2021.08.30

敗戦でも史上初のメダル獲得へ存在感を示した赤石竜我と古澤拓也

[写真]=Getty Images
新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年よりスポーツ専門ウェブサイトで記事を執筆。車いすバスケットボールの取材は11年より国内外で精力的に活動を開始。パラリンピックは12年ロンドンから3大会連続、世界選手権は14年仁川、18年ハンブルク、アジアパラ競技大会も14年仁川、18年ジャカルタの各大会をカバーした。

 リオパラリンピック銀メダルのスペインと対戦したグループリーグ第4戦、日本は相手の力強いインサイドアタックを思うように抑えることができず、61-79で今大会初黒星。3年前の世界選手権ではわずか2点差の惜敗だったが、世界一のビッグマン揃い、そしてシュート力のあるスペインの壁は、厚く、高かった。しかしそんななかでも、より重要な試合が続く今後への期待が高まる若手の姿があった。

好プレーを引き出している自信と責任感

 今大会初スタメンとなった宮島徹也、赤石竜我、岩井孝義が入り、藤本怜央と豊島英を加えたラインナップでスタートしたこの試合、出だしは強豪スペインと接戦を予感させるほどの攻防だった。

 そのなかで先輩たちに負けじと存在感を示したのが、チーム最年少の赤石竜我だ。最大の武器であるディフェンスでの貢献はもちろん、オフェンスでもミドルシュートを決めたかと思えば、カットインからのレイアップもしっかりと入れた赤石。さらに豊島のシュートをアシストするなど、得点に絡んだプレーも多く見られた。

 また、チームメートを鼓舞する赤石の声が、コート上でひときわ聞こえてきていた。結局、自身今大会最長、この試合ではチーム最長となる30分半の間、プレーをした赤石。試合後には、強い思いで臨んでいたことを明かした。

「ここ3試合、鳥海(連志)が本当に頑張ってくれていて、特にカナダ戦の後は憔悴しきっていたように見えたので、彼の負担を減らしてあげたいという思いがありました。そういう中でスタートで出る僕の責任は大きいなと。もちろん彼の役割を担えるほどの選手ではないけれど、それでも彼の負担を軽減させることができるのは(同じクラス2.5の)僕しかいないと思っていたので、覚悟をもって試合に臨みました」

 もともとディフェンスを買われて代表の座をつかんだ赤石だが、近年ではシュート力も武器となりつつある。2019年アジアオセアニアチャンピオンシップスでの最終戦では、フィールドゴール成功率80パーセントを誇り、自身最多の9得点をマーク。今大会グループリーグ第2戦の韓国戦でも、2本中2本を決めている。

 チームの総得点からすれば、決して割合は多くはないが、実力が拮抗した相手が多い中では主軸となるシューター以外の選手の得点が大きく響くことは少なくない。赤石もそのことを自覚しているのだろう。自らゴールに向かう姿勢は、3年前に初めてA代表入りした頃とは比較にならないほど強い。今は、迷いなくミドルレンジのシュートも打ち切れているという。その理由を、赤石はこう語る。

「僕の原点にあるのは、あくまでもディフェンス。だからたとえシュートが外れたとしても、ディフェンスで取り返せるという自信があるので、積極的にミドルシュートを打つことができています」

 一方、チームが苦しい状況に陥っている時にこそ、頼れる存在になることを示したのが、古澤拓也だ。特に第4クォーターの古澤は、シューターとしてさらに覚醒したと思えるほどの脅威的な数字を残している。10分間でのチーム総得点14のうち、一人で13点を叩き出しているのだ。

 今大会に臨むにあたっての気持ちを、古澤はこう語っている。

「プレータイムが多い少ないにかかわらず、常に100パーセントの力を出せる準備をすることが代表としての責任。自分が出た時にちゃんとチームに貢献し、チームが勝つことを一番にやることにこだわっているからこそ、いいメンタルを作れているのだと思います」

 もともとボールハンドリングと3ポイントシュートを武器とする選手として注目されてきた古澤。キャプテンを務めた2017年の男子U23世界選手権ではチームを4強に導く活躍をし、鳥海とともに個人賞のオールスター5にも輝いた。ここ数年でディフェンスにも磨きがかかっており、史上初のメダル獲得を目指す男子日本代表にとってキーマンの一人であることは間違いない。

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