2023.04.04

【インタビュー】銀メダリスト・本橋菜子が振り返る復帰への道程とたくさんの気づき

ケガをしたからこその気づき、そして周囲への感謝の気持ちを語ってくれた本橋菜子 [写真]=野口岳彦
中学や高校、大学などの学生バスケットをはじめ、トップリーグや日本代表と様々なカテゴリーをカバー。現場の“熱”を伝えるべく活動中。

2021年夏の東京オリンピックまで1年を切った2020年の11月。本橋菜子は、右ヒザ前十字靭帯損傷という大ケガを負ってしまった。大学4年生のときに続いて2度目の負傷。それでも、不屈の精神と並々ならぬ努力を重ねて東京オリンピック出場を果たすと、大会では銀メダルを獲得する。一時は絶望も味わいながらも、あきらめずに夢を追った本橋にケガとの向き合い方やヒザのケアについて話を聞いた。

インタビュー・文=田島早苗
写真=野口岳彦

■後悔のないように歩んだ復帰への道

――ヒザのケガについて話をうかがいたいのですが、改めて東京オリンピック前にケガを負ったときは、どのような思いだったでしょうか?
本橋
 目の前が真っ暗になりましたね。オリンピック開催まで1年を切っていたし、一度同じケガをしていたので、どれくらいのケガで、自分のパフォーマンスを取り戻すまでにどれくらいの時間を要するかもわかっていました。それもあって、直後は「東京オリンピックは厳しいんだろうな」というのが正直な思いでした。

――それでも、早い段階で東京オリンピックを目指すと宣言しました。
本橋
 診断後、(当時女子代表の)トム・ホーバスヘッドコーチや日本代表のトレーナーの方々と話をしましたが、100パーセント全力で取り組めば可能性はゼロではないということでした。ギリギリではあったけれど、最初から諦めるのではなく、どんな結果になろうとやれるところまではやり切ろうと。そうなったらもう、1日1日、1分1秒もムダにできなかったので、すぐに(気持ちを)切り替えて前向きに取り組みました。

 リハビリ中は苦しい思いもあったのですが、オリンピックに間に合うかどうかの不安はあまりなく、後悔がないようにできることは全部やって、それでダメなら仕方ないという気持ちでした。

――そのころのモチベーションは何だったのでしょう。
本橋
 オリンピックに出るという目的があったからですね。これまで支えてくれた人、一緒に乗り越えてきた仲間、家族や恩師、いろいろな方たちにオリンピックの舞台に立つ姿を見てもらうことで『恩返し』をしたいと思っていました。

 それに、私自身はケガでしたが、ケガではなくても同じように苦しんでいる人は世の中にたくさんいて、そういった人たちが希望を持つキッカケになればいいなというのも、自分の中ではモチベーションにつながった一つの要因でした。期限が決まっていたので、東京オリンピックまでの期間で全力を出すという一心でしたね。

――リハビリ中に気づきのようなことはありましたか?
本橋
 一度目のケガのときに、当たり前のようにバスケットをやっていると、バスケットができるありがたみを忘れがちになってしまうということに気づきました。ケガでバスケットができない期間を得ると、バスケットができることは当たり前ではないと感じますし、支えてくれる人たちが周りにいることもより実感します。リハビリは孤独も味わうのですが、その分、これまで当たり前だったことに気づくことができ、それがパワーになって自分自身に返ってくる。バスケットが楽しいと改めて思うし、初心に帰る感覚にはなります。でも、それも復帰した今だからこうやって語れるのであって、(リハビリの頃は)いつもそういった気持ちでいたかといえば、そうではないんですけどね(笑)。

[写真]=野口岳彦


――東京オリンピックに向けては不安もありましたか?
本橋
 代表合宿が始まったころは、みんなの練習をコートの端から見ていましたが、徐々に非対人の練習から合流していきました。でも、できるプレーが増えると、「大丈夫かな」「以前のようなパフォーマンスに戻るのかな」という不安も出てきて。ほかの選手とのプレーの差も感じて焦りはありました。

