2021.08.16

東京2020パラリンピック開幕直前!PICK UP PLAYERS ~車いすバスケ男子~

若手の台頭で史上最強チームへと成長した車いすバスケットボール男子日本代表 [写真]=斎藤寿子
新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年よりスポーツ専門ウェブサイトで記事を執筆。車いすバスケットボールの取材は11年より国内外で精力的に活動を開始。パラリンピックは12年ロンドンから3大会連続、世界選手権は14年仁川、18年ハンブルク、アジアパラ競技大会も14年仁川、18年ジャカルタの各大会をカバーした。

若手の台頭と成長で“史上最強”へ

 1960年の第1回ローマ大会からパラリンピック競技として実施され、世界で随一の人気を誇る車いすバスケットボール。男子日本代表が初出場したのは64年東京大会で、76年モントリオール大会からは12大会連続出場を誇る。

 過去最高成績は、88年ソウル大会と2008年北京大会での7位。未だ一度も準々決勝の壁を破れてはいない。12年ロンドン、16年リオでは2大会連続で決勝トーナメント進出を逃し、世界との距離はなかなか縮まらなかった。

 しかし、リオ以降は強豪の欧州勢や、同じアジアオセアニアゾーンのライバル国を次々と撃破。“史上最強”のチームに仕上がった。

 その最大の要因となったのは、若手の台頭だ。すでに16年リオ大会に17歳で出場した鳥海連志(2.5)に加えて、17年の男子U23世界選手権で4強入りしたメンバーが次々とA代表入りし、著しい成長を見せてきた。

 U23世界選手権でキャプテンを務め、鳥海とともにオールスター5の個人賞に輝いた25歳の古澤拓也(3.0)は、両利きのボールハンドリングを武器とする司令塔。3Pシュートも得意で、ディフェンスにも磨きがかかっている。東京では、より存在感を示したいと意気込む。

司令塔の古澤拓也は3ポイントも得意とする [写真]=斎藤寿子


 古澤と同じく17年にA代表デビューをしたのが、24歳の川原凜(1.5)だ。注目すべきはスピードを生かした守備力。日本の中でも小柄な川原だが、2倍や3倍ほども体格差がある海外のビッグマンの動きを止める体を張ったピックの技術は随一。本人も「誰にも負けない」と自信を持つ。

 A代表デビュー戦となった18年の三菱電機WORLD CHALLENGE CUPで、オールスター5に輝いたのが、25歳の岩井孝義(1.0)だ。ハイポインターを生かすプレーはもちろんだが、岩井にはシューターとしての期待も高い。ミドルレンジだけでなく、3Pシュートも注力して練習を積んできた。クラス1.0の岩井の得点が、チームの大きな武器となる。

 そして、18年のアジアパラ競技大会で10代でA代表デビューしたのが、チーム最年少20歳の赤石竜我(2.5)だ。守備力を買われ、U23世界選手権のアジアオセアニア予選の途中から主力へと躍進。A代表でもその守備力が光り、大きな戦力となっている。さらに課題としていた得点力も身に付け、19年アジアオセアニアチャンピオンシップスの3位決定戦ではフィールドゴール成功率80パーセントを誇り、自身最多となる9得点を挙げた。東京大会でも攻防にわたってチームの勝利に貢献するプレーを見せてくれるに違いない。

赤石竜我はチーム最年少ながら攻防にわたってチームに貢献 [写真]=斎藤寿子

史上初のメダル獲得に不可欠なベテランの存在

 一方、彼ら若手が世界に怯むことなく思い切り実力を発揮できるのは、経験豊富なベテラン勢の存在が大きい。なかでもキャプテンを務める豊島英(2.0)、長い間Wエースとして日本をけん引してきた藤本怜央(4.5)、香西宏昭(3.5)がプレー面でもメンタル面でも支柱となっている。

 32歳の豊島はスピード、チェアスキル、判断力など高いスキルを持ち、特に守備力は一級品。トランジションの速さと守備力で世界の頂点を目指す現在の日本代表には、絶対に欠かすことのできない存在だ。自ら考案したチームスローガン「一心」で、チームを統率する。

 04年アテネから5大会連続出場となる藤本は、チーム最年長37歳のセンター。若手にも負けないスタミナを持ち、シュート力は世界トップクラスだ。世界のビッグマンたちに囲まれても、シュートをねじ込むゴール下の力技は必見。さらに3Pシュートやフリースローも高確率に決める。最後のパラリンピックと決めている東京は“おじさんの星”となるつもりだ。

自身最後のパラリンピックにかける藤本怜央 [写真]=斎藤寿子


 そして、日本で唯一のプロとして活動しているのが、33歳の香西だ。イリノイ州立大学時代は全米選手権でシーズンMVPを獲得し、卒業後は6シーズン、ドイツのブンデスリーガでプレー。10代の頃から同世代の世界トッププレーヤーたちとしのぎを削り合ってきた。シュート力、守備力、チェアスキルなどマルチな才能を持ち、自らドライブで切り込むなど打開力や、劣勢時にはチームの突破口を開く力もある。試合を決するプレーも多く、最後の勝負どころでは、やはり藤本と香西の存在は欠かすことはできない。

 若手とベテランとが融合した史上最強の男子日本代表が、史上初の表彰台を狙う。

日本で唯一のプロとして活動する香西宏昭 [写真]=斎藤寿子

文・写真=斎藤寿子

車いすバスケについて
車いすバスケットボールのルールは、一般のバスケットボールのルールとほぼ同じで、1チーム5人の選手がボールを奪いあい、一般の競技と同じ高さ(3.05メートル)のゴールにボールを投げ入れて、得点を競います。スピードや俊敏性、持久力に加えて、車いすを操作する技術などが決め手となります。また、ゲームは10分のピリオドを4回行います。第1ピリオドと第2ピリオドの間、第3ピリオドと第4ピリオドの間、それぞれ2分間のインターバルがあり、第2ピリオドと第3ピリオドの間のハーフタイムは、10分または15分です。(日本車いすバスケットボール連盟公式HPより)

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