2019.05.28

8年連続ファイナル出場を果たしたレブロンがイーストで最後に敗れた2010年のプレーオフ

2010年のプレーオフ。セルティックスとのシリーズで敗退したレブロン[写真]=Getty Images
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8年連続でイーストを制した男がプレーオフで2度も敗北を喫したセルティックス

 2018年6月9日(現地時間8日)。レブロン・ジェームズ擁するクリーブランド・キャバリアーズは、ゴールデンステイト・ウォリアーズとのNBAファイナルで4連敗を喫し、2017-18シーズンを終えた。

 ファイナルでは2年連続でウォリアーズの前に散ったものの、レブロンとキャブスはボストン・セルティックスとのイースタン・カンファレンス・ファイナルで2勝3敗から2連勝し、キャブスは4年連続でイーストを制覇。レブロン個人としては、マイアミ・ヒートに在籍していた11年から8年連続でNBA頂上決戦という大舞台へ勝ち進んだ。

スウィープ敗退となったものの、昨年レブロンは8年連続で頂上決戦に足を踏み入れた[写真]=Getty Images

 ところが、ロサンゼルス・レイカーズへと移籍した18-19シーズン。レイカーズは昨年12月下旬で強豪ぞろいのウエスタン・カンファレンスで4位という好位置にいたものの、レブロン自身の股関節の負傷もあり、チーム成績は徐々にダウン。

 レイカーズは37勝45敗でレギュラーシーズンを終え、6年連続でプレーオフを逃した。そしてレブロンは、06年から続いていたプレーオフ連続出場がストップ。キャリア2年目の05年以降では、プレーオフの舞台に立つことができない初のシーズンとなった。

 今回は、レブロンがイーストのチーム相手にプレーオフで最後に敗れた10年のイースタン・カンファレンス・セミファイナル、セルティックスとのシリーズを振り返ってみたい。

 15年4月。ヒートからキャブスへ帰還して初のプレーオフを迎えるにあたり、レブロンは「俺はこれまで(プレーオフで)経験したすべての(シリーズ)敗戦について考えている」と地元メディア『cleveland.com』へ発言。10年夏にヒートへ移籍し、11年から18年までイーストを8年連続で制してきたこの男にとって、08年に続き、10年のイースタン・カンファレンス・セミファイナルでもセルティックスに敗れたことは、大きな傷跡を残していたと言っていい。

2010年までのキャブス第一期。レブロンは2年連続でリーグベストの成績へと導くも、優勝には手が届かなかった[写真]=Getty Images

<レブロンがイーストで最後に敗れたシリーズをプレーバック!>
2010年イースタン・カンファレンス・セミファイナル
クリーブランド・キャバリアーズ×ボストン・セルティックス

超人的なプレーの数々で2年連続シーズンMVPを獲得

 08-09シーズンにキャブスをリーグベストの66勝16敗へと導き、レブロンは平均28.4得点7.6リバウンド7.2アシスト1.7スティール1.1ブロックをマークして初のシーズンMVPに輝いた。優勝候補と目されていたものの、イースト決勝でドワイト・ハワード(現ワシントン・ウィザーズ)率いるオーランド・マジックの前に2勝4敗で足元をすくわれてしまう。

 するとキャブスはハワード対策として、09年6月下旬に2選手とドラフト2巡目指名権、現金をフェニックス・サンズへ放出し、かつてのリーグNo.1センター、シャックことシャキール・オニール(元レイカーズほか)を獲得。

 フリーエージェント(FA)市場ではアンソニー・パーカーとジャマリオ・ムーン(共に元トロント・ラプターズほか)を加え、ウイングに高さと厚さをもたらした。シーズン途中には得点力に定評があるフォワード、アントワン・ジェイミソン(元ウィザーズほか)も手にし、盤石のロースターを構築した。

 もっとも、キャブスの主役はもちろんレブロン。平均29.7得点7.3リバウンド8.6アシストに1.6スティール1.0ブロックをたたき出し、文句なしで2季連続のシーズンMVPを獲得。チームもリーグトップの61勝21敗を残し、優勝候補筆頭としてプレーオフへ。

 一方のセルティックスは、08年の優勝メンバーであるポール・ピアース、レイ・アレン(共に元セルティックスほか)、ケビン・ガーネット(元ミネソタ・ティンバーウルブズほか)を軸に、司令塔のラジョン・ロンド(現レイカーズ)が飛躍し、“ビッグ4”と呼んでもいいほどの存在感を発揮。

