2019.02.18

「手応え」から「自信」へ…強豪国の指揮官たちを驚かせた成長スピード

4チーム中3位という結果に終わったが、その内容には日本の成長がはっきりと映し出されていた[写真]=エックスワン
新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年よりスポーツ専門ウェブサイトで記事を執筆。車いすバスケットボールの取材は11年より国内外で精力的に活動を開始。パラリンピックは12年ロンドンから3大会連続、世界選手権は14年仁川、18年ハンブルク、アジアパラ競技大会も14年仁川、18年ジャカルタの各大会をカバーした。

女子車いすバスケットボールの国際親善大会として、今年で13回目を迎えた「大阪カップ」が17日に幕を閉じた。今大会には昨年の世界選手権で金メダルに輝くなど、世界最強国に君臨するオランダ、そのオランダに次ぐ実力を持つイギリスが参加し、まさに世界トップレベルの戦いが繰り広げられた。そんな中、大きな成果を挙げたのが日本だ。強豪国の指揮官たちをも驚かせた成長ぶりは、目を見張るものがあった。2020年に向け、加速し始めた日本の姿に迫る。

文=斎藤寿子
写真=エックスワン

クリアされた3つの課題

 今大会、日本は参加国4チーム中3位。4試合で2勝2敗という結果だった。だが、その内容には、日本の成長がはっきりと映し出されていた。

 開幕前、キャプテンの藤井郁美はこう語っていた。

「もう『いい経験』というだけで終えられる時期ではない。しっかりと勝負したいと思います」

 まさに有言実行だった。イギリス戦、オランダ戦ともに、日本は前半でリードを奪い、世界の金、銀メダルチームを慌てさせた。結果的に負けはしたものの、イギリスにはわずか6点差、そしてオランダからは今大会最多の54得点を奪ってみせた。

 今大会で見えた成果は多々あったが、なかでも、これまで常に挙げられていた課題がクリアされていたものが3つあった。

 1つは「試合の入り方」だ。これまで第1クォーターで相手に大きくリードを許すケースが少なくなく、先に主導権を奪われ苦しい展開となっていた。しかし、今大会ではイギリス戦で14-8とリードし、オランダ戦は11-12と互角に渡り合った。この好スタートが最後まで競り合う要因の一つとなっていた。

 2つ目はボールマンへのプレッシャー。「ドリブルでボールを運ぶ選手に対してのプレッシャーが遅く、ズルズルと自陣に下がってしまい、ゴール付近に攻め込まれてしまった」。これまでよく耳にしていた反省の言葉は、今大会では一度も聞かれなかった。実際、ボールマンに素早くプレッシャーをかけることで、相手のミスを誘い、攻撃の芽を摘んだ。そのため、オランダは2ケタのターンオーバーを記録している。

 そして、得意のオールコートのプレスだけではなく、「ティーカップ」と呼ばれるハーフコートのディフェンスも、しっかりと機能し、ペイントエリア内での得点は非常に少なかった。

今大会は第1クォーターから強豪相手と互角の戦いを演じた[写真]=エックスワン

チームにもたらされた大きな自信

 実は、大会開幕1週間前に行なわれたオランダとの親善試合、日本のプレーは不安定さが否めなかった。昨年、4カ国が参加した国際親善試合「コンチネンタルクラッシュ」(イギリス)や、国内で開催されたオーストラリアとの国際強化試合では、常に一歩一歩、チームの成長が感じられていた。それだけに勝敗とは別に、オランダ戦では日本の強さを見出すことが難しいその内容に、「どうしたのだろうか」と若干の不安を覚えた。

 しかし、それをプラスに変える力がチームにはあった。オランダ戦からわずか1週間という短い期間の中、今ある課題を明確にし、岩佐義明ヘッドコーチの指導の下、選手たちは自分たちでも積極的に話し合いを重ねながら、戦略を図ってきたという。

「あのオランダ戦があったからこそというところもあったと思います。短期間でしっかりと修正できた。これもチームが成長した部分だと思います」と藤井郁は振り返った。

 そして全日程を終え、大会を通しての感想を聞くと、どの選手たちからも聞こえてきたのは、「自信」という言葉だった。

「これまでやってきたことが間違いではなかったことが証明されたので、東京までの1年半、チームで自信を持ってトレーニングを積んでいきたい」と清水千浪。藤井郁も「強豪国に対して、日本の速い攻めやディフェンスがしっかりと機能していて、相手がとても嫌がっているのも伝わってきました。世界でも十分に戦えるという自信をチームにもたらした大会になったと思います」と語った。

 思えば、これまで「手応え」は耳にしてきたが、「自信」という言葉を彼女たちからこれほど多く聞かれたことはなかった。いかに今大会でチームにもたらされたものが大きかったかがわかる。

 もちろん、これが日本の強さの頂点ではない。昨年、指揮官やコーチが代わり、新チームとしてスタートを切って以降、これまで最も重視してきたのは「ベーシック」。もう一度、基礎の部分に立ち返り、見つめ直すことから始まった。戦略的な部分はいたってシンプルなことのみで、本格的に作り上げていくのはこれからだ。つまり、今の日本には選手たちがよく言うように「伸びしろしかない」。無限大の可能性を持っているチームなのだ。今後、さらなる成長が期待される。

自信をつかんだ日本は、今後のさらなる飛躍が期待される[写真]=エックスワン

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