2019.03.25

車いすバスケ女子U25、世界選手権に向けて「チーム力」強化

5月にタイで開催される女子U25世界選手権に向け、準備を進める車いすバスケットボール女子U25 [写真]=斎藤寿子
新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年よりスポーツ専門ウェブサイトで記事を執筆。車いすバスケットボールの取材は11年より国内外で精力的に活動を開始。パラリンピックは12年ロンドンから3大会連続、世界選手権は14年仁川、18年ハンブルク、アジアパラ競技大会も14年仁川、18年ジャカルタの各大会をカバーした。

 3月21日から25日の5日間にわたって、大阪市舞洲障がい者スポーツセンター「アミティ舞洲」では、車いすバスケットボール女子U25の強化合宿が行われている。23日には2時間ほどの練習をメディアに公開。5月にタイで開催される女子U25世界選手権まで残り2カ月となった今、チームはさらなる強化を図るべく、山﨑沢香ヘッドコーチの下、丁寧な指導が行われていた。

成長を促したオーストラリア遠征

遠征を通じて「自分たちの可能性を見出せた」と明かした指揮官 [写真]=斎藤寿子

 今年1月、女子U25代表候補の13人中9人がオーストラリア遠征に臨み、約1週間、現地の国立スポーツ研究所でトレーニングおよび女子U25オーストラリア代表候補との練習試合を行った。

 A代表にも入っている柳本あまね、財満いずみの2人を除き、全員が初の海外遠征という中、「勝つ喜び」と「負ける悔しさ」を存分に味わった選手たちは、スキルアップや実戦感覚を養っただけでなく、メンタル面でも大きな成長を遂げて日本に帰国した。

 それ以来の合宿となった今回、キャプテンの山﨑佳菜子はチームに変化を感じていた。

「これまでの国内合宿の時とは明らかにチームの雰囲気が違います。オーストラリア遠征前は、単に集まって練習するという感じだったのが、今は世界選手権で勝つために練習しているという意識が強い。オーストラリア遠征は、チームにとって大きな転機となったと思います」

 一方、山﨑HCも「オーストラリアでは様々な挑戦をすることができたおかげで、選手たちも自分たちの可能性を見出せたと思います」と成果を感じている。

 そのオーストラリア遠征には参加できなかった残りのメンバーも含め、今回は女子U25代表候補の13人全員がそろった。改めてチーム作りが再開となった中、今回の合宿のテーマに掲げられたのは「チーム力」。山﨑HCによれば、あえて指揮官からはテーマを出さず、「自分たちはこれからどうしていきたいのか」を問う意味でも選手たちに決めさせたのだという。

 今回「チーム力」をテーマとした理由について、山﨑キャプテンはこう説明する。

「勝つために一番の武器となるのは、やっぱりチーム力だなと。これまでのように仲が良いというだけでなく、それこそオーストラリア遠征を機に戦うチームになってきた中で、何でも言い合える信頼感が自分たちにはある。それがコート上のプレーでも発揮することができれば、一番の強みになると思っています」

チーム力発揮につながる広い視野

男子選手との練習で様々な課題も見つかった [写真]=斎藤寿子

 今回の合宿は、男子U23の育成選手と合同で行われたこともチームにプラスとなっている。「男子U23は、スピードも速いし、声も大きくてすごい迫力を感じています。そんな同世代の選手たちが同じ空間で練習していることで、大きな刺激をもらって自分たちも良い練習ができています」と山﨑キャプテン。自分たちだけで行われる通常の合宿とは違う雰囲気が、選手たちのモチベーションアップにつながっている。

 公開された練習では、主にチェアスキルやポジション取りなど、1on1や2on2でのディフェンスについての細かい指導が行われていた。そうした中、陥りがちだったのが車いすの操作に意識がいきすぎて、目線が下になってしまうことだ。

「目線を上げることで、広い視野を持ち、多くの情報を得ることができる。そうすれば、味方の良い部分を活かすこともできるし、お互いのコミュニケーションでミスを回避することもできる。チーム力というからには、お互いに補うことが大切。そのためにも、まずは目線を上げることが重要」と山﨑HCは語る。

 本番まで残り2カ月。果たして、どこまで課題をクリアにして世界に挑むことができるのか。この合宿が終われば、チームでの練習は残り2回。各自が合宿以外の日々をどう過ごすかが、さらなる成長への糧となるはずだ。

文・写真=斎藤寿子

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