 だが、32勝18敗でオールスターブレイクを迎えたものの、オールスター後は18勝14敗と失速。最終的には50勝32敗を挙げたものの、レギュラーシーズン最後の10試合で3勝7敗と、お世辞にも優勝候補とは呼べず。

 そんな中で迎えたプレーオフ。キャブスはシカゴ・ブルズ、セルティックスはヒートをそれぞれ4勝1敗でファーストラウンドを突破したのだが、キャブスはレブロンが右肘を痛めてフリースローを左手で放つなど、一抹の不安を残していた。

⑨ロンドが本格化し、“ビッグ4”となったセルティックス[写真]=Getty Images

■GAME1 キャバリアーズ 101-93 セルティックス

レブロンとモーの活躍で後半に逆転したキャブスが先勝

 ロンドが前半だけで19得点8アシストの活躍でけん引し、前半を終えてセルティックスが11点をリードして折り返すも、ホームのキャブスが後半に大爆発。モー・ウィリアムズ(元キャブスほか)が第3クォーターに14得点、レブロンが第4クォーターに12得点の集中砲火を見せて逆転勝利。

 キャブスはレブロンがゲームハイの35得点に7リバウンド7アシスト3スティール2ブロック、ウィリアムズが20得点5リバウンド6アシストと、スコアラーたちが仕事を果たした。レブロンは肘の負傷について「良くなってきてるよ。でも言い訳にはしない。どんな状態であっても、俺はそれを言い訳にするつもりはない。第2戦も準備できてるよ」と『AP』へ語り、順調な仕上がりを見せていた。

レブロンが第4Qに12得点を集中砲火し、キャブスは大事な初戦を制した[写真]=Getty Images

■GAME2 セルティックス 104-86 キャバリアーズ

6人が2ケタ得点を奪ったセルティックスが圧勝

 この試合はセルティックスが試合の大部分をリードして快勝。第4クォーター序盤に25点差をつけるなどキャブスを寄せ付けず、シリーズを1勝1敗のタイに。「僕らはやるべきことをすべてやってのけたんだ。シーズンを通して、僕らはゲームの締めくくり方について話し合ってきた。僕らがそれを実行した時はものすごくいい状態なんだ」とアレン。

 セルティックスではアレンがチームトップの22得点に7リバウンド、ガーネットが18得点10リバウンド、ピアースが14得点、ロンドが13得点に19アシスト、ケンドリック・パーキンス(現未所属)が10得点9リバウンド。さらにベンチスタートのラシード・ウォーレス(元デトロイト・ピストンズほか)が17得点と大当たり。

「全盛時は終わった」「優勝への道はない」といった批判を受けているが、アレンは「僕らはまったく心配していない。毎日ジムでショットを放ち、身体を鍛えているからね。僕らはチャレンジする準備はできてる」と自信をのぞかせた。

チームトップの22得点を挙げてセルティックスをけん引したアレン[写真]=Getty Images

■GAME3 キャバリアーズ 124-95 セルティックス

レブロンが第1Qだけで21得点のスパーク! キャブスが敵地で大勝

 セルティックスのホームへと会場を移したこの試合。キャブスはまるで吹っ切れたかのように点を重ねて一度もリードを許さずに29点差で大勝。第1クォーターだけで21得点を奪ったレブロンは、シリーズベストとなる38得点に8リバウンド7アシスト2ブロックの大暴れ。

 また、ジェイミソンの20得点を筆頭に、レブロン以外に5選手が2ケタ得点を挙げる猛攻を見せてセルティックスをねじ伏せた。「俺はバスケットボールをプレーするため、そしてチームに勝利するチャンスを与えるためにここにいる。第2戦に負けた後、俺たちはアグレッシブにプレーすることの重要性を知ったのさ」とレブロンは満足げに語った。

シリーズベストの38得点をたたき出し、キャブスを圧勝へと導いたレブロン[写真]=Getty Images

■GAME4 セルティックス 97-87 キャバリアーズ

ロンドの超絶パフォーマンスでセルティックスが2勝目

「今夜のロンドは本当にセンセーショナルだったね」とセルティックスのドック・リバースHC(現ロサンゼルス・クリッパーズHC)が評したように、この日のロンドは申し分ない働きでセルティックスにシリーズ2勝目をもたらした。

