バスケットボールの日本代表選手として活躍し、引退後は古巣の熊谷組、大和証券、日立(現サンロッカーズ渋谷)などでヘッドコーチを歴任。現在は早稲田大学スポーツ科学学術院教授を務め、NBA解説者としての肩書きも持つ倉石平(くらいし・おさむ)氏に、2016-17シーズンのNBAで注目すべき5選手を挙げてもらった。
NBA見るならこの5選手に注目! その①レブロン・ジェームズ(クリーブランド・キャバリアーズ)
「現在のNBAにおけるナンバーワンプレーヤーと言っていいでしょう。ここ1、2年は心身ともに充実していてキャリアのピークにあると思います。身体面のピークは一般的に、28歳ぐらいと言われています。 しかし、体力が落ちてくる頃に、経験値によるうまさが備わってきて、それらが合わさって一番充実するのが32歳頃とも言われているんです。レブロンは今31歳なので今シーズン、最高のプレーを見せてくれる可能性があります。
僕は、プレースタイルから見てレブロンは35、36歳になっても、トップレベルで活躍できると見ています。まず両親からもらった体が、普通の人とは全然違う。大きなケガをしたことがないんですよ。まさに“無事之名馬”で、シーズン82試合とプレーオフを合わせて最大120試合を戦って、それをずっと続けているんですから。マイケル・ジョーダンもそうですけど、やっぱりケガをしない選手というのは貴重ですよね。
プレーヤーとしてすごいところは、5番(センター)を除いた1番(ポイントガード)、2番(シューティングガード)、3番(スモールフォワード)、4番(パワーフォワード)のすべてできることです。そんな“水陸両用車”みたいな選手はあまりいないんですよ(笑)。歴史的な背景を考えると、昔は(ジョージ)マイカンから始まって、(ウィルト)チェンバレンだとか、(ビル)ラッセルだとか、センターの選手がずっと目立っていました。それからマイケル・ジョーダンやコービー・ブライアントといった2メートル以下の選手がNBAではスターになった。それこそ「柔よく剛を制す」じゃないですけど、小柄な選手が大柄な選手を倒すことに夢があるみたいな。でもレブロンは大きくて何でもできるんですよ。NBAが進化していく中で それにマッチした、アジャストしたプレーヤーと言えるでしょうね。
高卒でキャブス(クリーブランド・キャバリアーズ)に入って、重圧のない中でいきなりNBAファイナルまで行って、そこでメンタル面の重要性に気づかされた。その時から「メンタルが弱い」という指摘を受けたりして、後にマイアミ(ヒート)に移籍するわけですけど、優勝を経験して大きく成長した。ものすごくリーダーシップがあって、いろいろ経験を元にチームメートを叱咤激励して、昨シーズンはNBAチャンピオンになりました。ファイナルシリーズの絶体絶命の状況から立ち直ってチームを勝たせるわけですから、特にメンタルの部分は本当に強くなったと思います。今シーズンもリーグの中心として活躍するでしょうね」