バスケットボールの日本代表選手として活躍し、引退後は古巣の熊谷組、大和証券、日立(現サンロッカーズ渋谷)などでヘッドコーチを歴任。現在は早稲田大学スポーツ科学学術院教授を務め、NBA解説者としての肩書きも持つ倉石平(くらいし・おさむ)氏に、2016-17シーズンのNBAで注目すべき5選手を挙げてもらった。
NBA見るならこの5選手に注目! その②ケビン・デュラント(ゴールデンステート・ウォリアーズ)
「2番(シューティングガード)、3番(スモールフォーワード)をこなす選手ですが、2メートルを超えてて(2メートル6センチ)このポジションをこなせる選手は少ないですね。運動能力がそれほど高くなくてコンタクトプレーには強くないと思いますけど、ボールハンドリング、シュートタッチ、相手をかわす技術が抜群で、点を取る才能はずば抜けています。
この夏にオクラホマシティ・サンダーからゴールデンステート・ウォリアーズに移籍しました。何としても優勝したい、という気持ちがうかがえますね。アメリカは“フランチャイズビルダー”が称賛されるんです。 最初にドラフトで入ったチームで中心選手になってタイトルを取るというのが。逆に何度も移籍する選手は“ジャーニーマン”と言われて、印象が良くなかったりします。デュラントのような大スターが移籍すると、チームじゃなくてリーグ再編にまで影響が出ますし、実際にそういう感じに なるかもしれません、いやもしかするとなりつつあるのかも (笑)。あまり考えられなかった移籍でしたけど、それでも彼は移籍したわけで、本当に優勝したいという想いが強かったのかなと。
ただデュラントが来たことで、チーム編成は本当に難しくなったと思います。もともと最強だったチーム(昨季、NBA記録のシーズン73勝を達成)にスタープレーヤーが来たので。5番(センター)は誰がやるかは置いておいて、4番(パワーフォワード)はドレイモンド・グリーン、3番はおそらくデュラントで、2番がクレイ・トンプソン、1番(ポイントガード)がステフィン・カリーになる。そうなったらカリーは自分の得点を捨ててまで味方にパスを出すのか、デュラントもボールを持ったら打つだろうし、そうなったらトンプソンは1試合で何回ボールを持てるのかなと(笑)。彼は“キャッチ&シューター”で、自分でクリエイトしてシュートできるタイプじゃないんですよ。誰かがお膳立てしないといけないんだけど、それがどうなるのか。こうなると5番はリバウンド専門になってしまいそうですね(笑)。
それも含めて、デュラントはどんな活躍を見せてくれるか。彼個人のプレーはもちろんですけど、ヘッドコーチが作るチームによってパフォーマンスは変わってくると思います。いいチームを作るなら誰かが我慢しないといけない。選手同士が互いにリスペクトしてチームとして機能すれば、とてつもないチームになると思いますよ」