2019.10.11

2試合で4万人以上を動員! 通算7度目のジャパンゲームズは大熱狂の中で幕を下ろす

ロケッツとラプターズによるジャパンゲームズ2試合は、すばらしいゲームの連続だった[写真]=伊藤 大允
NBA好きが高じて飲食業界から出版業界へ転職。その後バスケットボール雑誌の編集を経てフリーランスに。現在はNBAやBリーグのライターとして活動中。

ガソルやチャンドラーなどベテラン勢の初出場で会場が沸く中、好ゲームを展開

 10月10日。さいたまスーパーアリーナで、ヒューストン・ロケッツとトロント・ラプターズによる「NBA Japan Games 2019 Presented by Rakuten」(以降、ジャパンゲームズ)第2戦が行われた。

 会場では平日にもかかわらず、8日の初戦と同様に昼過ぎから物販やフードの出店が賑わいを見せ、この日も2万人以上が詰めかけた。約16年ぶりの開催になったとはいえ、NBAという世界最高峰のプロバスケットボールリーグの魅力は健在。

ハーデン(左)とウェストブルック(右)という、直近3シーズンのMVP受賞者が2人も来日した[写真]=伊藤 大允

 第2戦は、ジェームズ・ハーデンラッセル・ウェストブルックという世界的なスーパースターが繰り出すプレーの数々に観客が酔いしれる中、クリント・カペラが豪快なアリウープダンクをたたき込み、ウェストブルックやエリック・ゴードンの長距離砲も飛び出し、ロケッツがラプターズから2ケタリード。

 たまらずタイムアウトをとったラプターズは、ディフェンスのチェックを厳しくしてロケッツに襲い掛かる。この日の主役はキャリア5年目のノーマン・パウエル。高確率で3ポイントを沈めるなど得点面でラプターズをけん引。

 また、第2戦では第1戦を欠場したマルク・ガソル(ラプターズ)、タイソン・チャンドラー、ジェラルド・グリーン(共にロケッツ)が試合途中からコートに立ち、長年NBAを愛するファンを中心に大きな拍手で迎えられた。

 この日は第1クォーター終了時点でロケッツリードの44-40という超ハイスコアとなった初戦と比較すると“控えめ”だったものの、30-23でロケッツがリードを奪う。

ガソル(左手前)とチャンドラー(左奥)という両ベテランも日本のコートに足を踏み入れた[写真]=伊藤 大允

第4Q序盤にも主力が出場する異例の雰囲気の中、ロケッツが第2戦を制す

 第2クォーターではゴードンの3ポイントが連発で決まるなど、ロケッツが引き離しにかかるも、ラプターズもパウエルやフレッド・バンブリート、サージ・イバカ、そしてエースのパスカル・シアカムらが加点。前半終了時点で63-55とラプターズが逆転に成功して試合を折り返す。

 後半に入ると、ロケッツはPJ・タッカーとゴードンの長距離砲で2点差まで追い上げるも、ラプターズはパウエル、イバカ、シアカムのショットでリードを許さない試合運びを見せる。

 第1戦でゲームハイの34得点を奪ったハーデンだが、この日はアウトサイドから放つショットがことごとくリムに嫌われ、ロケッツはなかなか波に乗れない。

プレシーズンゲームながら、試合中はルーズボールを争う激しいシーンも[写真]=伊藤 大允

 それでも、第3クォーター残り約4分半にダヌエル・ハウスJr.がドライブでディフェンダーを振り切ってリムへと舞い上がり、豪快なボースハンドダンクを決めると、徐々にだがロケッツも息を吹き返し、最後はウェストブルックの超絶ドライブで90-90に追いつき、第3クォーターを終える。

 通常、プレシーズンゲーム期間は勝利という目的もあるのだが、トレーニングキャンプに参加している選手たちや出番に飢えている若手選手を多くの時間帯で起用し、レギュラーシーズンに向けてコーチングスタッフが選手たちのプレーや相性を見極めるものなのだが、この日は同点だったこと、ジャパンゲームズ最後ということもあり、ウェストブルックやタッカー、ゴードンなどスターターが第4クォーター開始後もコートに立った。

