2021.10.07

【短期連載・TOKYOの先へ】宮澤夕貴(富士通/女子日本代表)

富士通に移籍し、新天地で初のシーズンを迎える宮澤夕貴[写真]=Wリーグ
中学や高校、大学などの学生バスケットをはじめ、トップリーグや日本代表と様々なカテゴリーをカバー。現場の“熱”を伝えるべく活動中。

 東京2020オリンピックでは、3x3女子日本代表がメダルこそ届かなかったものの5位と健闘。そして5人制では快進撃を続けて準優勝、銀メダルを獲得した。

 日本だけでなく世界を熱狂させた日本代表選手たちにオリンピックのことや10月から始まるWリーグ、さらにはその先についての話を聞いた。

 第12回は3ポイントシュートを要所で決めてチームをけん引した宮澤夕貴(富士通レッドウェーブ)。トム・ホーバスヘッドコーチが率いる日本代表において、常に主力として国際大会で活躍を見せてきたシューターは、ケガを乗り越え、自国開催のオリンピックの舞台に立った。

「いつも変な自信がある時は大丈夫なんです(笑)」

――東京オリンピックでは見事な活躍でした。
宮澤 ケガから復帰をして、やっと自分らしさを取り戻すことができた大会でした。

――肩の故障が完治しないまま日本代表活動をスタート。焦りはありましたか?
宮澤 (活動当初は)オリンピックまで期間があったので焦りはなかったのですが、オリンピックまでの日数が短くなるにつれ、『そろそろ、やばいな』という焦りは出てきました。

 代表活動の最初の頃は、肩の調子が良くなかったこともあり、できることをやるしかないという状態でした。それからリハビリをして徐々に良くなっていったのですが、なかなかシュートの感覚が戻ってこなくて。シュートが短かったり、打った瞬間に入らないと分かったり。ゲームでシュートを決められるまでに感覚が戻るのはいつなんだろう、間に合ってほしいと思いながらやっていました。その時はとにかく打ち込むしかなかったし、練習するしかなかったです。それから段々とシュートタッチが良くなっていきましたね。

――合宿では選手選考も兼ねていたため、不安もあったのでは?
宮澤 『今できる100パーセントをやろう』、それでメンバーに入れなかったらしょうがないと思っていました。でもオリンピックまでには戻せる自信があったし、私はチームいた方がいい存在だという自信もあって。だからスタッフには『最後まで信じてほしい』と思っていました。

――その自信はどこから?
宮澤 分からないのですが、いつも変な自信があるときは大丈夫なんです(笑)。肩の調子も良くなってきていたし、練習でも自分のシュートになってきているのが分かっていたからかもしれません。

 実際、選考の頃は本当に良くなかったんです。でも、スタッフの人たちが信じてくれたし、みんなも期待してくれていた。それに選考から外れた選手たちの分も頑張らないといけないと思っていたので、『痛い』とか『パフォーマンスが…』とか言っている場合ではありませんでした。なので、練習から自分を追い込むようにしていて、パフォーマンスに関しては、(代表活動の)最後の方にグーンと上がった感じでした。

――5年前のリオの後、中心選手としてずっと日本代表を引っ張ってきました。その経験も宮澤選手を支えていましたか?
宮澤 そうですね。むしろそれでしかない気がします。しっかりしないといけないという気持ちが強かったし、(試合に出れば)キーマンになるとも思っていました。私がちゃんと仕事をできるかできないかが、チームのプラスにもマイナスにもなると感じていました。

――オリンピック本番では3ポイントシュートに徹していた?
宮澤 私の仕事はディフェンスとリバウンド、3ポイントシュートでした。4番ポジションだったので、なおさら3ポイントシュートを打つチャンスはあると思っていました。しっかりシュートを打って決め切ることを一番に考えていました。それに加え、ボックスアウトとディフェンス、特にディフェンスは3番ポジションの時よりもアクティブにやることを意識しました。

――自身の出来はどのように感じてますか?
宮澤 ディフェンスでは良かった時もあれば、オフェンスリバウンドを相手に取られてしまった時もあったので、以前の方が良かったかなと思います。オフェンスでは、3ポイントシュートの確率も良かったし、自分の仕事はできたと思います。

 ただ、決勝のアメリカ戦のように、3ポイントシュートをアジャストされた後、本当ならドライブなどで攻めたかったのですが、東京オリンピックでそれができなかったのは、リオからここまでの自分のステップアップ不足でした。シューターとしてしかコートに立てなかったので、パリまでにはその点を強化したいです。

――メダル獲得につながった要因は?
宮澤 個々の気持ち。みんな自信があったと思います。一人ひとりがやるべきことをやって、それがチームとして一つになった時に、爆発的に強いチームになると感じていました。

 合宿が始まった当初は、タクさん(渡嘉敷来夢/ENEOSサンフラワーズ)やナコ(本橋菜子/東京羽田ヴィッキーズ)がケガをしていて、私も調子が悪く、目標の金メダルは厳しいかなとも思いました。でも、メンバー12名が決まり、国際強化試合などを経て、『あ、これいけるな』『金メダル目指せるチームだな』と、私自身は感じていました。

――宮澤選手自身、2回目のオリンピックで得られたものは何でしたか?
宮澤 やっぱり結果ですね。それと、自分自身もリオから成長できたのではないかなと思っています。

 

オリンピックでは大事な場面での3ポイントシュートが光った[写真]=fiba.com

新天地での初となるシーズン「新しい自分を見せたい」

――話は変わり、今シーズンはENEOSから富士通に移籍した1年目のシーズンです。
宮澤 ENEOSのように絶対的なビックマンがいるわけではなく、富士通は全員で動いてチャンスを作るバスケット。それは新鮮だし、やっていておもしろいです。3ポイントシュートが生きるチームなので、私にもすごくチャンスがあると思います。

――BTテーブスヘッドコーチから役割として言われていることは?
宮澤 オフェンスでは3ポイントシュートだけではなく、ペイント内のシュートやジャンプシュートも打ってほしいということ。ディフェンスでは、3番ポジションで出るなら今までとは違うディフェンスになるので、そういったことにも早く慣れてほしいと言われています。オフェンスは適応できていると感じていて、今までジャンプシュートをあまり打ってこなかったけれど、積極的に打っていきたいと思っています。リング下のプレーなどは久しぶりで、新しいことをやっている感じがしますね。

――開幕が迫っている中での焦りもなさそうですね。
宮澤 自分自身は徐々に調子を上げていけば大丈夫だと思っています。でも、チームとしては、優勝までにやることはまだまだあるなと感じています。開幕前にやっておかないといけないことを毎日の練習で積み重ねてクリアしないと。ピリッとした雰囲気で練習しないといけないですね。

――富士通で新しいパフォーマンスを見せつつ、これまでの優勝経験をチームに還元するということですね。
宮澤 それを求められていると思うし、やらなくてはいけないことだとも思っています。

――移籍1年目ですが、役割は多いですね。
宮澤 はい。富士通が強くなったと周りから言ってもらっているし、期待に応えたいという気持ちがあります。でも、楽しみたいという気持ちもあるので、いろんな思いがありますね。

――最後に、今シーズンの抱負をお願いします。
宮澤 3ポイントシュートは自分の役割としてしっかり決めること。それ以外でもジャンプシュートなど、新しい自分を見せたいと思っています。あとはリバウンドにも貢献して、富士通の速い展開に持っていけるように、しっかりとチームを引っ張っていきたいです。

取材・文=田島早苗

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