2020.06.15

【車いすバスケリレーインタビュー 女子Vol.1】網本麻里「第一の目標はチームの10連覇」

女子の現役の中でパラリンピックを経験している数少ない選手の一人、網本麻里[写真]=斎藤寿子
新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年よりスポーツ専門ウェブサイトで記事を執筆。車いすバスケットボールの取材は11年より国内外で精力的に活動を開始。パラリンピックは12年ロンドンから3大会連続、世界選手権は14年仁川、18年ハンブルク、アジアパラ競技大会も14年仁川、18年ジャカルタの各大会をカバーした。

インタビューした選手に「現在成長著しい選手」「ライバルだと思っている同世代選手」「ベテランから見て将来が楽しみだと思っている若手」「若手から見て憧れているベテラン」などを指名してもらい、リレー方式で掲載するこの企画。車いすバスケットボール選手の個性的なパーソナリティーに迫っていく。

文・写真=斎藤寿子

 小学3年の時に始めたバスケットボールが、好きで仕方なかったという網本麻里(カクテル)。右足首の病気のためにランニングバスケは諦めたが、高校1年時に始めた車いすバスケットボールで頭角を現すのに、そう時間は要しなかった。チーム最年少の19歳で出場した2008年北京パラリンピックでは、7試合で133得点をマークして得点王となり、メダルまであと一歩に迫る4位にまでチームを導いた。現在もその実力は健在で、日本の女子車いすバスケ界を牽引し続けている。

世界記録51得点の快挙

 数々の国際大会を経験し、世界にその名を轟かせ続けてきた網本。海外チームからの女子日本代表の要注意人物には、必ずと言っていいほど、「Mari」の名が挙がる。

 なかでも世界が衝撃を受けたのは、2011年に初めて開催された女子U25世界選手権だろう。なんと、メキシコ戦で51得点を一人で叩き出し、女子のワールドレコードを塗り替えたのだ。

「実は、試合前はあまり調子が良くなかったんです。でも、逆にそれで肩の力が抜けたのかな。スタートからシュートは打てば入るし、相手の動きもスローモーションじゃないけど、全て見えている感じでした」

 前半を終えて、ハーフタイム中、網本はすでに自分が30点以上を挙げていることを知った。

「前半がこれだけ良ければ、まぁ、後半は落ちるだろうなぁ」

 そう思っていたという。ところが、後半に入っても絶好調のままだった。

「40分間フルで“ゾーン”に入ったままというのは、後にも先にも、あの試合だけ。今でも本当に不思議です」

 チームは5位とメダル獲得には至らなかったが、網本は通算で136得点を挙げ、初代の得点王に輝いた。

現在も日本を代表するシューターとして、世界から注目されている[写真]=斎藤寿子

変わらないチームへの思い

 車いすバスケ歴16年目を迎えた網本。もちろん、日本代表として東京パラリンピックに出場し、女子日本代表としては2000年シドニー大会以来、自身としては初のメダル獲得を目指している。

 しかし、その前提として大事にしていることがある。それは、所属するチーム「カクテル」だ。

「日本代表の前に、私はカクテルの一員。だから、まず目指すべきは、カクテルを勝利に導くこと。それは、クラブに入った時からずっと大切にしています」

 カクテルというチームで車いすバスケを始め、育ててきてもらったからこそ、今の自分がある――そんな思いが、網本にはある。

 カクテルは、今年1月に開催された「皇后杯 日本女子車いすバスケットボール選手権」で6連覇を達成。日本代表クラスの選手が多く所属する、今、最強の女子クラブチームだ。

 チームが目指すのは、10連覇。現在指揮官を務める岩野博HCが就任1年目からチームで掲げてきた目標だ。

 次の皇后杯でカクテルを優勝に導くこと。網本の東京パラリンピックへの挑戦は、そこから再び始まる。

今年1月の皇后杯でMVPに輝き、チーム6連覇の立役者となった[写真]=斎藤寿子

(Vol.2では、網本選手が注目している選手をご紹介します!)

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