2018.05.30

【渡邊雄太スペシャルインタビュー】NBA選手になることは子供の頃からの夢。そのために1日1日を大事にしていきたい

ロサンゼルスでトレーニング中の渡邊雄太をキャッチ[写真]=山脇明子
ロサンゼルス在住。1995年に渡米、現在は通信社の通信員として、MLB、NBAを中心に取材を行っている。

2013年、尽誠学園高校を卒業した渡邊雄太はプレップスクールを経て、ジョージワシントン大学に進学。在学中の4年間はチームの主力として、NCAAディビジョンⅠというカレッジバスケットボールの高いレベルの中で心身ともに成長を遂げた。ネッツ、ウィザーズのプレドラフト・ワークアウトを終え、エージェント会社がNBAスカウトらを対象に開催するオープン・ワークアウト“プロ・デイ”を翌日に控えた渡邊に、改めてアメリカの大学で過ごした4年間の成果、そして、これから本格的に挑戦するNBAについてたっぷりと話してもらった。

取材・文・写真=山脇明子

毎年成長が感じられたジョージワシントン大での4年間

渡邊はこの6月にジョージワシントン大を卒業。4年もの間に大きな成長を遂げた[写真]=Getty Images


――今月ジョージワシントン大を卒業しましたが、日本の大学ではなく、アメリカの大学に進んだ理由について、改めて話してもらえますか?
渡邊
 本当に小さい時からNBA選手になりたいという夢があってアメリカでバスケットをしたいとずっと思っていました。高校2年生のウインターカップでチームが準優勝して、僕のこともいろんな方に知っていただいて、その時にアメリカ行きの話が出だしたんです。そして、いろんな人と話しているうちに、チャンスがあるのなら、あるうちにアメリカに出て自分の力を試したいというのが自分の中でもあったので。当然反対意見もたくさんあったのですけど、自分が一番したいことを優先してアメリカという場所に飛び込んで来ました。

――あの頃は、アメリカの大学にプレーする選手はあまり多くありませんでした。その中で挑戦するというのは結構勇気のいることだったと思います。
渡邊
 例がない分ネガティブなことを言う人が多くて、僕も高校生だったので、そのように言われると、自分もネガティブな気持ちになってしまうこともありました。でも自分の中でアメリカに行きたいという強い気持ちがあったのが一番というのと、(尽誠学園)高校の恩師、色摩(拓也)コーチと両親が僕のことを全力でサポートしてくれました。色摩先生からも両親からもアメリカに行くことに対するネガティブなことは一度も言われたことがなかったですし、自分を信じて、もしアメリカに行くという道を選んだら、全力で応援するからと言ってもらえたので、それも凄く励みにはなりました。

――大学での4年間、どのようなことを学び、人間としてどのように成長できたと思いますか。
渡邊
 大学では勉強もしなければいけないという部分もありますし、プレップスクールの時に比べるとはるかにレベルが高いという中で、諦めたり、しんどいことから逃げ出すということは4年間一切しなかったので、そういう点に関しては自分もよくやったと思います。これからもっと厳しい道に進もうとしている中で、この先どんなことがあっても諦めるっていうことは絶対にしないんだろうな、ということは自分の中でもわかっているので、そういう点では4年間授業、練習、試合、いろいろしんどいこともありましたけど、とにかくひたすら努力して向かっていった姿勢みたいなものは、すごく成長した部分かなと思います。

――夜に試合をして、朝早くから学校に行ったこともあったと思います。
渡邊
 アウェイの時など、(午前)2~3時に帰って来て、次の日の8時から授業という日もあったので。そういう時は起きるのもしんどかったのですけど、そういう時こそやらなきゃいけないという気持ちがあったので、しっかりやっていました。

――バスケット面ではディビジョンIで4年間プレーして、年々向上していきました。
渡邊
 数字にも表れているんですけど、本当に成長できた4年間だったと思います。1年生で最初に入った時はシックスマンで使われていて、途中からスターターで起用されて、2年の終盤から相手のエースストッパーとして起用されるようになって、最終学年ではキャプテンでエースとして40分試合に出させてもらえていたので、年々自分が成長しているのを感じていました。すごく中身の濃い4年間だったなという感じです。

――最終年には大学が所属していたカンファレンス「アトランティック10」の年間最優秀守備選手にも選ばれました。
渡邊
 3年生の時にオール・ディフェンシブチームに選ばれて、その時に来年こそは絶対にディフェンシブ・オブ・ザ・イヤー(年間最優秀守備選手)を取るって決めていたので、その目標が達成できたというのは自分でも大きかったですし、自分のやってきたことが間違いではなかったというのが形として証明されたので、それはすごく大きかったです。

