2019.08.28

三菱電機ワールドチャレンジカップで見せ続けている及川ジャパンの進化

昨年の三菱チャレンジカップで日本は初優勝を遂げた[写真]=山口剛生
新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年よりスポーツ専門ウェブサイトで記事を執筆。車いすバスケットボールの取材は11年より国内外で精力的に活動を開始。パラリンピックは12年ロンドンから3大会連続、世界選手権は14年仁川、18年ハンブルク、アジアパラ競技大会も14年仁川、18年ジャカルタの各大会をカバーした。

8月29日~9月1日の4日間にわたって、武蔵野の森総合スポーツプラザで開催される車いすバスケットボール国際強化試合「三菱電機WORLD CHALLENGE CUP 2019」。同大会は2017年に始まり、今年で3回目を迎える。

文=斎藤寿子

“トランジションバスケ”の可能性を示した第1回大会

 第1回大会には日本のほか、イギリス、トルコ、オーストラリアが参加。優勝は翌年の世界選手権覇者のイギリスでオーストラリアが準優勝した。

 及川晋平ヘッドコーチ率いる男子日本代表は、最終順位こそ3位だったものの、東京パラリンピックを目指すうえでの大きな一歩を踏み出した大会となった。その最も象徴的な試合が、予選の初戦、オーストラリア戦だ。

 その年からより本格的に力を入れて磨いてきたのが“トランジションバスケ”。攻守の切り替えの速さを追求した“トランジションバスケ”は、今や及川ジャパンの代名詞となっている。その最初のお披露目となったのが、同大会でのオーストラリア戦だった。

 素早く切り替えし続ける日本のスピーディなバスケにオーストラリアは翻弄され、前半はターンオーバーは12を数えた。攻守で圧倒した日本は、第1クォーターで21-10と大量リードを奪うと、そのまま勢いに乗り、37-22の2ケタ差で試合を折り返した。

 一方、強靭なスタミナが必要とされるトランジションバスケを40分間遂行する力は、まだ不足していた。徐々に疲労の色が見え始めた日本に対し、オーストラリアが猛追。日本も粘りを見せたものの、結果は69-70と1点差で敗れた。

速いトランジションからプレスディフェンスを仕掛けた(2017年大会)[写真]=斎藤寿子

 しかし、その年の6月の男子U23世界選手権で4強入りを果たしたメンバーなどの若手も活躍し、新たな力が加わったことを印象付けたのも同大会。今や真骨頂となったトランジションバスケによる大きな可能性が見出された。

第2回大会は“全員バスケ”で完全優勝

 翌2018年に開催された第2回大会には、オーストラリア、カナダ、ドイツが参加。日本は予選から決勝までの全4試合に勝利し、全勝での完全優勝を成し遂げた。

同大会で示したのは、課題としてきた「“エース頼り”からの脱却」だった。2014年から取り組んできたものの、リオまでは香西宏昭と藤本怜央の2人を軸としたラインナップの“一極集中型”が否めなかった。

 しかし、現在は違う。12人の誰が出ても戦力が衰えないほどのメンバーが揃い、ラインナップのバリエーションは格段に増えている。及川HCが求め続けてきた“全員バスケ”。その第一歩を大きく踏み出したのが、この第2回大会だった。

 象徴的だったのは、決勝進出がかかった予選最終戦のカナダ戦。第3クォーター終了間際、同点の場面で及川HCが切ったのは、香西も藤本も、守備の要であるキャプテンの豊島英さえも不在のカード。鳥海連志、古澤拓也、岩井孝義のU23メンバー、前年に台頭してきた秋田啓というフレッシュな面々に、リオまではベンチを温めることが多かった宮島徹也のラインナップだった。引き続き第4クォーターのスタートもコートに送り出された5人は、指揮官の期待にしっかりと応え、チームに勝利を導く活躍を見せた。

 毎年、及川JAPANにとって、“進化”した姿を披露する場となっている三菱ワールドチャレンジカップ。連覇に挑む今大会は、どんな戦いが見られるのか注目だ。

昨年の決勝は日本対オーストラリアという組み合わせとなった[写真]=山口剛生

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