 約47分コートに立ったロンドは、いずれもゲームハイとなる29得点18リバウンド13アシストに2スティールと獅子奮迅の活躍。アレンとガーネットがそれぞれ18得点、トニー・アレン(現未所属)が15得点を挙げたものの、この日の主役は間違いなくロンド。

「僕はアタックし続けたかった。それがリードできた要因だった」とロンドは控えめにコメントしたものの、レブロンは「彼はあのチームのエンジンのようなもの。今夜の彼はチームのためにすべてをこなしてみせた。本当に信じられないパフォーマンスだったね。ロンドは間違いなくディファレンス・メイカー(違いを生み出す存在)だった」と語り、ロンドへ最大級の賛辞を送っていた。

圧巻のトリプルダブルでゲームを支配したロンド[写真]=Getty Images

■GAME5 セルティックス 120-88 キャバリアーズ

「第7戦だと思って臨んだ」セルティックスがキャブスを圧倒

 2勝2敗で迎えた第5戦。ホームのキャブスは第1クォーター終了時点で23-20とリードしていたものの、セルティックスのオフェンスが爆発。第2クォーター以降に100得点を奪ったセルティックスに対して、キャブスは65得点しかできずに32点差の屈辱的な大敗。

 セルティックスでは6本の3ポイントを放り込んだアレンの25得点を筆頭に、ピアースが21得点11リバウンド7アシスト、ガーネットが18得点、ロンドが16得点7アシスト、グレン・デイビス(元セルティックスほか)がベンチから15得点をマーク。チーム全体でフィールドゴール成功率、3ポイント成功率がいずれも50パーセント以上を記録する、圧巻のオフェンスを披露。

 フィールドゴール14投中成功わずか3本の計15得点に終わり、「今夜はいつもだったら決めているオープンショットをいくつかミスしてしまった」と反省したレブロンに対し、リバースHCは「我々は我々。このチームでヒーローがバスケットボールをプレーする必要なんてない。我々はチームなんだ。そしてチームとしてプレーできる時というのはきわめていいんだ」と、セルティックスというチームを強調。「俺たちはここに戻ることはできない。敵地でリーグのベストチーム相手に戦う余裕なんてないからな。だからこの試合が俺たちにとっての第7戦だと思って臨んだんだ」とガーネットは強い気持ちでプレーしたことを明かした。

オールラウンドな働きが光ったピアース[写真]=Getty Images

■GAME6 セルティックス 94-85 キャバリアーズ

レブロンのトリプルダブルも実らず、セルティックスがシリーズに終止符

 セルティックスに土俵際まで追い詰められたレブロンは、この試合でいずれもゲームハイとなる27得点19リバウンドに10アシストのトリプルダブルを挙げるも、セルティックスのディフェンスの前に9ターンオーバーを喫し、21本放ったショットのうち、13本がリムに嫌われてしまった。

 一方のセルティックスは、ガーネットが22得点12リバウンド、ロンドが21得点12アシスト5スティール、ピアースが13得点を挙げたほか、ベンチスタートのラシードが13得点2スティール、トニー・アレンが10得点3スティールを奪い、4勝2敗でキャブスを撃破。

 殊勲の勝利を収めたガーネットは「勝利というのは満足感を与えてくれる。ベストチーム相手にプレーするのは俺たちにとってチャレンジだった。だがなにも着飾る必要なんてない。俺たちが決して見失わなかったこと、それは自信だったんだ。俺たちはベテランチームであり、どこでグループとして集中すべきか全員が理解していた。俺たちはそれをやったまでさ。俺たちの経験がこのシリーズを支配したんだと思う」と自信に満ちあふれた表情で振り返った。

ガーネットはいずれもチームトップとなる22得点12リバウンドと大暴れを見せた[写真]=Getty Images

シリーズを通じてセルティックスにペースをつかまれたキャブス

「俺にとって、今このシリーズが終わってしまった事実は間違いなくサプライズだ」と敗戦のショックを隠し切れなかったレブロン。シリーズ平均42.5分26.8得点9.3リバウンド7.2アシスト2.2スティール1.3ブロックという見事な個人成績を残したものの、右肘の痛みもあり、アウトサイドショットの精度を欠いたことは否定できない。「ケガもゲームの一部」ではあるものの、2年連続でプレーオフ全体のホームコート・アドバンテージを活かし切ることができなかったのである。

