2020.01.13

車いすバスケ「皇后杯」、令和初代女王の座をつかむのは?

1月12日、「皇后杯 日本女子車いすバスケットボール選手権大会」が開幕。翌13日には決勝戦が行われる [写真]=斎藤寿子
新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年よりスポーツ専門ウェブサイトで記事を執筆。車いすバスケットボールの取材は11年より国内外で精力的に活動を開始。パラリンピックは12年ロンドンから3大会連続、世界選手権は14年仁川、18年ハンブルク、アジアパラ競技大会も14年仁川、18年ジャカルタの各大会をカバーした。

 1月12日、神戸市中央体育館で「皇后杯 日本女子車いすバスケットボール選手権大会」が開幕した。今大会には全国から8チームが参加し、大会初日の1回戦、準決勝を勝ち抜き、決勝に駒を進めたのは、カクテル(近畿)とSCRATCH(東北)。13日には、日本代表クラスの選手たちを主力とする両チームが3大会連続で日本一の座を争う。

決勝は3大会連続で同一カードに

準決勝でカクテルはWingsに77-33で快勝 [写真]=斎藤寿子


 現在、大会5連覇中のカクテルは、昨年末のアジアオセアニアチャンピオンシップス(AOC)の日本代表が5人そろう全国随一の強豪だ。前回は長く日本のエースとして活躍してきた網本麻里がスペインのクラブチームでプレーしていたために欠場。それでも優勝を成し遂げ、頂点のザを守り抜いた。今回は網本が2大会ぶりに出場し、盤石の態勢で臨んでいるだけに、チーム力は前回大会以上と言える。

 1回戦は、大会直前に手首を痛めたキャプテンの北田千尋が出場時間わずか2分と主力の一人を温存しながら、パッション(四国)に60-17と圧勝した。続く準決勝のWing(関東)戦では序盤、オフェンスでボールが手につかずにキャッチミスするシーンが目立った。それでもこだわり続けるオールコートでのプレスディフェンスがしっかりと機能したことで、一度もリードを許すことなく、77-33で快勝。他を寄せ付けない強さが健在であることを証明し、決勝進出を決めた。

 一方、日本代表のキャプテン藤井郁美をはじめ、AOCメンバー4人が所属するSCRATCHは、1回戦で九州ドルフィンを75-23で破った。しかし、SCRATCHの3大会連続決勝進出を阻もうと襲い掛かってきたのが、準決勝でのBrilliant Cats(東海北陸)だ。2年連続3位のBrilliant Catsは3大会ぶりの決勝進出に強い執着心を持ち、SCRATCH戦の対策を立ててきていた。第1クォーターはその対策がしっかりと機能し、Brilliant Catsがリードを奪った。

 だが、SCRATCHは徐々にBrilliant Catsのバスケットにアジャストし、流れを引き寄せていった。なかでもチームを勢いづけたのは、第2クォーターの前半。5分半もの間、無失点に抑えながら、土田真由美が一人で12得点を叩き出したのだ。逆転に成功し、26-20とリードして試合を折り返したSCRATCHは、後半に大きく引き離し、71-32と快勝。今大会も決勝へと駒を進めた。

新たな役割を担うカクテル柳本とSCRATCH土田

得意の外角からのシュートに加え、オフェンスパターンにインサイドへのアタックを加えたSCRATCHの土田真由美 [写真]=斎藤寿子


 3大会連続で同一カードとなった決勝。前回はわずか4点差でカクテルが逃げ切ったが、今大会はどんな展開となるのか。

 見どころの一つは、ほぼ40分間フルでオールコートのマンツーマンディフェンスをしき、攻守の切り替えの速さを武器とするカクテルの守備を、SCRATCHがいかにしてブレイクし続け、得点へとつなげていくことができるかだ。

 さらに、ハーフコートでのセットプレーとなった際に、どちらがミスなく連携し、相手の守備を崩していくことができるかも、試合を左右する。そこで注目したいのは、今大会から新たな役割が与えられているカクテルの柳本あまねと、SCRATCHの土田だ。

 日本随一のスピードを活かしたディフェンスとアウトサイドのシュートを得意とする柳本は今大会、ガードの役割も求められている。昨年は女子U25日本代表では、ガードとシューターを兼任し、マルチプレーヤーとして世界選手権4位の立役者となった。すでにA代表の主力として活躍する柳本が、同じA代表クラスのチームメイトの中の“司令塔”となり、チャンスメーカーとして機能すれば、さらに強いカクテルのバスケを見ることができるに違いない。

 また、SCRATCHの土田にプラスとされたのは、インサイドへのアタックだ。国内でも随一のミドルシューターとして知られる土田だが、今大会はゴール下での得点を量産している。これまでほとんど意識してこなかったというインサイドでのプレーは、藤井新悟HCからのアドバイスを受け、昨年から今大会に向けて練習をしてきたのだという。

 その成果は、1回戦から表れている。この試合で土田は27得点を挙げているが、ミドルシュートでの得点はゼロ。3本のフリースローを除いたフィールドゴールの24得点はすべてインサイドにアタックしてのものだった。藤井HCが見込んでいた通り、インサイドでのタフショットをもこなすフィジカルと技術が土田にはあることが証明されたと言っていい。

 果たして、30回目の記念大会は、カクテルが大会史上2チーム目となる6連覇を達成するのか。それとも、3度目の正直で、SCRATCHが8大会ぶりの歓喜に沸くのか。令和の初代女王に輝くのはどちらか。

文・写真=斎藤寿子

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