電撃移籍で幕を閉じたカーメロの夏、サンダーは優勝を狙いつつ将来に備える

話題性に富んだカーメロのオフシーズンは、サンダーへの移籍で終わりを迎えた [写真]=Getty Images

 移籍の噂や”フーディ・メロ”など、常に話題が出続けたカーメロ・アンソニーの夏は、昨季のシーズンMVPであるラッセル・ウェストブルック、アメリカ代表でともにプレーしたポール・ジョージが在籍するオクラホマシティ・サンダーへトレードで加入という形で幕を閉じた。

 カーメロのバスケットボールキャリアは華々しいもので、2003年の全米大学選手権(NCAAトーナメント)では優勝を飾り、オリンピックでは、2008年の北京、2012年のロンドン、2016年のリオデジャネイロと、アメリカ代表として3度にわたって金メダル獲得を果たした。だがNBAでは、2003年から2011年2月まで在籍したデンバー・ナゲッツにおいても、その後これまで在籍したニューヨーク・ニックスにおいても、チャンピオンシップを手に入れられずにいる。

 昨季の個人スタッツは、ほとんどの部門でキャリア平均こそ下回ったが、74試合に出場し、1試合平均22.4得点5.9リバウンドと評価されるべき成績を残した。しかし、なかなかチームが勝ち星を得られず、「勝てないチームのエース」のようなレッテルを貼られてしまった。

 9月13日(現地時間12日)に発表された現地メディア『ESPN』のプレーヤーランキングでは、昨季の31位から、ルーキーでまだ1試合もNBAでプレーしていないロンゾ・ボールより下の64位にまで転落。ただし、このランキングには、ファン、選手から疑問の声が上がっている。どれだけ所属チームが成功から遠ざかろうと、この33歳のフォワードの才能を誰もが認めているのだ。

『ESPN』のプレーヤーランキングでは64位につき、議論を呼んだ [写真]=Getty Images

 そんなカーメロの加入は、サンダーにとってきわめて効果的なものになるだろう。

 オフェンス面での戦力アップは大きい。昨季キャッチ&シュートのフィールドゴール成功率44.8パーセント、3ポイント成功率42.6パーセントの高確率を誇ったカーメロは、ウェストブルックの新たなパスターゲットに定着し、生え抜きエースの得点の負担を減らすことができる。また、ジョージの存在を考えれば、カーメロへのマークは今までのキャリアよりタイトでなくなると予想ができ、キャリアハイのシュート確率を記録する可能性も高い。

 そして、サンダーの今オフシーズンでの総合的な動きは、今後のチーム作りにも好影響を及ぼす。サラリーの整理に成功したからだ。カーメロとのトレードでニックスへ放出したエネス・カンターは、今季と来季でそれぞれ1800万ドル(約20億円)の契約を保持(来季はプレーヤーオプション/選手側が契約破棄の権利を所有)。また、ジョージとのトレードでインディアナ・ペイサーズへ放出したビクター・オラディポは、2020-21シーズンまで続く、1年あたり2100万ドル(約23億円)の契約が残っていた。

 大型契約を抱える2選手が退団したことで、今季終了後にウェストブルック、ジョージ、カーメロ(いずれも来季の契約はプレーヤーオプション)がチームを離れたとしても、空いたキャップスペースで新たな補強が可能なのである。

 確かに、年俸が2600万ドル(約29億6000万円)に上るカーメロの加入により、今季のサラリー総額自体は、リーグ全体3位である1億3400万ドル(約150億円)まで跳ねあがった。しかし、強化のために大金を払うことを厭わなかったその姿勢こそが、チームの柱であるウェストブルック残留の好材料となるだろう。ましてやサンダーは、ニューヨークやロサンゼルスといった大都市にフランチャイズを置くチームではないのだ。

2018年夏にフリーエージェントの権利を得るウェストブルック [写真]=Getty Images

 こういった観点から、今オフシーズンでサンダーが決行した一連のトレードは、今季優勝を見据えるという短期的な目で見ても、来季以降にチームを再建するという長期的な目で見ても、非常に評価が高いのである。

 もっとも、1試合平均14.3得点6.7リバウンドを記録していたビッグマン、カンターの移籍により、チームのインサイドの層が薄くなったのも事実。ある程度計算できるビッグマンを格安で獲得すれば、盤石の布陣になるはずだ。

文=中野知馬

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