2021.11.16

2年ぶりに有観客で全日本ブロック選抜選手権開催!…今後も注目したい選手をピックアップ

2年ぶりに開催された大会から注目選手をピックアップ [写真]=斎藤寿子
新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年よりスポーツ専門ウェブサイトで記事を執筆。車いすバスケットボールの取材は11年より国内外で精力的に活動を開始。パラリンピックは12年ロンドンから3大会連続、世界選手権は14年仁川、18年ハンブルク、アジアパラ競技大会も14年仁川、18年ジャカルタの各大会をカバーした。

 日本の車いすバスケットボール界にもようやく実戦の舞台が戻ってきた。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、昨年から車いすバスケの国内大会はすべて中止や延期となっていた。そんななか、先陣を切って2年ぶりの大会開催を実現させたのが、11月12日、13日に北九州市立総合体育館で行われた「第23回全日本ブロック選抜車いすバスケットボール選手権大会」だ。

 今大会には、関東、東京、近畿、九州の4ブロックの選抜チームが参加。U23日本代表との強化試合を除き、ブロック選抜同士で2試合ずつを行った。結果は連勝した関東選抜が優勝、2位には近畿選抜、3位には九州選抜が入った。

いぶし銀のプレーを披露した関東・永田

 東京パラリンピック銀メダルメンバーの古澤拓也、川原凜をはじめ、強化指定選手の経験を持つメンバーがそろった関東選抜の実力は、やはり群を抜いていた。それでも大半の選手が2年ぶりの実戦で、試合勘を取り戻すのに時間を要したのだろう。国内を代表するシューターたちが軒並み不発だった初日のU23日本代表との強化試合では、41-41とロースコアでのドローに終わった。

 しかし、2日目には選手それぞれが本領を発揮。近畿選抜には70-37、九州選抜には80-35と圧勝してみせた。現役の強化指定選手である篠田匡世、池田紘平、緋田高大、朏秀雄の4人はさすがのプレーを披露。20代や30代前半の彼らは、今後も代表候補に名乗り出てくるはずだ。

 さらにいぶし銀のパフォーマンスで観客を魅了したのが、永田裕幸だ。2016年リオパラリンピック日本代表であり、数年前までは強化指定選手として東京パラリンピックの出場を目指した一人でもある。

 37歳のベテランならではの安定感も魅力の一つだが、やはり永田と言えばスピード感あふれるプレーに注目が集まる。今大会でもレイバックシュートやドルブルカットなど、永田らしいプレーで躍動。特に九州選抜戦では、速攻からのレイアップに、オフェンスリバウンドに飛び込んでのゴール下のシュートを決めるなど、多彩なプレーを披露。2本の3Pシュートも決め、チーム最多の18得点をマークしてみせた。

永田はスピード感あふれるプレーで躍動 [写真]=斎藤寿子

熱血漢あふれたプレーで存在感示した東京・仙座

 一方、東京選抜はU23日本代表との強化試合も含めて全敗に終わった。森谷幸生、橘貴啓、佐藤大輔、田村暢哉の長身プレーヤーをそろえ、2017年U23世界選手権4強メンバーの熊谷悟、東京パラリンピック女子日本代表の小田島理恵を擁した東京選抜だったが、九州選抜に1点差で敗れるなど、勝利につなげることはできなかった。

 苦戦が続いた中、チーム一気迫のこもったプレーを見せていたのが、仙座北斗だ。クラス1.5の仙座は小柄だが、ボールへの執着心と粘り強さはピカ一。リーチの長さを生かしたディフェンスが最大の強みでもある。2019年の関東カップでオールスター5を受賞した頃から著しく成長し、所属するNO EXCUSEでも存在感を示してきた。熱血漢を絵に描いたような彼のプレーは見ているものを魅了するものがあり、そのスタイルはこのコロナ禍でも何ら変わってはいなかった。

気迫のこもったプレーを見せた仙座 [写真]=斎藤寿子

日本代表・京谷HCからも高評価の近畿・川上

 リオパラリンピック日本代表の村上 直広擁する近畿選抜には、東京パラリンピック女子日本代表の網本麻里、清水千浪、柳本あまねの3人が顔をそろえた。日本屈指のシューターである村上、長身の堀内翔太に加えて、柳本もミドルシュートやピックアンドロールからのレイアップなど多彩な攻撃を見せた。しかし、東京選抜には61-36と快勝したものの、関東選抜には37-70と力及ばずの結果に終わった。

 それでも、今後が楽しみな選手の姿も見受けられた。その一人が、今大会でオールスター5に選出された川上祥平だ。スピード、チェアスキル、シュート力など攻防にわたってマルチな才能を持つプレーヤーで、リオパラリンピック以降に強化指定選手に入ったこともある。国内トップクラスの実力を持っていることは間違いない。

 日本代表の指揮官として続投が決まった京谷和幸HCからも「チャンスメークするためのピックの精度も、アウトサイドのシュート力も、以前よりもレベルが上がっている」と高い評価を得た。まとまりすぎることなく、強みとなる個性が出せるようになれば、今後は日本代表に名乗りをあげる可能性も十分にあるはずだ。

男子代表の京谷HCの目に止まった川上 [写真]=斎藤寿子

好シューターの九州・立川が東京戦でチーム最多の27得点

 地元の九州選抜は、近年のブロック選抜大会ではなかなか白星を挙げることができずにいた。しかし、今大会では東京選抜との競り合いを制し、久々に勝利の喜びを味わうことに。最大の得点源は、九州一のセンター福澤翔。大会初戦となったU23日本代表との強化試合では34得点を叩き出すなど全3試合で2ケタ得点をマークした。

 その福澤がインサイドを中心に攻める一方で、アウトサイドで抜群のシュート力を発揮したのが、クラス3.0の立川光樹だ。U23日本代表との強化試合では10得点も、久々の試合に感覚をつかむのに苦戦し不発に終わった印象があった。しかし、同日に行われた東京選抜戦では27得点と福澤の24得点を上回り、勝利に大きく貢献。オールスター5にも選出された。

 ローカル大会ながら1試合で40得点以上をマークしたこともある立川。そのシュート力が評価され、2017、18年には強化指定選手入りした。だが、公式戦での12人のメンバー入りを果たすことはできなかった。多くの若手が台頭して競争が激しく、トランジションの速さとディフェンス力を最大の武器とする現在の日本代表において、立川のスタイルは厳しい部分があることは否めない。

 それは本人も承知だ。それでも、立川は代表入りを諦めたわけでは決してない。シュート力をさらに磨き、再び日本代表候補の一人となることを目標としている。今後、どのようにして狭き門を突破していくか、立川もまた注目選手の一人だ。

立川は再び日本代表候補の一人となることを目指す [写真]=斎藤寿子


写真・文=斎藤寿子

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