2019.07.02

車いすバスケ女子、強化合宿の集大成として臨んだDMSカップで掴んだ大きな手応え

全国から集まった11の強豪クラブチームと対戦した「日本女子選抜」チーム [写真]=斎藤寿子
新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年よりスポーツ専門ウェブサイトで記事を執筆。車いすバスケットボールの取材は11年より国内外で精力的に活動を開始。パラリンピックは12年ロンドンから3大会連続、世界選手権は14年仁川、18年ハンブルク、アジアパラ競技大会も14年仁川、18年ジャカルタの各大会をカバーした。

 6月29、30日の2日間にわたって、長岡市市民体育館(新潟県)では「第28回全日本車いすバスケットボール競技大会」(DMSカップ)が行われた。今大会には全国から11の強豪クラブチームが出場した。加えて「日本女子選抜」として参加したのが、女子強化指定選手14人。合宿の最後に強化の一環として臨み、女子日本代表の岩佐義明ヘッドコーチが指揮を執った。男子強化指定選手を擁するクラブチームもある中、高さ、スピードで勝る男子選手に果敢に挑んだ女子選抜。1勝2敗という結果に終わったが、大きな手応えを掴んだ2日間となった。

全試合で示された「好スタートを切る力」

キャプテンの藤井郁美は「合宿でのトレーニングの成果が出ているなと感じた」と、収穫の大きさを語った [写真]=斎藤寿子

 地元の新潟WBC、強化指定選手3人を擁し今大会優勝したNO EXCUSE、複数のビッグマンがいる福岡breezの3チームと対戦した女子選抜。新潟WBCとの初戦は白星を挙げたが、NO EXCUSEと福岡breezには後半に入って引き離され、黒星を喫した。

 しかし、これまで課題の一つだった「試合の入り方」は、いずれの試合も良かった。最初に流れを引き寄せ、新潟WBCとNO EXCUSEとの試合では第1クォーターでリードを奪い、福岡breezとも14-19と互角に渡り合った。

 どの試合も、ボールマンに対して高い位置から張り出し、ジャンプアップをしてプレッシャーをかける”攻め”のディフェンスが徹底されていたことが相手のリズムを崩していた。そしてディフェンスでリズムをつかんだ女子選抜は、オフェンスでも力を発揮。オフサイドをうまく使った速い展開からシュートチャンスを作り、高確率なミドルシュートでスコアを伸ばした。

 特に今大会、固定されたスターティングメンバーのラインナップは安定感があり、試合の”出だし”がうまくコントロールされていた。それが、チームに勢いをもたらしていた。

 これには岩佐HCも「男子相手にも合宿でやってきたディフェンスがしっかりと機能し、それがオフェンスにもいいリズムを与えていた。シュートの確率も良く、3試合いずれも試合の入り方は、これまでの成果が出ていた」と手応えを掴んでいた。

 スタメンの一人、キャプテンの藤井郁美も「以前のようにスタートで出遅れたりすることなく、最初からコート上の5人がしっかりと考えて連携を取りながら、うまく試合に入れるようになったことは合宿でのトレーニングの成果が出ているなと感じた」と、今大会で得た収穫の大きさを語った。

目指すは”手応え”から”白星”へのステップアップ

約1年後に迫った東京パラに向けて、課題を再確認した大会でもあった [写真]=斎藤寿子

 一方で課題も見えた2日間だった。「2on2の連携やシュートやパスなど、細かいところの精度を高めて、もっといいディフェンス、いいオフェンスができる時間帯を増やしていかなければいけない」と岩佐HC。今大会の男子選手同様に、高さで上回る海外勢に勝つには、トランジションの速い展開の中で瞬時に判断し、タフショットも決めていかなければならない。

 1年後となった本番までに、こうした克服すべき課題はまだまだある。しかし、自分たちが進むべき道が、徐々に鮮明になっていることも確かだ。

 6月のドイツ遠征では、リオパラリンピック銀メダル、昨年の世界選手権銅メダルの強豪ドイツと対戦。1カ月後に東京パラリンピックのヨーロッパ予選を控え、フル代表で臨んだドイツ相手に、日本は初戦、54-59と堂々と競り合った。この時もやはり、ディフェンスが機能し、ドイツにタフショットを打たせたり、ターンオーバーを誘うなど、思うようにプレーさせなかったことが功を奏した。

「間違いなくチームのレベルは上がってきていて、その手応えは十分に感じています。選手たちの戦う姿勢も以前とは違うなと。ベンチにいても、次に自分が何を求められているかを把握して、しっかりと準備してくれるようになりました。課題はまだまだたくさんありますが、進むべき道が見えてきたというのは大きい。今後は、もう一つ上の段階に進みたいと思います」と岩佐HCは語る。

 2月の大阪カップを皮切りに、2019年度の上半期、チームは大きな収穫を得ることができた。しかし、「勝ち切るところまではまだいっていない」とキャプテンの藤井。岩佐HCも「”いい経験”で終わらせてはいけない」と語る。

 掴んだ手応えを、今度は実戦でいかに勝利へと結びつけられるか。下半期は勝敗における結果を残せるかどうかが、チーム最大の”使命”となる。

文・写真=斎藤寿子

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