2019.05.24

女子U25車いすバスケ世界選手権開幕!日本は前回覇者に善戦も黒星スタート

初戦を落とした車いすバスケットボール女子U25日本代表 [写真]=斎藤寿子
新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年よりスポーツ専門ウェブサイトで記事を執筆。車いすバスケットボールの取材は11年より国内外で精力的に活動を開始。パラリンピックは12年ロンドンから3大会連続、世界選手権は14年仁川、18年ハンブルク、アジアパラ競技大会も14年仁川、18年ジャカルタの各大会をカバーした。

 5月23日、タイで「女子U25世界車いすバスケットボール選手権大会」が開幕した。2011年から4年に一度行われている女子のジュニア世代の世界一決定戦。第3回大会となる今回は、世界から8カ国が集結した。日本は予選プール第1戦でイギリスと対戦。前回大会覇者で連覇を狙う強豪との一戦は相手をロースコアに抑えて善戦したが、思うように得点が伸びず、30-47で敗れた。

イギリスからも感じられた初戦の難しさ

女子日本代表は、前回王者に対し、善戦するも敗れた[写真]=斎藤寿子

 日本は初戦でいきなり大きなヤマ場を迎えた――。

 今大会は4チームずつ2つのプールに分かれて予選リーグを行い、その順位によってトーナメントが組まれる。その大事な初戦で日本の前に立ちはだかったのがイギリスだった。

この試合が国際大会デビューとなるフレッシュな選手が多い日本に対し、イギリスは昨年ドイツで行われたA代表の世界選手権銀メダルメンバー5人を擁する。そのうち2人はスタメンを張るほどの中心選手。世界選手権に出場したメンバーが数多く揃うアメリカとともに、今大会の優勝候補の筆頭とされる強豪だ。

 経験値の差からすれば、スタートから一気に引き離される可能性もあった。イギリスも勢いをつけて波に乗りたかったに違いない。しかし、やはり初戦ということもあり、意外にも緊張の度合いは日本とイギリスとではそう違いはなかった。

 第1クォーター、日本は得意のピック&ロールで財満いずみがレイアップシュートを決めると、相手のターンオーバーからのチャンスに江口侑里もしっかりとシュートを決めるなど、イギリスに食らいついていった。

 しかし、両サイドから2on2でシュートチャンスを作ろうとする日本に対し、高い位置でジャンプアップしてくるイギリスのディフェンスに苦戦。なかなかゴールに近づくことができず、遠い位置からミドルシュートを狙いにいくしかない状況の中、得点を決めることができなかった。

 その一方で、イギリスもまた、シュートの確率が上がらなかった。特にA代表においても主力の一人であるジョイ・ハイゼルデンが得意のカットインプレーやミドルシュートで得点を狙うも、ことごとくリングに嫌われた。これが初戦の難しさなのか、ハイゼルデンはほぼフル出場してチームの司令官役を担ったが、自身の調子は最後まで取り戻すことができず、フィールドゴールの成功率はわずか12%にとどまった。

FG成功率100%の財満がチームを鼓舞

放ったシュートすべてを沈め、チームを鼓舞した財満 [写真]=斎藤寿子

 翻って、すべてのシュートを確実に決め、チームを鼓舞したのが日本の財満だ。持ち点1.0の財満はA代表ではどちらかというとハイポインターを生かす役割に徹することが多い。しかし、U25では柳本あまねとともに国際大会を経験している数少ない選手だけに、自らが得点を狙うシーンも少なくない。

 この試合、財満は5本すべてのシュートを決めてみせた。しかもそのほとんどが「ここぞ」という時の大事な場面。チーム初得点はもちろん、第2クォーターでは日本のシュートがことごとくリングに嫌われ続けた中、終了間際に決めたのが財満だった。さらに続く第3クォーターでもチーム最初の得点は財満だった。

 そしてなかでも印象的だったのは、第3クォーター残り2分半、タイムアウト明け直後に決めたミドルシュートだ。タイムアウトがとかれ、試合再開となったばかりの相手ディフェンスの一瞬の“隙”をついた見事なシュートだった。

 結局、試合は両チームともに調子が上がり切らず、お互いにロースコアにとどまった。結果はイギリスが一度も逆転を許さず、リードを保ったまま47-30で勝利を収めた。

「ディフェンスは練習でやってきたことがうまくいったと思います。ただ、自分たちでチャンスをつかみきれなかった。そこがこの点差になってしまったかなと思います」と山﨑沢香ヘッドコーチ。傍からみれば、強豪相手に“善戦”と言っていい試合だったが、指揮官は納得してはいない。

「何も失うものはないのだから、とにかく闘争心を出して思い切ったプレーをしてほしいと思っていました。そこから結果につながっていくだろうと思っていたのですが……」

 最後は言葉を濁したところに、山﨑HCの選手たちへの期待の大きさがうかがえた。「もっともっと出せる力があるはず」。指揮官はそう思っているに違いない。

 そして、それは選手たちも同じ気持ちなのだろう。キャプテンの山﨑佳菜子はこう語った。
「私たちの武器はトランジション。でも、今日は切り替えが遅かった。明日からの試合では自分たちのトランジションバスケをしっかりとやって、決勝でイギリスにもう一度挑みたいと思います」

 白星スタートとはならなかったが、ほとんどが初の国際大会という若いメンバーで難しい初戦、しかも優勝候補が相手というこの試合でチームが崩れることはなかった。このことはチームにとって大きな意味を持つはずだ。

 初戦を終えて緊張感もほぐれたことだろう。次戦からは指揮官も納得する“闘争心”がコート上でさく裂するに違いない。日本は24日、南アフリカと対戦する。

写真・文=斎藤寿子

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