2019.05.22

香西宏昭、準Vも両チーム最多得点の活躍!

敗れはしたものの両チーム最多となる23得点を挙げた香西宏昭 [写真]=斎藤寿子
新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年よりスポーツ専門ウェブサイトで記事を執筆。2011年よりパラリンピック競技を中心に、国内外で精力的に活動を開始。パラリンピックは12年ロンドン、16年リオ、18年平昌、アジアパラ競技大会も14年仁川、18年ジャカルタの各大会をカバーした。

 5月18日、車いすバスケットボールのブンデスリーガ、プレーオフ・ファイナル第2戦が行われた。前リーグ覇者で2週間前のヨーロッパクラブ選手権ではすでに連覇を決めて勢いに乗るRSBテューリンギア・ブルズ。一方、日本人で唯一のプロプレーヤー香西宏昭が所属するRSVランディルは、先週のホームゲームとなった第1戦を落とし、後がない状況の中、背水の陣で臨んだ。結果はブルズが73-70で接戦を制し、リーグ連覇を果たした。しかし、この試合で最もコート上で輝いていたのは、日本のエース香西だった――。

脅威的なシュート成功率で逆転へ

 世界最高峰のリーグチャンピオンを決めるファイナルにふさわしく、最後までどちらが勝つかまったくわからない、手に汗握る展開が繰り広げられた。

 第1クォーターは、ブルズのマット・スコット(アメリカ)が得意のカットインプレーで次々と得点を挙げ、勢いに乗って3Pも決める活躍を見せた。だが、ランディルにしてみれば、最も警戒すべきハイポインター陣にはしっかりとディフェンスが機能していただけに、それほど悪い出だしではなかった。

 しかし、終盤に連続得点を奪われ、14-23。ユーロカップの準決勝、そして前週のプレーオフ・ファイナル初戦はいずれも前半で一気に離され、試合を決められていた。それだけに、ランディルの指揮官はこれ以上は離されてはいけないと考えたのだろう。フィリップ・ハフェリ(スイス)がすでに2つのファウルを犯していたこともあり、すぐに選手交代を決意。第2クォーターのスタートで香西を投入した。

 すると、香西のシュートがさく裂。第2クォーターでランディルが挙げた27得点のうち、3分の1の9得点をたたき出し、3Pを含めたフィールドゴールの成功率は80%を誇った。この香西の活躍で主導権を握ったランディルは、41-35と逆転に成功した。

 第3クォーターにはブルズの猛追にあうも、ランディルは59-57とかろうじてリードを守った。

 しかし、第4クォーターに入ると、ランディルにミスが出始め、残り6分半でブルズに同点に追いつかれてしまう。そして、すぐに逆転を許したランディルは、なんとかリズムを変えたいと思ったのだろう。香西をベンチに下げ、ハフェリをコートに戻した。ところが、逆に一気に引き離され、残り1分20秒のところで、ランディルの指揮官はたまらず香西を再び投入。香西はすぐに3Pを決め、チームを鼓舞した。残り1分を切ったところで68-72。逆転の可能性は十分にあった。

 残り時間が15秒を切ると、ランディルはファウル・ゲームへと持ち込んだ。フリースローを1本決められ、残り6秒5で68-73。ほとんどが地元ブルズの応援の観客席では優勝を確信したかのように大歓声があがった。

「最多得点はチームプレーの結果」

「僕を信頼してくれてパスを出してくれたチームメイトに感謝したい」と謙虚な姿勢を崩さない香西 [写真]=斎藤寿子

 だが、まだ試合は終わらなかった。ランディルのスローインから始まったこの場面、ボールサイドに相手が気を取られている中、その裏を突くようにしてトーマス・ベーメ―(ドイツ)がインサイドに入り、シュートを決めた。

 そして、再びランディルはファウル・ゲームに持ちこむと、緊迫した状況の中で手元が狂ったのか、ブルズのアレクサンダー・ハロースキー(ドイツ)が珍しくフリースローを2本ともに落とした。

 その2本目のシュートが外れるや否や、ランディルはすぐに最後の攻撃へ転じた。残された時間は3秒7。リバウンドから素早くパスをつなぎ、最後はベーメ―が3Pラインから相手がジャンプアップしてくる中、倒れこみながら、それでもきちんと狙いを定めたシュートを放った。

 しかし、惜しくもシュートは外れ、その瞬間、試合終了のブザーとともに、ブルズのリーグ連覇達成が決まった。

 結局、今シーズン、ランディルはブルズに一度も勝つことができずに、昨シーズンと同じ準優勝となった。しかし、この試合は互角に渡り合った、まさに”ライバル対決”にふさわしい内容だった。

 そして、特筆すべきは香西のスタッツだ。両チーム最多となる23得点を挙げ、フィールドゴール成功率は66%。2Pに限っていえば77%を誇った。また、3Pはチームで挙げた4本のうち3本を香西が決めるなど、MVP級の活躍を見せた。

 だが、試合後の香西には浮かれている様子は微塵も感じられなかった。

「このチームでのスタイルの中では僕がシュートを打つ役割を担うことが多くて、今日は運よく入って最多得点ということになったけれど、それはすべてチームプレーによるもの。僕を信頼してくれてパスを出してくれたチームメイトに感謝したいなと思います」

 どんな結果にも、一喜一憂せずに、やるべきことをやり続ける――。今の香西には、そんなブレない芯の強さがある。

文・写真=斎藤寿子