――それでも悲願の東京オリンピック出場を果たします。
本橋
 オリンピック出場が私の夢になってからの数年は、バスケット人生のすべてを懸けたといっても過言ではないぐらいだったので、出場が決まったときはうれしかったですし、「スタートラインには立てたんだ」という気持ちでホッとしました。でも、その思いは一瞬で消えるほど、責任とプレッシャーも感じました。夜も眠れないくらいで、ぐっすり眠れた記憶はほとんどないです。

――東京オリンピックで銀メダルを手にしたときは?
本橋
 達成感を感じましたし、ホッとしました。やり切ったという思いもありましたね。一人では絶対にたどり着けなかったので、いろいろな人たちの支えの中であの場に立ち、メダルもかけてもらうことができたので、感謝の気持ちでいっぱいでした。

■ヒザへのストレスを感じないサポーター

[写真]=野口岳彦


――さて、ケガの話に戻りますが、ケガをしてしまったとき、どう向き合い、捉えるようにしていましたか?
本橋
 ケガは良いこととは言えないのですが、ケガをしなければ気付けないことや感じられない感情もあります。人それぞれではありますが、私はケガをキッカケに様々なことに気付くことができました。

――ケガの予防で普段から意識していることは?
本橋
 食事、睡眠、トレーニングはどれも重要で、食事は栄養バランスを考えること。また、疲労の蓄積はケガにもつながりますが、だからといってトレーニングをしないわけにもいかないので、トレーニングと休養のバランスは気をつけています。

――プレーではサポーターの重要性も感じているのではないですか?
本橋
 ケガをすると、もう一度ケガをしてしまうのではないかという不安がよぎるのですが、サポーターすることによって安心感を得られますし、思い切りプレーができます。

 バスケットは特に方向転換など切り返しが多いスポーツなので、横にも縦にもヒザが動きます。サポーターをしないで、それに耐えられる足を作ることが一番ではありますが、サポーターをつけることで横へのブレを抑えてくれるので、支えられている感じはありますね。

――ハードサポートタイプのザムスト『ZK-PROTECT』にはどのような印象を持っていますか?
本橋
 これは本当に固定力があります。テーピングと同じ機能がこのサポーターに全部入っているぐらい。それに、固定する力が強過ぎず、程よいので動きやすい。着脱もしやすいです。復帰直後は、ヒザに何も付けていないとケガの再発の怖さがあるので、そういう時期に着けるサポーターとしてオススメです。

――次にザムスト『ZK-MOTION』の感想を教えてください。
本橋
 ストレスなくプレーができるサポーターですね。足にぴったりと密着しているので安心感があります。あと、サイドに「ファンクショナルステー」が入ってるのですが、これがポイント。サポーターで全体を圧迫するだけでなく、この「ファンクショナルステー」が内蔵されていることによって左右のぐらつきが抑えられている感覚もあるんです。復帰からある程度時間が経ち、少しサポーターも軽めにしたいなと思っている方に合うのではないでしょうか。

[写真]=野口岳彦


――4月になり、新しい年度の始まりです。改めて中高生にメッセージをお願いします。
本橋
 中学から高校、高校から大学へ進学するこの時期は大きなケガをしてしまう選手が多いと聞くので、まずはケガに気をつけてほしいです。
 
 ケガをしている選手は、ケガにどう向き合うかが大事だと思います。(復帰までの)大変さも身に染みて分かるので、ずっとポジティブにいるようにとは言えないのですが、ケガを乗り越えた先にどういう自分でいたいか、向き合い方次第で、のちに「いい経験だった」「あの経験があったから今がある」と思えるような自分に出会えると思います。

 苦しいことの方が多いですが、ケガをキッカケに何か変われるように。ケガを乗り越えて成長できたと感じた選手はWリーガーの中にもたくさんいます。自分自身もそうなれるんだと信じて、負けずに立ち向かってほしいです。

■本橋選手 着用ザムスト製品

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