2022.09.26

【W杯対戦国紹介】国際大会3連勝中…新エースを軸にパリ五輪に向けて新体制でスタートしたフランス

東京オリンピック以来の対戦となるフランス代表[写真]=fiba.com
スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者に。国内だけでなく、取材フィールドは海外もカバー。日本代表・Bリーグ・Wリーグ・大学生・高校生・中学生などジャンルを問わずバスケットボールの現場を駆け回る。

 FIBAワールドカップ、グループフェーズ4戦目。1勝2敗と負けが先行して、背水の陣で臨む日本が戦うのはFIBAランキング6位のフランスだ。昨年の東京オリンピックでは2連勝した相手。日本は初戦でフランスに74-70で勝ったことで波に乗り、準決勝でも87-81で快勝して銀メダルへと駆け上がった。そして2016年のリオデジャネイロ・オリンピックでもグループフェーズの最終戦で戦い、79-71で勝利している(ただし、フランス、トルコ、日本が3勝2敗で並んだため、得失点差の関係でフランスがグループ2位、日本が4位)。近年の国際大会では3連勝している相手だ。

 昨年の東京オリンピック後、フランスは自国開催の2024年パリ五輪に向けて新たな体制をスタートさせている。2012年から東京オリンピックまで続いた女性指揮官のヴァレリー・ガルニエヘッドコーチの後任として迎えられたのはジャン・エメ・トゥーパンHC。選手構成は30代が5名いたベテランチームから平均26歳のチームへと若返った。特に、得点とリバウンドの面で大黒柱だった35歳のサンドリーヌ・グルダが外れたことはフランスにとって大きな変化といえよう。

自国開催のパリ五輪に向けて、チームの若返りを図ったジャン・エメ・トゥーパンHC[写真]=fiba.com

 新体制の船出ということもあるが、2月のワールドカップ予選では不安定さを露呈。マリには勝利したものの、ナイジェリア戦を65-67の1ゴール差で落とし、中国には70-103で完敗。なんとか1勝を挙げて出場権を得た状態だった。さらにアクシデントは続く。新チームの突破口を開くキープレーヤー、マリヌ・ジョアネス(177センチ/27歳)がシドニー入りしてから負傷のアクシデントに見舞われてエントリー変更。大会直前に軸となる選手を欠いたことは大きな痛手だった。

 そんな逆境の中で迎えたワールドカップで新エースが生まれた。開幕ゲームで開催国のオーストラリアから勝利を奪う立役者となったのが、身体能力を生かしたフォワード#15ギャビー・ウィリアムズ(180センチ/26歳)だ。

新エースのギャビー・ウィリアムズは、ここまでの3試合で平均得点、リバウンド、アシストとすべてでチームトップをマークしている[写真]=fiba.com

 フランスとアメリカの二重国籍を持ち、フランス国籍を選んだことで2021年に代表入り。東京オリンピックの1カ月前に開催されたユーロバスケット(ヨーロッパ大陸選手権)で代表デビューを飾り、東京オリンピックでは3位決定戦のセルビア戦で躍動して銅メダル獲得に貢献した選手である。シーズンが終了したばかりのWNBAでは、シアトル・ストームの中心選手としてセミファイナル進出。名門コネチカット大では2015年と2016年にNCAAトーナメント連覇を経験している。キャリアの面でも申し分なく、今後のフランスの顔となる選手がシドニーで誕生したといえるだろう。

 ここまでの3試合でウィリアムズは平均16.7得点、6.0リバウンド、3.0アシストとオールラウンドに活躍してチームをけん引。現在のフランスはすべての面においてウィリアムズが起点となっているため、何よりもウィリアムズ対策が必要となるだろう。

 そのほかの注目選手では、ウィリアムズに次ぐ得点源のパワーフォワード#6アレクシア・シャルトロー(190センチ/24歳)、若き司令塔の#4マリヌ・フォトゥー(176センチ/21歳)、リバウンドやアシストでチームを支えるベテランの#10サラ・ミシェル(180センチ/33歳)らがあげられる。

新たなエースの脇を固めるアレクシア・シャルトロー(中央)とマリヌ・フォトゥー(右)[写真]=fiba.com

 ただ、開幕ゲームで華々しく開催国を破ったフランスだが、その後は若返った脆さからか、カナダの鉄壁守備の前には45点しか取れず、マリには終盤まで競って苦戦をしいられている。今大会の日本はシュートセレクションの悪さが目立っているが、フランスも同様で3ポイントの確率はお互い30パーセントを切っている。3試合終了した時点で日本は28.7パーセントで8位、フランスは23.2パーセントで最下位(12位)だ。

 安定した力が出せないとはいえ、すでにフランスはオーストラリアとマリから勝利をあげて2勝をマークしている。また国際大会で3連敗中の日本に対しては目の色を変えて戦いに来るだろう。日本は目の前の1勝を確実にもぎ取りにいくことに集中したい。

若いチームを支えるベテランのサラ・ミシェルにも要注意だ[写真]=fiba.com

文=小永吉陽子

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