2019.06.16

車いすバスケ男子日本代表、親善試合で圧勝も残された課題

車いすバスケ男子日本代表は2連勝で大会をスタート(写真はシュートする秋田啓) [写真]=斎藤寿子
新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年よりスポーツ専門ウェブサイトで記事を執筆。車いすバスケットボールの取材は11年より国内外で精力的に活動を開始。パラリンピックは12年ロンドンから3大会連続、世界選手権は14年仁川、18年ハンブルク、アジアパラ競技大会も14年仁川、18年ジャカルタの各大会をカバーした。

 6月15日、車いすバスケットボール男子の国際親善試合「アジアドリームカップ2019」が、今月に竣工したばかりの昭和電工武道スポーツセンター(大分市)で開幕した。今大会には日本のほか、韓国、中国、台湾、タイの5カ国・地域から6チームが参加。大会初日には2つのグループに分かれての予選リーグが行われた。及川晋平ヘッドコーチ率いる男子日本代表は、タイ、台湾と対戦し、いずれも圧倒的なスコアで連勝。16日の準決勝では中国と対戦する。

日本を苦しめた数字には表れないミス

大会初日の2試合では細かいミスが目に付いた [写真]=斎藤寿子

「勝ったことは良かったが、これで満足してもらっては困ります。もっと高い技術、もっといいプレーが見せられたはず。日本代表としてということを考えれば、まだまだ満足することはできない」

 試合後の指揮官の厳しい表情と言葉が、すべてを物語っていた。

 タイには70-38、続く台湾には85-9と、スコアだけを見れば、”圧勝”だった。だが、今大会の日本が目指しているのは単なる優勝ではない。1年後に迫った”本番”に向けて、チームとしてさらに高い階段を上るためのもの。そのためには自分たちがやるべきバスケを高いレベルで遂行することが最大の目的だった。

 しかし、この日の2試合はその「遂行」が十分とは言えなかった。

 初戦は、フル代表で臨んできたと思われるタイと対戦した。昨年の世界選手権でイランをベスト4に導いたヘッドコーチが指揮官を務めていることもあり、今大会では強豪の一つ。その相手に得点こそ日本が上回ったものの、内容的に”圧巻”だったわけではなかった。アウトサイドでボールを回しながら隙をついてミドルシュートを狙ってきたタイは、エースが3Pを決めるなどして、引き離されまいと粘りを見せた。

 そして、日本が主導権を握り切れなかった要因の一つは、オフェンスでの数字には表れない細かい部分でのミスにあった。それは2試合目の台湾戦でも見受けられた。例えば、パスを出したボールと、それを受け取る側の動き出しのタイミングが合わないシーン。ターンオーバーにはならなくても、次への判断、動きにほんのわずかな遅れが生じていた。それが、強豪相手にはターンオーバーや失点を招く可能性もあるはずだ。

示された日本バスケのレベルの高さ

精度の高いバスケの遂行を目指す日本代表 [写真]=斎藤寿子

 しかし、逆に言えば、それだけ日本がやろうとしているバスケが、いかに複雑で、いかにスピードを求められたものであるかがわかる試合でもあった。高さで上回る世界を相手に勝つために、日本はどこよりも素早い準備と判断、そして高い精度で遂行するバスケを目指している。つまり、細かなミスは日本バスケのレベルの高さを表しているとも言える。

 今大会ではキャプテンを務める村上直広は、こう語る。

「やろうとしていることは、全員が共有できているし、高い意識も持っている。ただ、その精度ですよね。シュートを打つ選手だけでなく、それまでのワンプレーワンプレーの精度を一人ひとりが意識することが大事。高さがない分、僕たちが勝つためには、速いトランジションの中で、いかに瞬時にいい判断をして、難しいプレーを正確にできるか。明日は、そういうところをもっと高く意識を持ってやりたいと思います」

 今大会が国際大会初となる選手にも好プレーが生まれ、新しい”光”も見られた日本代表。決勝トーナメントでは、さらに階段を上る姿を見せてほしい。

文・写真=斎藤寿子

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