2020.09.11

【車いすバスケ女子オンライン会見】藤井郁美キャプテン「合宿初日で感じた一人ひとりの強い責任感」

藤井郁美キャプテンはパラリンピックが延期したことについて「さらにレベルアップできる準備期間が1年できたと思っている」とポジティブにとらえている [写真]=斎藤寿子
新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年よりスポーツ専門ウェブサイトで記事を執筆。車いすバスケットボールの取材は11年より国内外で精力的に活動を開始。パラリンピックは12年ロンドンから3大会連続、世界選手権は14年仁川、18年ハンブルク、アジアパラ競技大会も14年仁川、18年ジャカルタの各大会をカバーした。

 9日、車いすバスケットボール女子日本代表チームのキャプテン藤井郁美がオンラインでの会見に臨んだ。7日からはナショナルトレーニングセンターで強化合宿が始まり、東京パラリンピックに向けての本格的な活動がようやくスタートした。パラリンピックが延期したことについて「さらにレベルアップできる準備期間が1年できたと思っている」と藤井。メダル獲得に向けて再スタートを切ったチームの現状や藤井自身について語った。

フィジカル強化で磨きをかけるトランジションバスケ

 新型コロナウイルス感染拡大によって自粛を余儀なくされ、体育館でのトレーニングができなかった期間、藤井は筋力トレーニングなど自宅でできることを続けてきた。「緊急事態宣言」が解除された後は、体育館での練習が可能となったものの、すぐに以前のようなコンタクトプレーは許されず、まずは走ることから始めたという。そこから自分自身の体の調子を見ながら、段階的にトレーニングのハードルを上げていった。

 そうしたなか、今月7日からようやく代表活動が再開。約半年ぶりに強化指定選手が顔をそろえ、合宿が行われている。藤井がまず感じたのは、各選手たちのコンディションの良さだった。

「初日のフィジカルテストで走った時に、自粛期間中もそれぞれがちゃんとできることをやってきたんだなという印象を受けました。連携やコミュニケーションという部分については、どうしても久しぶりなので今までと比べるとまだまだです。でも、一人ひとりが責任を持ってトレーニングしてきたんだなと感じています」

 今、選手たちの一番のモチベーションとなっているのが、来年の東京パラリンピックでのメダル獲得だ。その目標が、自粛期間中も選手たちの背中を押していたことは想像に難くない。

 しかし、「不安がないと言えば嘘になる」と藤井。新型コロナウイルスの感染拡大の状況が未だ収束する気配がない中、海外との代表戦の実施は難しい。特に陸続きのヨーロッパとは異なり、アジアの島国である日本はより厳しい状況にあると言える。来年2月に予定されている大阪カップが、東京パラリンピックまでの唯一の国際大会となる可能性も否定できない。

 それでも藤井は「1年間強化できる時間をもらえたと思って、海外に後れをとらないよう、みんなでレベルアップしていきたいと思います」と語り、さらなるチーム強化を誓った。特にフィジカル強化に力を入れていると言い、強みとするトランジションバスケに磨きをかけることが狙いだ。

東京パラでのメダル獲得に向けて一直線の日々

 会見で東京パラリンピックでの個人の目標を聞かれると、藤井はこう答えた。

「個人としても、目標はチームが掲げるメダル獲得。それに尽きます。そのためにももう一段階、体幹だったり、40分間戦い抜ける体を目指してフィジカルを強化していくこと。そして、より精度の高いシュート力を身につけていくことを課題にしています」

 藤井が初めて出場した2008年北京パラリンピックで、日本はベスト4に進出。藤井自身、主力としてチームに貢献した。しかしそれ以降、日本の女子はパラリンピックに出場することができていない。そして、なかなか公式戦では強豪国相手に勝利を味わうことができなくなった。

 しかし、だからこその強みが、女子日本代表チームにはあると藤井は思っている。

「世界のどこのチームよりも、私たちは勝利に飢えている。それを力に変えて、東京パラリンピックではメダルを獲得したいと思っています」

 藤井自身、結婚や出産などもあり、一度はバスケから心が離れかけた。それでも「やっぱり負けたままでは終われない」と復帰。もう一度パラリンピックの舞台に挑み、今度こそメダルを獲得するつもりだ。車いすバスケ人生の集大成と考えている東京パラリンピックでその目標を達成するため、今チームメートともにトレーニングの日々を送っている。

藤井キャプテンは東京パラでのメダル獲得を目標に据えている


文・写真=斎藤寿子

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