2019.06.22

ステフィン・カリーが将来有望な2人と対談「うまくなることにフォーカスしてほしい」

2年連続3度目の来日となったカリー[写真]=兼子愼一郎
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進学先が決まった富永啓生、広島皆実の三谷桂司郎がカリーと対談

 6月21日、NBAのスーパースター、ステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)が2年連続3度目の来日を果たした。

 カリーは翌22日、「UA BASKETBALL TOUR 2019 TOKYO」で東洋英和女学院高等中学校(東京都港区)に登場。イベント開催を前に、この日対談を行う富永啓生と三谷桂司郎が1対1などワークアウトを行っている中で、カリーは「SC30」という自身のイニシャルと背番号をモチーフにした“ハチマキスタイル”で観察。

 その途中にアドバイスを送ったり、好プレーが出れば称賛するなど、カリーはこの日対談する2選手とコミュニケーションを取っていた。すると今度は会場となった同校体育館に集まった生徒のシューティングでパス出し役を務め、ミスをしても生徒たちに寄り添い、ショットがリングをくぐり抜けるまで鼓舞し、鮮やかにショットが決まるとハイタッチをして彼女たちへ自信を植え付けていった。

 今回カリーとの対談に登場したのは、昨年行われたウインターカップで圧巻の平均39.8得点を残し、桜丘高校(愛知県)を大会3位へと導く立て役者となった富永。全国大会で驚異的なパフォーマンスを見せつけた富永は、先日NJCAA(全米短期大学体育協会)1部所属のレンジャー短期大学への進学が決まり、アメリカでNBA入りを目指して新たな挑戦を控える185センチの有望株。

 そして三谷は、先日6年連続21回目となるインターハイ出場を決めた広島皆実高校(広島県)3年生。1年次からスターターを務めている三谷は、昨年「FIBA U18 アジア選手権大会2018」に出場するなど、日本代表としてもプレーする注目選手だ。

カリーとの対談に登場した富永(左)と三谷(右)[写真]=兼子愼一郎

「自分のベストを尽くすことにフォーカスしてきた」とカリー

 ここでは、富永、三谷との対談の中で、カリーが発した印象的な言葉をいくつかお届けしていきたい。

 三谷から「NBA選手になるにあたって、あきらめそうになった時や、プレッシャーになったと感じたことはありますか? それをどうやって乗り越えてきましたか?」と聞かれたカリーは、「プレッシャーは常に、父(デル/元シャーロット・ホーネッツほか)がいたからありました。でも、それに邪魔されないように、自分のゴールというのはずっと掲げていました」と口にすると、自身の考えをこう伝えた。

「僕はそのプロセスを楽しむことをやっていて、NBAに行くことを意識したことは、カレッジに行くまでありませんでした。そして、僕はそれを考えていなくて良かった。自分のベストを尽くす、ということにフォーカスできたところが、ラッキーだったなと思います」。

NBA入りするまでの過程で、「忍耐と自分を律することで乗り越えてきました」と明かしたカリー[写真]=Getty Images

 ノースカロライナ州にあるシャーロット・クリスチャン高校からデイビッドソン大学へと進学したカリーは、現役時代にリーグ屈指のシャープシューターとして活躍した父を持つサラブレッドではあったものの、中学や高校で全米トップレベルのスポットライトに照らされて、順風満帆にNBA選手へと駆け上がってきたわけではない。カリーは言う。

「ぶれずに、ずっとゴールは掲げてきたんですけど、ケガというのは誰にとっても大変で、いつ起きても、どんな重傷だったとしても、やっぱりそれによって我慢強くなければいけませんでした。その時は『将来、大丈夫なのかな?』って思ったりしましたが、そこは忍耐と、自分を律することで乗り越えてきました」。

 NBA入り後も、カリーはキャリア初期に足首のケガに悩まされてきた。だが、ルーキーシーズンから平均17.5得点を記録し、3ポイントでも43.7パーセントという高確率で平均2.1本も沈めており、シュート力に関してはすでにリーグ有数のレベルにあった。

 そしてキャリア4季目となった2012-13シーズン。健康体を手にしたカリーは一気にスターダムへと駆け上がった。平均22.9得点6.9アシストというスタッツ以上に、自身よりも大柄であろうとものともしない怖いもの知らずの3ポイント、巧みなボールハンドリング、柔らかさと華やかさを兼備した鮮やかなアシストで何度もハイライトシーンに登場し、一気にブレイク。

