2019.10.02

プロに聞く素朴な疑問! 車いすバスケの「車いす」の特徴とは?

日本車いすバスケットボール連盟所属の強化指定選手達をサポートする松永製作所の榎本和浩氏に話を聞いた
バスケットボールキングプロデューサー(事業責任者)。学生バスケをテーマにしたCM制作に携わったのがバスケに関する初仕事。広告宣伝・マーケティング業務のキャリアが一番長いが、スポーツを仕事にして15年。バスケどころの福岡県出身。

 いよいよ開幕まで1年を切った東京オリンピック・パラリンピック競技大会。2020年8月25日からスタートするパラリンピックの中でも大きな人気・注目を集めるのが車いすバスケットボールだ。

 車いすバスケットボールではコートサイズ、ゴールの高さそしてボールの大きさは5人制バスケットボールと同じ。健常競技との違いであり、この競技の大きな魅力となるのが、選手の足となる車いすが創りだすスピード、そして激しさだ。

 競技用車いすの大きな特徴は、通常の車いすよりも大きく外側に開いたタイヤの角度にある。これは回転性の向上を目的に設計されていることに起因するが、この工夫によって、車いすを用いる各パラスポーツの競技用車いすは、クイックなターンを可能としている。言うまでもなく日本の車いすバスケットボールの普及と強化には、競技用車いすの性能の向上や、試合時における車いすのメンテナンスが欠かせない。この重要な役割を担い、現在 日本車いすバスケットボール連盟所属の強化指定選手達のサポートを行っているのは岐阜県養老町にある株式会社松永製作所だ。

 松永製作所は1974年に車椅子メーカーとして誕生し、競技用車いすの分野ではバスケットボール以外にも、バドミントン、テニス、フェンシングなどをカバーしている。車いすバスケットボール用の車いすを作り、選手たちが高いパフォーマンスを発揮するためにどのような苦労があるのか、松永製作所の榎本和浩氏に話を聞いた。

インタビュー=村上成

重要なのは強度と軽さのバランス

――バスケットボール用の車いすの特徴はどんなところにあるのですか?
榎本 競技の特性として接触がとても多いので、しっかりとした強度が必要なことと、自分も試合相手もケガをさせないようにバンパーがあるのが特徴です。

――かなり激しい競技ですが、車いすは実際にどのくらいもつのでしょうか?
榎本 トップ選手で半年から1年くらいでしょうか。やはり1年くらいでフレームが折れたりします。強度を上げて長持ちさせることもできますが、そうすると重くなってしまいます。競技ですので、やはりできる限り軽くしたいということもありますし、強度と軽さのバランスは重要です。そこの攻めぎあいになりますね。

――競技で定められた強度の基準などがあるのですか?
榎本 特に強度の基準はないのですが、取り回しの良さと強度の確保という相反する2つの要素の攻めぎあいになります。発売を始めて10年くらいになりますが、常に改良を重ねています。ここが壊れたら、ここに補強を入れよう。という感じで試行錯誤です。定められた数値をクリアするというよりは改良、改良を重ねて今の形になっています。

――一番苦慮を重ねている箇所は?
榎本 バンパーと車軸周りと転倒防止の箇所ですね。バンパーはとにかく接触が多いので、へこんだりとか、割れたり外れたりしないような工夫を常に考えています。車軸周りは、選手が常に乗っているので左右の動きなので、負荷がかかります。転倒防止の部分はやはり倒れることも多いので……。転倒防止は、元々あまり補強を入れていなかったので、バキバキ割れていたのですが、補強材を上か下から入れたり、両方入れたり試行錯誤しましたね。

――松永製作所としてこだわっている競技用車いすの特徴などありますか?
榎本 他のメーカーさんに比べるとフレームが柔らかいのが特徴です。フレームが固いとターンするときに片輪が浮いてしまいます。イメージしやすくお話をすると、F1などと一緒で、フレームが硬いと外に振られてしまいますが、柔らかいと滑らかにターンができます。その分、柔らかさがゆえにフレームが歪むことも多いのですが、フレームのゆがみの取り方などは苦慮しますね。

フレームが柔らかいのが特徴

試合が始まるときには完璧なものを整えるのが重要

――続いて試合中のメンテナンスについてお聞きしたいのですが、具体的にはどのようなことを行うのですか?
榎本 メンテナンスの仕事は試合が始まる前がほとんどです。試合が始める前に全選手の車いすを全部点検します。異常音がないか、歪みがないかなどすべての項目をチェックしていきます。試合が始まるときには完璧なものを整えることが最も重要です。試合が始まって異常があるようなことはまずありませんね。

――パラリンピックが近づいてきて周囲の環境が変わってきたと感じることはありますか?
榎本 肌感ですが、一般の方や、これから競技をスタートしてみようという方からの問い合わせはかなり増えてきたと思います。松永製作所は、企業として、常にアスリートファーストでやっていますし、松永製作所の車いすを使うすべてのアスリートの皆さんに、いい成績を収めてもらいたいので、会社としてやれることは精一杯やっています。

日常の中のスポーツの一部として取り上げられるように

――東京開催のパラリンピックによって、車いすバスケットボールにも注目が集まる機会だと思いますが、障がい者スポーツを支える立場として、2020大会後、どのような景色になっていると良いなあと考えていますか?
榎本 最終的には、普通に地上波で取り上げていただけるような盛り上がりがあると良いですね。現在は、どうしても社会面での取り上げが多いのではないかと思います。まだまだ難しいかと思いますが、プロ野球やJリーグ、サッカー日本代表のように、日常の中のスポーツの一部として取り上げてもらえると嬉しいですね。海外ではすでに車いすバスケットボールのプロリーグがあったりと、日本国内とは違う盛り上がりも見せていますし、来年のパラリンピックをきっかけに日本でもさらに盛り上がってくれるとうれしいですし、そうなるように応援していきたいと思っています。

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