 キャブスはレブロンに加えてシャック、モー、ジェイミソンが平均2ケタ得点を残したものの、セルティックスに脅威を与えるには至らず。「我々はこのシリーズの中で、一度もリズムをつかめなかった」とマイク・ブラウンHC(現ウォリアーズAC)が『The New York Times』へ振り返ったように、チームとしての実力差があったと言っていいだろう。

「俺は勝ちたい。それこそが俺にとって最も重要なことであり、唯一気にかけていることなんだ」と自身の思いを口にしたレブロン。この年は本人だけでなく、チームとしてもファイナルまで駆け上がり、フランチャイズ史上初の優勝を最終目標にしていたが、09年に続いてファイナルにもたどり着くことができなかった。

 また、当時のメディアやファン、それに一部の選手たちも、この年2連覇を狙っていたレイカーズのエース、コービー・ブライアント(元レイカーズ)とレブロンによる“ベストプレーヤー対決”を待ち望んでいたが、このドリームマッチは実現せず。

 キャブスを下したセルティックスは、4勝2敗でマジックとのイースト決勝を突破し、2年ぶりにNBAファイナルへと返り咲いた。08年では4勝2敗でレイカーズを下して優勝したものの、3勝2敗で迎えた第6戦でパーキンスをケガで失うなど2連敗で優勝を逃してしまった。

「ロッカールームでは、皆が涙を流していた」とファイナル敗退後にアレンが明かしたように、チーム一丸となって“トゥギャザー・バスケット”を遂行したセルティックスは、世界中のバスケットボールファンの心を揺さぶったに違いない。

 ガーネットはセルティックス加入前まで、ウルブズで何年もプレーオフで勝てずにいた自らの経験を引き合いに出し、レブロンへ「顔を上げろ。俺も(君と同じ場所に)ずっといたんだ。君には本当に、輝かしい未来がある。向上を続けて、君と家族にとってベストだと思うことを決断するんだ」とエールを送っていた。

シリーズ終了後、レブロン(左)へエールを送ったガーネット(右)[写真]=Getty Images

ベストプレーヤーになるべく努力を惜しまないレブロンの来季に期待大

 10年夏にFAとなったレブロンは、「自分の持つ才能をサウスビーチに持ち込む」と明かしてヒートへ電撃移籍。これを知ったキャブスのファンは、SNSなどで大炎上。レブロンのジャージーを燃やす動画が投稿されるなど数多くの敵を作ってしまい、ヒートで迎えた最初のシーズンは特に大きな批判を浴びた。

 それでも、レブロンは03年のドラフト同期であるドウェイン・ウェイド(元ヒートほか)とクリス・ボッシュ(元ラプターズほか)らと共に11年から4年連続でイーストを制してファイナル進出。12、13年には2連覇を達成し、レブロンは2年連続でファイナルMVPを獲得。

レブロンは2012年のファイナルでサンダーを5戦で下して初優勝を成し遂げた[写真]=Getty Images

 14年夏には「自分の故郷にチャンピオンシップをもたらしたい」と明かし、キャブスへと帰還。ヒートでの4年間を「大学生活のようなものだった」と振り返ったレブロンは、より成熟した選手となって再びキャブスの大黒柱に君臨。カイリー・アービング(現セルティックス)とケビン・ラブ(キャブス)というプレーオフ経験のないオールスター選手と“ビッグ3”を構築し、15年もファイナル進出を果たす。

 セルティックスとのプレーオフ1回戦でラブ、ウォリアーズとのファイナル初戦にカイリーをケガで失うも、レブロンは鬼気迫るパフォーマンスでウォリアーズから2勝をもぎ取る奮闘。すると翌16年にはウォリアーズ相手に1勝3敗から3連勝をマークし、歴史的な大逆転劇で優勝。

 10年のセルティックスとのシリーズ第5戦に大敗後、「偉大な選手へ、そしてコート上でベストプレーヤーになるべく、俺は自分自身に多くのプレッシャーをかけている」と口にしていたレブロンは、6年後に故郷へ初のチャンピオンシップをもたらしたのである。

 レブロンにとって、今季は悔しい結果となったことだろう。だがレイカーズとの契約はあと3年残っている。今夏はビジネス面でも精を出しつつ、昨年12月に負傷した股関節を完治させることが重要となる。そして来季、レブロンにはより円熟味を増したパフォーマンスでコート上を席巻してくれると大いに期待したい。

レブロンには来季以降、プレーオフ進出、そして自身4度目のチャンピオンリングを手にしてほしいところだ[写真]=Getty Images

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