 カリーを中心に躍進したウォリアーズは、07年以来初となるプレーオフへ出場。13年以降、ウォリアーズは7年連続でプレーオフの舞台に立ち、15年からはNBA史上2番目の最長記録となる5年連続のファイナル進出。うち3度も優勝を勝ち取り、カリーは2度のシーズンMVPに輝くなど、人気と実力を兼備したスーパースターとして君臨している。

5年連続でファイナルに出場しているウォリアーズで、リーダーを務めるカリー[写真]=Getty Images

富永へ「ライバルがたくさんいる環境で、チャレンジを課していくこと」と助言

 三谷から「NBAのトッププレーヤーであり続けるために、どんなことをやっていますか?」と聞かれると、「いろいろあるんだけど、まずはすべての経験に感謝すること」とカリー。今年はトロント・ラプターズとのNBAファイナルを2勝4敗で終え、史上4チーム目となる3連覇は達成できなかったものの、「5年連続でファイナルに出場して、3連覇を狙うことができること自体がすばらしいことだと思っています。そういったことに対する感謝の気持ちを忘れないことです」と言及。

 トップレベルのパフォーマンスを維持していることについては「トップになることよりも、トップであり続けることの方がすごく難しいです。よりスマートに、自分自身をより進化させていくことが欠かせません。そのためには身体を作る、睡眠をとる、すばらしい食生活を続けるといったように、あらゆることをしていかなければなりません。いろんなところに細心の注意を払っていくようにやっています」とその秘訣を明かした。

カリーは2人のプレーを見て「すごく感銘を受けた」と称賛[写真]=兼子愼一郎

 日本からアメリカへ挑戦することが決まった富永から「レベルの高いチームの中で、ライバルたちへ追いつくためにどんなことをしていましたか?」という質問をされると「うまくなるために、すごいライバルがたくさんいるというのはすばらしい環境で、その中で自分にこう、どんどんチャレンジを課していくこと。その環境をどんどん活かしていくといいと思います」とポジティブな言葉をかけ、自身の経験を交えてこう続けた。

「その中で、自分を信じるという気持ちを失わないこと。あと自分がコントロールできることには、とにかく自分でコントロールしていく。それは自分のバスケに対する姿勢であったり、努力すること、とにかくうまくなるということにフォーカスしてほしい。アメリカだと特に、バスケっていうといろんな人がいろんなことを言うし、ケガだとか、いろんな障害が目の前に立ちはだかると思うんだけど、それに邪魔されずに、とにかく自分がうまくなるということにフォーカスしてほしい」と助言。

 好きなNBA選手にカリーを挙げる富永の質問に対して真摯に受け取り、親身になってアドバイスを送ったカリー。「ワクワクしてる? きっと楽しいと思うよ」と優しい笑顔で語りかけていたことも印象的だった。

「重要な場面でもその瞬間を恐れないことが大事」と三谷へ言及

 また、夏にインターハイを控える三谷から「接戦の場面で、どんな気持ちで臨んでいますか?」という質問をされると、カリーは「重要な瞬間であればあるほど緊張すると思います。でも、その瞬間を恐れないということが大事だと思っています。その結果、(ショットが)入ることもありますし、もちろん入らない時もあります。でもその中で、入らなくても『やれることはやってきた、絶対に結果はついてくる』ということを心の中で失わず、怖がらないことです」と伝えると、「負けるのは悔しいですし、失敗してしまったら『お前のせいだ!』って言われたりもします。でも僕はそういう緊張感のある瞬間が大好きです。楽しめることも含めて、できることをすべてやっている、という瞬間が積み重なっていることかなと思ってます」と自身について語っていた。

カリー(中央)との対談という貴重な体験をした富永(左)と三谷(右)[写真]=兼子愼一郎

 なお、来年の東京オリンピックについて、カリーは「(日本へ)来たいですね。これは僕の目標の1つだと思っています。これまで3回来た大好きな東京ですので、自分ができることをできるかぎりやって、ここに来ることができるようにしたいと思っています」と明言。

 カリーはこれまで、「FIBA世界選手権(現ワールドカップ)」には2度出場し、いずれも金メダルを手にしているのだが、実はオリンピックの出場経験は皆無。ぜひとも来年、アメリカ代表のユニフォームを身にまとって出場してほしいと多くのバスケットボールファンが期待しているはず。

 この日行われた対談は、決して長い時間ではなかったものの、カリーは富永と三谷へ面と向かって熱を込めた言葉を語りかけていた。NBAのスーパースターが語った貴重なメッセ―ジの数々は、バスケットボール界の将来を背負うことが期待されている富永と三谷へしっかりと届いたに違いない。

文=秋山裕之