。

 長きに渡り日本の女子バスケット界を引っ張ってきた吉田は、日本はもとより、世界クラスの選手として国際大会で活躍。その実績はここで改めて詳細に振り返ることもないだろう。

 その吉田が2度目の引退に至ったのには、いまだ終息の兆しが見えない新型コロナウイルスの影響が大きい。1年延期となった東京オリンピック。その“1年”がベテランの域に達している吉田には大きかったのだ。

 吉田は2019年に1度、引退を宣言。だが半年後、現役続行を決意した。バスケットから少し離れた半年の間で、『バスケットをやりたい』『オリンピックに出たい』という思いが強くなったからだ。

 だからこそ、2度目となる今回は、じっくり、ゆっくり、そしてしっかりと吉田は自身の心と向き合ってきた。そして出した答えが『現役引退』――。

 今回、引退発表に至った経緯や引退後に進む予定である指導者への思い、またファンへのメッセージを特別に吉田本人から聞かせてもらった。

「東京オリンピックの延期が決まった時に、『1年伸びるのは厳しいな』という思いがありました。それでも、自分の気持ちとしてまた『やりたい』と思うかもしれないと思い、考える時間を持ちました。でも、半年経ってもバスケットをしたいという気持ちになりませんでした。

 年内までは考える時間にしようと決めていましたが、年を越しても何も思わなかったし、これ以上、自分の気持ちが変わることはないだろうと思い、自分の決断、決意を伝えることを決めました。

 前回はバスケットから離れ、自分の好きなことして、気持ちに余裕ができた時に『復帰したい』と思ったので、(今回も)時間を置いてみましたが、そういった気持ちにはならなかったし、自分自身がプレーするというよりは、教えたいという気持ちの方が大きくなっていったので、指導者としての道に進む準備をしようと思いました。

 1月中には決意を伝えておきたい、自分としてもスッキリしたいというのがありました。周りにもモヤっとした感じでしか伝えることができませんでしたし、いつまでもズルズルとしていたくなかった。SNSを通して、『今、何してるんですか?』『バスケットやらないんですか?』といった声もたくさんいただいていたので、けじめをつける意味もあります。応援してくれていたファンの方たちに、ちゃんと自分の言葉で伝えるという気持ちが固まりました。

 今は、『教えたい』という気持ちが大きく、この先、すぐにどこかのチームに行くといったようなことは決まっていないのですが、指導者としての勉強をしていきたいと思います。

『楽しい』と選手に思ってもらえるような指導者になりたいし、指導者は選手との信頼関係が大事なので、信頼してもらえるような指導者になりたいとも思っています。

 あとは(ポジションが)偏ってしまうかもしれないけれど、ポイントガードを教えたいという気持ちがすごくあります。ポイントガードたちと一緒に自分も成長していく、選手だけでなくて『この人と一緒にやっていれば、一緒に成長していける』と思ってもらえる指導者になりたいです。

 ファンの方たちには、半年以上、答えを出さずにハッキリしないままだったことを申し訳なく思っています。

 プレーはしないですが、自分の経験値や気持ちをポイントガードたちに伝えていけるように頑張っていきたいと思います。今までは(コートネームである)“リュウ”という選手として応援してもらいましたが、今度は指導者としての吉田亜沙美を応援してもらえればうれしいです」

高校3年生から日本代表に名を連ね、好成績を残してきた[写真]=バスケットボールキング

『コロナウイルスがなければ…』と思ってしまうのが正直なところだが、吉田自身は「それも人生」と受け止め、次に進もうとしている。

 世界で通用するポイントガードを育ててほしい。そんな思いを伝えると、吉田は「そうですね。それは私の夢です」とハッキリとした口調で答えてくれた。

 今回は短いインタビューとなったが、ロングインタビューは今後、どこかのタイミングで行い、お伝えできればと思う。

 まずは、その輝かしいキャリアで現役生活を終えたことを祝福するとともに、これまで華やかなテクニックや気迫あるプレーなどでバスケットの魅力を伝え、楽しませてくれたことに感謝の思いを伝えたい。

 プレーヤーから指導者へ。立場は変われど、彼女の挑戦はまだまだ続く。ワクワクするようなプレーを見せてくれる選手が彼女のもとから育つことを楽しみにしたい。

取材・文=田島早苗

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