2019.09.01

【三菱電機ワールドチャレンジカップ】及川ジャパン、世界4強のアジア王者イランを撃破!

アジア王者のイランに勝利した日本[写真]=斎藤寿子
新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年よりスポーツ専門ウェブサイトで記事を執筆。車いすバスケットボールの取材は11年より国内外で精力的に活動を開始。パラリンピックは12年ロンドンから3大会連続、世界選手権は14年仁川、18年ハンブルク、アジアパラ競技大会も14年仁川、18年ジャカルタの各大会をカバーした。

 8月31日、車いすバスケットボール国際強化試合「三菱電機 WORLD CHALLENGE CUP」(武蔵野の森総合スポーツプラザ)の第3戦が行われ、及川晋平ヘッドコーチ率いる男子日本代表は、世界選手権4位、アジアパラ競技大会覇者のイランと対戦した。

 オールコートのプレスディフェンスが機能し、激しい攻防戦を繰り広げた日本は、最後まで集中力を切らさず。最後は63-57で勝利を挙げた。しかし、日本、イラン、オーストラリアの3カ国が通算2勝1敗で並び、得失点差で日本は決勝進出を逃す結果となった。

文・写真=斎藤寿子

最強カードで目指した“15点差以上”の難題クリア

 日本が決勝に進出するためには、15点差以上での勝利が条件となっていた。そのため、指揮官はスタートからプレスディフェンスという日本にとって最強のカードを切った。

 3人のビッグマンを擁する相手を少しでもゴールから遠ざけ、常にプレッシャーを与えてタフショットを打たせること。さらに隙あらばインターセプトやスティールを狙って自分たちのオフェンスの機会を増やすことで“15点差以上”という難題をクリアすることが狙いだった。

 その狙い通り、第1クォーターからアジア王者を苦しめた。正確なチェアスキルと強靭なスタミナ、さらに粘り強さを兼ね備えた日本のプレスは、イランのパスコースや走るスペースを消し、インサイドからビッグマンたちを押し出し、相手にタフショットを打たせた。スローインやタイムアウト明けなどのデッド時さえも執拗にプレッシャーをかけ続け、相手に一寸の休憩時間も与えなかった。イランのスタミナを削り、集中力を削ぎ落とす作業が続けられた。

古澤に象徴されていた「守備からリズムをつくる」成果

 この前半での好守備が、後半に向けてチームを勢いに乗せた。例えば、古澤拓也。スタメンに抜擢された古澤は、前半からトップギアで常に激しくプレッシャーをかけ続けた。すごみを感じるほどの好守備でチームに貢献した古澤だったが、前半に挙げた得点はわずか2に留まっていた。しかし、古澤に焦りはなかった。6月のアメリカ遠征で、彼はこう語っていた。

「まずはいかに良いディフェンスをするかを念頭に置いてプレーしています。ディフェンスができていると、いい意味で心に余裕が生まれて、オフェンスにもつながるんです」

 その言葉通り、前半での好守備が古澤にいいリズムを与えたのだろう。第3クォーターの終盤、3点ビハインドの場面で得意のドライブでシュートを決めた。その鮮やかなプレーに会場からは大歓声があがった。さらに相手のファウルを受けてバスケットカウントとした古澤はフリースローも決め、試合を振り出しに。そして第3クォーター終了間際にはミドルシュートも決めて47-45に。そのままリードして最終クォーターを迎えたことが、チームの士気を高めた。

古澤拓也のアグレッシブなディフェンスが良い流れを生んだ[写真]=斎藤寿子

 そして第4クォーターの終盤、得点力でイランを上回った日本は、63-57で勝利。40分間、オールコートでのプレスディフェンスでイランを翻弄した日本は、スタミナと集中力の差を示した。

 しかし、決勝進出の条件となっていた「15点差以上」には至らず、大会連覇の道は潰えた。

 最終日の9月1日は3位決定戦で韓国と対戦する。3カ月後のアジア・オセアニアチャンピオンシップスでの優勝へとつなげるためにも、及川ジャパンの強さを示し、「三菱電機 WORLD CHALLENGE CUP」のラストゲームにふさわしい有終の美を飾りたい。

40分間出場でタフに戦った川原凛[写真]=斎藤寿子


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