 最後まで主力選手たちがコートに立っていたわけではないものの、ウェストブルックが持つ超人的な身体能力から繰り出されるプレーの数々は、会場全体を熱気に包み込んでいたことは間違いない。

 さらに、グリーンが右腕1本でプットバックダンクをたたき込むシーンもあり、プレシーズンとは思えない豪華なメンバーが競演。そしてゲームは残り26.3秒、ベン・マクレモアが右45度付近から3ポイントを突き刺してロケッツに4点リードをもたらし、最終スコア118-111で勝利。ロケッツとラプターズによるジャパンゲームズは、1勝1敗で幕を下ろした。

第4クォーターはベンチにいたものの、ハーデン(右)やタッカー(左)も笑顔で楽しんでいた[写真]=伊藤 大允

両チームのマスコットも会場を大いに盛り上げ、最高の空間を演出

 会場にはレジェンドのディケンベ・ムトンボ(元アトランタ・ホークスほか)、クリス・ボッシュ(元ラプターズほか)が紹介されたほか、プロテニスプレーヤーの錦織圭と大坂なおみ、ジャパンゲームズを約16年ぶりに日本へ持ち込んだ最大の殊勲者である三木谷浩史氏(楽天株式会社の代表取締役会長兼社長)など著名人もコートサイドで極上のエンターテインメントを楽しんでいた。

 第2戦は、勝利したロケッツではウェストブルックが22得点3リバウンド4アシスト3スティール、ハーデンが22得点9アシスト3スティール、ゴードンが14得点、カペラが10得点7リバウンド2ブロック。

 ラプターズでは7投中5本の3ポイントを沈めたパウエルが22得点、シアカムが16得点7リバウンド、イバカが12得点8リバウンド、バンブリートが10得点10アシストという活躍を見せた。

 選手たちの活躍が会場にいた2万人以上のファンを虜にしたことに加えて、この日は両チームのマスコットが大きな働きを見せていたことも見逃せない。

 第3クォーター途中にラプターズの選手がフリースローを放つ場面で、クラッチ(ロケッツ)が腰やお尻を左右に動かしてラプターズの選手を妨害していると、するするとラプター(ラプターズ)が近づき、意表を突くタイミングでクラッチの目の前に立ちはだかり、会場に集まったファンの視線を集めると共に笑いをもたらした。

 手拍子や足をコートに下ろして音を立てることこそできるものの、マスコットは着ぐるみなので表情を変えることはできず、もちろん言葉を発することもできない。

 そんな状況の中でも、マスコットはオーバーリアクションでアピールし、思わず笑ってしまうシーンを何度も作り出していた。

ジャパンゲームズ期間中、何度も観客を楽しませたクラッチ(左)とラプター(右)[写真]=Getty Images

 ちなみに、その後クラッチは距離をあけて、今度はラプター相手に挑発開始。すると見かねたラプターは、バスケットリング近くに置いてあったコーン(工事現場で良く見かける赤い円すい状のもの)を持ち出して脅しにかかると、クラッチはたまらず「あっそれはやめて。ごめんなさい…」と言っているかのようなジェスチャーでさらなる笑いを誘っていた。

 そういったささいなことでも笑いをとるマスコットも、最高のエンターテインメント性を持っていたと言っていいはず。

 なお、NBAは23日(現地時間22日)にレギュラーシーズン開幕を迎え、半年以上にも及ぶ長丁場の戦いがスタートする。来年夏には東京オリンピックが開催されるため、今回のジャパンゲームズで来日した選手たちがそれぞれの国の代表として、再びさいたまスーパーアリーナへやって来るかもしれない。

 そして来年以降、楽天がNBAとパートナーシップ契約を結んでいる限り、ジャパンゲームズが定期的に開催される可能性は十分ある。今回行われたロケッツとラプターズによる通算7度目のジャパンゲームズは、会場に集まったファンだけでなく、温かい声援の中でプレーした選手たちにとっても十分魅力的な体験となったのではないだろうか。

文=秋山裕之

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