2019.06.25

車いすバスケ男子日本代表、リオ銀のスペインに2点差の惜敗…“本番”への価値ある戦いに

チームの大黒柱としてプレーしている藤本。敗れたものの「日本はもう次の段階に来ている」と手応え [写真]=斎藤寿子
新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年よりスポーツ専門ウェブサイトで記事を執筆。車いすバスケットボールの取材は11年より国内外で精力的に活動を開始。パラリンピックは12年ロンドンから3大会連続、世界選手権は14年仁川、18年ハンブルク、アジアパラ競技大会も14年仁川、18年ジャカルタの各大会をカバーした。

 アメリカのテキサス州で行われている日本、アメリカ、スペインの3カ国による車いすバスケットボール男子の親善試合。4日目の24日、日本はスペインとの最終戦に臨んだ。結果は58-60。昨年の世界選手権と同じ2点差での惜敗となった。2016年リオデジャネイロパラリンピック銀メダルチームを“射程圏内”に入れながらも、日本はあと一歩のところで勝利を逃した。

1年前を彷彿させる接戦に再び敗れた日本

「勝負にいった試合だっただけに、最後は勝ち切りたかったのですが……」

 試合後、及川晋平ヘッドコーチはそう言って、悔しさをにじませた。それほど勝利を手中に収める手応えが十分にあった試合だった。

 最初に主導権を握ったのは、日本だった。第1クォーターは8-8と並び、がっぷり四つの様相を呈したが、第2クォーターに入ると、攻防にわたって流れを引き寄せ、スペインを引き離しにかかった。香西宏昭がミドルシュートを3連続で決めてリードを奪うと、古澤拓也も2本の3ポイントを決めるなど、20得点を挙げた日本。さらに守備では、厳しいジャンプアップと素早いローテーションで、高さのあるスペインをインサイドから締め出した。

 前半を終えて28-19。この遠征での初勝利が目の前に迫っていた。だが、さすがはリオ銀メダルチーム。このままでは終わらなかった。後半に入ってギアを上げたスペイン。再び接戦に持ち込むと、第4クォーターには逆転し、最大8点差をつけた。

 それでも日本も粘りを見せ、残り40秒で同点に追いついた。だが、残り4秒で勝利への執念とばかりにミドルシュートを決めたスペインが再びリード。最後は勝負をかけた日本のシュートが外れ、勝利を手にすることはできなかった。

「逆転を許してから、また追いついて接戦に持ち込んだことは良かったと思います。ただ、課題でもあった決定力という点で、最後は決めたかった。そういう部分にもっとこだわらなければいけないと感じました」と及川HC。本気で勝ちにいった試合を落としながら「いい試合だった」で終わらせるわけにはいかない。日本はもうそのレベルにはないからだ。

接戦に持ち込んだが、勝利を逃した日本 [写真]=斎藤寿子

藤本怜央「シュート1本1本にこだわりを」

 その責任を負うかのように、試合終了のブザーが鳴り響く中、「自分があのシュートを決めていれば……」と数々のシーンが走馬灯のように頭の中を回り、悔しさがこみ上げてきたと語るのは藤本怜央だ。藤澤潔とともに、40分間フル出場し、香西に次ぐ得点を挙げた藤本。そんな彼を及川HCも「よく最後まで走り続けてくれた」とねぎらった。

 だが、藤本の口からは反省の言葉しか出てこなかった。

「周りの選手は本当によくやってくれているので、あとは僕だなと。こういう厳しい試合で、高いシュート確率を出していくことが、勝つためにはまず必要なことだということを痛感しました。ほんの一瞬のチャンスやシュート1本1本に、もっとこだわりを持って遂行しなければいけないと思いました」

 一方で、アテネ、北京、ロンドン、リオと世界最高峰の舞台を4度経験し、チームの大黒柱としてプレーしてきた藤本だからこそ感じている手応えもある。

「リオ以前は、日本がスペインと2点差のゲームをするなんてことはあり得なかった。だから昨年の世界選手権に続いて、またこういう試合ができたことは、日本が確かに成長している証でもある。あとは残りの1年で、今度は2点差で勝つところにまでどう持っていくのか。日本はもう次の段階に来ているんです」

 遠征最終日となる明日25日は、現地時間午後3時からアメリカとの最終戦に臨む。1年後に迫った“本番”への糧とするべく、世界最強国に挑む。

相手の徹底マークに遭う藤本 [写真]=斎藤寿子

文・写真=斎藤寿子

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