ネッツとウィザーズのワークアウトで得た手ごたえ

4年次にはA10の年間最優秀守備選手にも選ばれた[写真]=Getty Images


――ニュージャージー・ネッツのワークアウトを終えた時には「結構レベルの高いメンバーの中で自分をアピールできた」と言っていましたが、そのあと受けたワシントン・ウィザーズのワークアウトではどうでしたか。
渡邊
 ネッツの時、凄いメンバーの中でいいプレーができていた分、余計に…。ウィザーズの時も凄いメンバーが集まっていたんですけど、最初がうまくいった分、余計に自分の中であまり納得のいくパフォーマンスではなかったなという感じでした。でもウィザーズ側はエージェントにいい事も言ってくれていたみたいなので。シュートは決めなければいけないですけど、それができない時でもやっぱり他の部分でもアピールしていかなきゃいけないので、そういった意味では、ウィザーズのワークアウトではまた一ついい経験ができました。

――エージェントに言ってくれたいいこととは?
渡邊
 バスケットのIQが高いという部分で、3対3になった時にスペースをしっかり見つけられていたとか、バスケットをよく理解しているという部分を評価していただいていたみたいです。

――ネッツの時は、面接で「プレーを見たのが今日初めてだったけれど、すごく驚いたと言われた」と言っていましたが、今回はどうでしたか?
渡邊
 今回は形式ばった面接はなくて、練習後にコーチに一人ひとり話に行きました。簡単な会話だったんですけど、いい部分は評価していただいていましたし、反省する部分は多かったんですけど、アピールできた部分もあったんじゃないかなと思っています。

――バスケットボールは誰もがいつでもシュートが入るというわけではないので、ウィザーズの時のように入らなかった時に何ができるということを見せるのは大事になってきますね。
渡邊
 しかもNBAに行くとなると、最初の年は、僕にまず得点能力を求めないと思うので。それ以外の部分で、ディフェンスだとか、オープンスペースを見つけてオープンシュートをしっかり決めるとか、そういう役割。僕の場合は使われるとしたら絶対にそこなので、そういう部分はしっかりアピールしていきたいと思います。

――ウィザーズの時は、NBA選手はいましたか?
渡邊
 ロッカールームがウィザーズの選手用と同じところだったんですけど、ジョン・ウォールが向かいに座って携帯をいじっていました(笑)。ちょっと不思議な感じというか、別に同じチームじゃないんですけど、ただ同じロッカールームで、僕は着替えていて、ジョン・ウォールは携帯を触っていてという、なんかすごく不思議な空間でした。

――特に話しかけることもなく?
渡邊
 なんか自分の世界に入っていたので(苦笑)。

――ウィザーズのワークアウト後、アメリカ人メディアとの会見でジョー・イングルズ(ユタ・ジャズ)を見本にしていると言っていましたが、いつから彼を意識して見ていましたか?
渡邊
 僕、プレップ時代にドノバン・ミッチェル(ジャズ)と3回対戦していて、彼のことが気になっていたので、最初は彼目的で、自分が対戦した相手がNBAでどういうプレーをするんだろうと見ていたんですけど、その時にいい選手がいるなと思って。同じレフティですし、ディフェンスも凄く良くて、そこから凄く意識して見るようになりました。

――渡邊選手にとって、NBAを目指すことの意義とは何ですか。
渡邊
 小さい頃からNBA選手になりたいという夢があって、子供の時から友達がゲームして遊んだりしていた時に親に付き合ってもらってずっと練習をして、高校を経て一人でアメリカに来て、本当にずっとNBAを目指してやっているので、NBA選手になるとうのは自分の中で凄く大きなことですし、その目標に到達するために今のプロセスが凄く大事なので、1日1日を大事にしていきたいなと思います。

――今季すぐにNBAに届かなかったら、どのようにする予定ですか。
渡邊
 今はまだそこまでは考えていません。今はまず今できることを一生懸命やって、駄目だったら駄目だった時にエージェントなりいろんな人と考えればいいと思っています。でも最終目標がNBAなので、今年ダメだったとしても来年チャンスがないわけではないので、来年に向けてどこでするのがベストなのかを考えてやっていきたいと思っています。

――そういう意味では外国人選手のプレドラフト・ショーケースとなるグローバルキャンプ(6月2~5日・イタリア)は一つのきっかけになりますね。
渡邊
 ジョージワシントンはメジャーなチームでもないので、テレビ放送もそれほどなかったですし、見てもらう機会が少なかった中で、自分を見せる場所があるということは物凄くありがたいことなので、しっかりアピールして、いろんな人に僕のことを知ってもらい、興味を持ってもらえればと思っています。

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