2019.02.12

NBAのスーパースター、コービー・ブライアントとともにバスケの概念を一変させた名器『ZOOM KOBE 4』

2008年12月19日のヒート戦でコービー・ブライアントはNIKE『ZOOM KOBE 4』を着用して初めてコートに立った [写真]=Getty Images
スニーカー好き・NBA好きが高じ社会人になってからバスケを始め、現在はBリーグ観戦も。スニーカー紹介ブログ【sneaker is my soul】を運営する"シューズコーディネーター"。

今から10年前、バスケットボール界に多大なる影響を与えた一足のバスケットボールシューズが誕生した。NIKE『ZOOM KOBE 4』ーー。NBA史に残るスーパースター、コービー・ブライアント(元ロサンゼルス・レイカーズ)のシグネチャーシューズであるそのモデルは、着用主であるコービーと同様に、バスケットボール史に名が刻まれるべき存在である。そこで、『ZOOM KOBE 4』とコービー・ブライアントについて振り返りたい。

文・写真=CARTER_AF1

NIKE『ZOOM KOBE 4』誕生の軌跡

NIKE ZOOM KOBE 4 “Venom”カラー。2008年12月19日にコービー・ブライアントが初めて履いたのは、このカラーだった [写真]=CARTER_AF1

『ZOOM KOBE 4』誕生までの軌跡については、2000年代中期まで話が遡る。それまでのNIKE製バスケットボールシューズ(以下バッシュ)は、機能は盛り込めどその分重量もあるというプロダクトのリリースが続いていた。「着用する選手のパフォーマンスを引き出しつつ足を保護する構造とするには、重量があるのは当然」、そんな固定観念もあったかもしれない。

 その状況を打破すべく、NIKEはバッシュの軽量化に取り組む。必要な機能を保持させながら重量を減らすには、一体どうすればよいか。NIKE開発陣はそのヒントを吊り下げ式の橋から得た。橋全体を支えるケーブルを模した機構をバッシュに取り込めば、必要な強度を保ちつつ軽量な素材を使用できるに違いない。

 その発想を出発点とし、NIKEは高い強度と柔軟性を兼ね備えた強化ナイロン繊維による技術、”フライワイヤー” の開発に成功。それをアッパーに張り巡らすことにより、分厚い素材によらずともバスケットボールの激しい動きに耐える強度を獲得したのだった。

アッパー素材を薄くしながらも耐久性を確保

2008年にリリースされた、HYPERDUNKの第1作。フライワイヤーを張り巡らし、アッパー素材を薄くしながらも耐久性を確保した [写真]=CARTER_AF1

 フライワイヤー技術を搭載した最初のバッシュは、2008年に登場した『HYPERDUNK』(現在は『HYPERDUNK 2008』と通称されている)。それまでのNIKE製バッシュに比べて大幅に軽量化され、多くのNIKE契約選手が着用したこのモデル、コービーもKOBEシリーズ第3作の『ZOOM KOBE 3』から『HYPERDUNK』に履き替え、夏の北京オリンピックでアメリカ代表の金メダル獲得に貢献するなど、その有用性を示した。

 しかし、ストイックに自身を向上させようとするコービーと新たな潮流を生み出そうとするNIKEは、まだ満足しなかった。KOBEシリーズ最新作の『ZOOM KOBE 4』はフライワイヤーを搭載すると共にローカット形状に作り上げられ、さらなる軽量化に加え足首の自由度を確保、着用者のクイックネスを高めることを実現したのだ。コービーは2008年12月19日のマイアミ・ヒート戦で『ZOOM KOBE 4』を初披露したが、それはバスケットボールの歴史上でも大きな意味がある日になったと言えるだろう。ローカット形状の導入は、さらなる軽量化と足首の自由度向上のために、サッカースパイクからヒントを得たコービーがNIKEに提案したと言われている。

ローカット形状としてさらに軽量化に成功

ローカット形状としさらに軽量化したZOOM KOBE 4』。優れたクッション性能とグリップ性能も持ち合わせていた [写真]=Getty Images

 しかしながら、『ZOOM KOBE 4』のローカットのフォルムには、当初否定的な意見も多かった。「ローカットでは足首を捻るリスクを高めてしまう」、「長いシーズンを戦い抜くためにもコービーはバッシュを替えて、ハイカットのバッシュを履くべきだ」ーーそんな批判もあった。

 だがコービーは、『ZOOM KOBE 4』を履き続けた。それだけではない。コービーは全試合に出場、さらにレイカーズを2009年のNBA王座に導き、自身とNIKEが正しい選択をしたと証明して見せたのだ。それにより、やはり固定観念と言えた「ハイカットのバッシュでなければケガをする」という認識は覆された。『ZOOM KOBE 4』はローカット形状のバッシュが一気に普及するきっかけを作ったのだ。

 2009年以降、ローカットのトレンドはNIKE以外のメーカーにも爆発的に広がり、それと同時に軽量化戦争も激化していくことになる。ローカット形状で軽量なバッシュは現在当たり前のように市場を埋め尽くし、プロ選手のみならず多くのバスケットボーラーが愛用しているが、それは10年前に生み出された『ZOOM KOBE 4』と、それを履いたコービー・ブライアントによりもたらされたものであると言っても過言ではない。『ZOOM KOBE 4』は、まさしく歴史を変えたのだ。

ZOOM KOBE 4とコービー・ブライアントは、バスケットボールの歴史を変えた

2008ー09シーズン、『ZOOM KOBE 4』を着用したコービー率いるレイカーズはリーグを制した。バッシュの歴史もこのシーズンから変わっていったと言える [写真]=Getty Images

 その傑作バッシュが、間もなく帰ってくる。史上屈指の高性能シューズだった『ZOOM KOBE 4』にブラッシュアップを施し、『KOBE 4 PROTRO』として蘇るのだ。当時『ZOOM KOBE 4』を履いたバスケットボーラーはもちろん、履いたことのないバスケットボーラーも、『KOBE 4 PROTRO』の履き心地をぜひとも堪能してほしい。それは、現代バッシュの原点とも言えるものであり、あの日のコービー・ブライアントを感じられる、バスケットボールの歴史をなぞれるものなのだから。