2020.12.08

【車いすバスケリレーインタビュー 男子Vol.14】山下修司「“ここまでやれる”可能性を示す存在に」

男子U23日本代表の候補に選出され、世界を目指している山下修司[写真]=JWBF / X-1
新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年よりスポーツ専門ウェブサイトで記事を執筆。2011年よりパラリンピック競技を中心に、国内外で精力的に活動を開始。パラリンピックは12年ロンドン、16年リオ、18年平昌、アジアパラ競技大会も14年仁川、18年ジャカルタの各大会をカバーした。

インタビューした選手に「現在成長著しい選手」「ライバルだと思っている同世代選手」「ベテランから見て将来が楽しみだと思っている若手」「若手から見て憧れているベテラン」などを指名してもらい、リレー方式で掲載するこの企画。車いすバスケットボール選手の個性的なパーソナリティーに迫っていく。

文=斎藤寿子

ここ2、3年で10代、20代の若手の加入が相次ぎ、活気づいている長崎サンライズ。Vol.13で登場した立川光樹は、その若手のリーダー格でもある。そして彼が特に期待を寄せているのが、今年20歳となった山下修司だ。現在、男子U23日本代表候補にも抜擢されている山下にインタビューした。

試行錯誤で生み出し続けている強み

 山下が車いすバスケットボールの存在を知ったのは、中学生活も終わろうとしていた頃。母親からすすめられたことがきっかけだった。地元チームの練習を見学に訪れた山下は、車いすバスケの激しさに魅了され、その場で加入を決めた。それからは、車いすバスケの虜となっていった。

 車いすバスケを始めて、今年で5年目。現在、一番に面白さを感じているのは頭を使って相手と駆け引きをすることだ。

「ミスマッチを狙ったり、ハイポインターを抑えるためには、例えば相手との距離を詰めたり、わざと開けたりするなど駆け引きが必要です。相手の動きを読んで、バシッと止められた時が一番うれしい。だから僕はディフェンスが好きなんです」

 一方、オフェンス面の強化にも注力している。両手に軽い麻痺がある山下は、シュートの際には利き手の右腕を軸にして打ちながら、最後は左手の親指で弾く感覚を添えることで、ボールの軌道を安定させている。これは、試行錯誤の末に自らが生み出したオリジナルの技術だ。

 その技術を習得したことで、以前は飛距離が足りずに届かなかったフリースローも克服した。

「フリースローが届かなかった時は、シュートする時にファウルをもらいたくない、という考えが働いて、あわてて打っていたんです。でも今は、ファウルをもらえばフリースローがある。だから、しっかりとシュートすることができるようになりました」

 山下は持ち点2.0のローポインターだが、両脚の踏ん張りが効き、体幹もいくらか使うことができる。その特性を活かそうと、車いすの座面を高く設定しているという。リバウンドなどゴール下の攻防に少しでも有利にするためだ。

 とはいえ、車いすを高くすることはそう容易なことではない。それだけバランスをキープすることが難しくなるからだ。そこで始めたのが、週に一度、長崎サンライズのトレーナーの下、体幹や骨盤を起こすトレーニングだ。

 そのトレーニングを始めてから2年、現在はうまく体幹を使えるようになってきており、今年11月の男子U23育成選手の合宿では、HCやトレーナーから、さらに車いすの高さを上げることも提案されたという。

 リスクを背負ってでも、「自分にしかない特徴を出し、唯一無二の2.0プレーヤーになろうとしている背景には、大きな目標があるからだ。

小学校時代にしていたソフトボールと同じ「みんなで一つのボールを夢中になって追いかける」ところがバスケの魅力だ[写真]=JWBF / X-1

意識を変えた京谷HCからのひと言

 始めた当初は“楽しいから、ただがむしゃらにやっていた”という山下が、日本代表を意識するようになったのは、2年前、高校3年の時だ。その年、日本選手権の二次予選に出場した山下。残念ながらチームは全国への切符を獲得することはできなかったが、試合後、こんな言葉をかけられた。

「君なら、代表にもなれるよ」

 2016年から男子U23日本代表の指揮官を務めている京谷和幸HC(現在は男子日本代表ヘッドコーチを兼任)だった。二次予選での山下のプレーに将来性を感じ、わざわざ声をかけに来てくれたのだ。

 その言葉どおり、その後U23育成選手の一人として強化合宿に呼ばれ始めた。2022年に千葉市で開催が予定されている男子U23世界選手権でのメダル獲得を目指す同カテゴリーには、すでにパラリンピックを経験している鳥海連志(パラ神奈川)をはじめ、赤石竜我(埼玉ライオンズ)、髙柗義伸(栃木レイカーズ)といったA代表候補もいる。まだ彼らとの実力差は大きいが、それでも自信を掴み始めてもいる。

 11月に行われた合宿の最終日、1試合10分の紅白戦が5試合行われた。山下はそのうち4試合に出場。鳥海、赤石、髙柗と同じチームに入った試合もあった。

「これほど多くプレータイムをもらえたのは初めてのことで、驚きました。3人と一緒にプレーしたゲームでは、スピードも状況判断力も、まだまだ大きな差を感じました。とにかくついていくのに必死で、がむしゃらに一生懸命プレーしただけ。でも、必死さの中にも楽しさがありました。そして、やっぱり悔しさも出てきて、もっと練習をして、このレベルでプレーできるようになりたいと思いました」

 そして、こう続けた。

「車いすバスケでは、僕と同じ脳性麻痺の競技人口はとても少ない。だから、自分が日本代表としてプレーすることによって、“できないことはない。ここまでやれるんだぞ”ということを伝えたいんです」

 まずは2022年のU23世界選手権で、主力として活躍することが目標だ。

“自分らしいプレー”を追求し、代表の座をつかむつもりだ[写真]=JWBF / X-1

(Vol.15では、山下選手がオススメの選手をご紹介します!)

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