2021.08.12

東京2020パラリンピック開幕直前!PICK UP PLAYERS ~車いすバスケ女子~

2000年シドニー以来のメダル獲得を目指す車いすバスケットボール女子日本代表 [写真]=斎藤寿子
新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年よりスポーツ専門ウェブサイトで記事を執筆。車いすバスケットボールの取材は11年より国内外で精力的に活動を開始。パラリンピックは12年ロンドンから3大会連続、世界選手権は14年仁川、18年ハンブルク、アジアパラ競技大会も14年仁川、18年ジャカルタの各大会をカバーした。

13年前の雪辱を果たす藤井と網本

 過去2度にわたって、パラリンピックで銅メダルを獲得している車いすバスケットボール女子日本代表。今大会は、2000年シドニー以来のメダル獲得を目指す。

 チームの大黒柱は、藤井郁美(4.0)と網本麻里(4.5)だ。いずれもチームに数少ないパラリンピック経験者であり、エースそして共同キャプテンを務める。

 藤井が得意とするのは、ミドルシュートだ。どのポジションからも高確率に決める力がある。さらに特筆すべきは、チーム随一の勝負強さ。ゲーム中チームが欲しい時に得点を決め、接戦の際には勝敗を分ける最後のボールを託され、期待に応えてみせるのが藤井の真骨頂だ。

 象徴的だったのは、19年の国際親善試合でのオーストラリア戦。最後は相手が警戒する中でブザービーターを決め、1点差での逆転勝ちを収めた。東京の舞台でも頼れる存在として、チームを勝利に導くプレーが期待される。

勝負強さが真骨頂の藤井郁美 [写真]=斎藤寿子


 一方、類まれな運動能力の持ち主である網本は、スピードとキレのある動きで果敢にゴールを狙う。自らドライブで切り込み、レイバックシュートなど高さのある相手ディフェンスをうまくかわすスキルは世界トップクラス。3Pシュートも得意で、相手にとっては乗せると手が付けられない脅威的存在だ。

 19歳で初出場した08年北京パラリンピックでは、7試合で大会最多となる133得点を叩き出しことは、車いすバスケファンに広く知られている。直近の公式戦、19年アジアオセアニアチャンピオンシップス(AOC)では、6試合中3試合でフィールドゴール成功率40パーセント台を誇った。特に世界4位の中国との試合では、フィールドゴール40パーセント、3ポイントシュートも75パーセントの成功率を叩き出す活躍を見せている。

相手ディフェンスをかわすスキルは世界トップクラスの網本麻里 [写真]=斎藤寿子


 藤井も網本も、お互いに初出場ながらWエースとして活躍した北京パラリンピックでの、あと一歩のところでメダルを逃した悔しさは忘れてはいない。2人にとっては13年越しの雪辱の場となる。

日本の得点力アップに欠かせない萩野と柳本

 パラリンピック3大会ぶりの出場となる女子日本代表は、12人中9人が初出場だ。主力として活躍している若手も多く、萩野真世(1.5)と柳本あまね(2.5)も欠かせない存在だ。

 10代の頃から将来を嘱望されてきた萩野だが、今や40分間フル出場することもあるほど、代えのきかない選手となった。ガードの役割も担うが、最大の武器はハイポインターにも決して劣らないシュート力だ。

 19年AOCの初戦、オーストラリア戦ではチームトップのフィールドゴール成功率44.4パーセントを誇り、北田千尋(4.5)の11得点に次ぐ10得点をマーク。ローポインターの萩野が高確率にミドルシュートを決めることによって、相手ディフェンスが外に開き、インサイドにアタックしやすくなる。さらに、ハイポインターにばかりディフェンスが集中できなくなるため、得点のチャンスが多く生まれるのだ。

「どんな試合も緊張することはない」と語る萩野。チーム一の強心臓の持ち主でもある萩野の存在は、今や日本に欠かすことはできない。

萩野真世は若手ながらチームに欠かせない存在 [写真]=斎藤寿子


 チーム最年少、23歳の柳本は高校1年時の14年にアジアパラ競技大会で代表デビュー。リオパラリンピックの予選を兼ねて行われた15年のAOCでは最終選考で代表から外れ、悔しい思いをした。

 その経験を糧に、努力を積み重ねてきた結果、持ち前のスピードを生かしたプレーでチームの主力にのぼりつめた。岩佐義明HCも「(日本が武器とする)トランジションバスケの申し子」と称する。19年AOCでは、日本人唯一のオールスター5に選出されるなど、代表の中でも存在感が増している。

 攻防にわたってスピードが武器の柳本。オフェンスでは速攻やピックアンドロールから、女子のクラス2点台では珍しいワンハンドでのレイアップシュートで得点。ディフェンスではつかまえた相手は絶対に逃さない気迫あるプレーで相手を翻弄する。

 さらに、これまで日本代表では見せ場が少なかったが、実は3Pシュートも得意としている。日本女子選手権大会(18年より皇后杯を下賜)では2年連続で「3P賞」に輝いた実績もある。萩野同様、ミドルポインター柳本のアウトサイドシュートが決まってくると、得点源が増え、相手ディフェンスにとっては脅威だ。柳本自身もその自覚は十分にあり、東京パラリンピックではポイントゲッターの一人となるつもりだ。

攻防にわたってスピードが武器の柳本あまね [写真]=斎藤寿子


文・写真=斎藤寿子

クラス分けについて
車いすバスケットボールの選手には各々障害レベルの重い者の順から1.0-4.5の持ち点が定められており、試合中コート上の5人の持ち点の合計が14.0を超えてはなりません。このクラス分けの目的は、障害の重い選手も軽い選手も等しく試合に出場するチャンスを与えるためです。仮にこのクラス分け制度がなかったとすると、障害の軽い選手だけでチームを組むことが可能となり、障害の重い選手の出場機会を奪ってしまうことになります。クラス分けは車いす駆動、ドリブル、パス、ボールコントロール、シュート、リバウンドなどの動作はもとより、車いす座位における体幹のバランス能力とボールコントロール範囲に応じて分類されます。このように車いすバスケットボールでは、それぞれのチーム間の公平性も保っています。(日本車いすバスケットボール連盟公式HPより)

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