2020.03.28

低迷から脱却すべく、現行体制にメスを入れたニックス/2019-20NBA通信簿チーム編③

新人バレット(左)と暫定HCのミラー(右)[写真]=Getty Images
NBA好きが高じて飲食業界から出版業界へ転職。その後バスケットボール雑誌の編集を経てフリーランスに。現在はNBAやBリーグのライターとして活動中。

新型コロナウイルスの感染拡大を防止すべく、世界最高峰のエンターテインメント、NBAは3月13日(現地時間12日、日付は以下同)より2019-20レギュラーシーズンを中断することを余儀なくされた。シーズン再開は早くても6月中旬から下旬にかけてと現地メディアが報じている中、65試合前後を消化した各チームならびにその主要選手たちを振り返っていきたい。
※データは日本時間3月12日終了時点、%=パーセント、評価は上から順にS、A、B、C、D、Eの6段階

2019-20シーズンNBA通信簿チーム編③ニューヨーク・ニックス

イースタン・カンファレンス(アトランティック・ディビジョン)
総合評価:D

■ここまでの戦績
今季戦績:21勝45敗(勝率31.8%/イースト12位)
ホーム戦績:11勝22敗(勝率33.3%)
アウェー戦績:10勝23敗(勝率30.3%)

■主要チームスタッツ(カッコ内はリーグ順位)
平均得点:105.8(29位)
平均失点:112.3(19位)
平均リバウンド:46.5本(7位)
平均アシスト:22.1本(27位)
平均スティール:7.6本(17位)
平均ブロック:4.7本(18位)
オフェンシブ・レーティング:105.9(27位)
ディフェンシブ・レーティング:112.4(23位)

ブロックやリバウンドに高確率なショットで貢献するロビンソン[写真]=Getty Images

■主要スタッツリーダー
平均出場時間:ジュリアス・ランドル(32.5分)
平均得点:ジュリアス・ランドル(19.5得点)
平均リバウンド:ジュリアス・ランドル(9.7本)
平均アシスト:エルフリッド・ペイトン(7.2本)
平均スティール:エルフリッド・ペイトン(1.6本)
平均ブロック:ミッチェル・ロビンソン(2.0本)

■主な開幕後の選手またはコーチの動き
加入:モーリス・ハークレス
退団:マーカス・モリスSr.
ヘッドコーチ(HC):デイビッド・フィズデール→マイク・ミラー(暫定)
エグゼクティブ:スティーブ・ミルズ→スコット・ペリー→レオン・ローズ

新球団社長へ就任したローズ(中央)[写真]=Getty Images

指揮官解任に球団社長の交代と、現行体制にメスを入れる

 昨夏のフリーエージェント(FA)戦線。ケビン・デュラントカイリー・アービングをブルックリン・ネッツに奪われたことで、ニックスはジュリアス・ランドルマーカス・モリスSr.、ボビー・ポーティスタージ・ギブソンといったフォワード陣とエルフリッド・ペイトンやウェイン・エリントンをFAで獲得。昨年のドラフト全体3位指名のRJ・バレットもロースターに加え、リーグワースト(17勝65敗)に終わった昨季よりも戦える布陣を整えることに成功。

 だが新戦力のフォワード陣にバレット、ペイトンはアウトサイドシュートを得意としておらず、ペイントエリアを主戦場にする選手たちばかりでバランスが取れなかった。チームは開幕から連敗しては1勝、そこからまた連敗という悪循環に陥り、11月下旬から悪夢の10連敗とかみ合わず。

平均ダブルダブル級の成績を残すランドルが、ニックスのけん引役[写真]=Getty Images

 8連敗となった時点でデイビッド・フィズデールHCを解雇し、マイク・ミラーAC(アシスタントコーチ)を暫定HCに据える決断を下したこともあり、ニックスは年末年始に3連勝、2月に入って4連勝を飾るも再び黒星先行に。

 そこでニックスは、2月上旬にスティーブ・ミルズを解雇し、新たな球団社長として3月3日に元代理人のレオン・ローズを招へい。過去にレブロン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ)やクリス・ポール(オクラホマシティ・サンダー)といった超大物をクライアントに持っていたローズは「容易かつすぐさま変えることができることは何もない。ファンの皆さんには、引き続き辛抱することを求めることになる」と口にし、低迷脱却までの道のりは長いと話した。

 3月に限って見れば、ランドルとバレットを中心に3勝3敗の勝率5割を残しているものの、シーズン全体で見ると3ポイントの部門が軒並みリーグワーストクラス。ペイントエリアを中心にフリースローを獲得しても、成功率がリーグワースト(69.4パーセント)と、2013年を最後に遠ざかっているプレーオフへたどり着くには時間がかかりそうだ。

ランドルとバレット中心も、今後の方向性次第ではロースター再構築もあり

 モリスSr.とランドル、バレットを軸にしてきたものの、チームとしてまとまることができず、2月のトレードデッドラインでチームトップの3ポイント成功数(平均2.7本)を記録していたモリスSr.を放出し、ハークレスを獲得。

 3月はランドルとバレット、献身的な働きを見せるハークレスにペイトン、ギブソンをスターターとし、ポーティスやミッチェル・ロビンソンフランク・ニリキナケビン・ノックス、エリントンを主要ローテーションにしてまずまずの戦績を残すことができている。

 ただ、昨夏獲得した新加入選手たちを中心とした急造チームという印象は拭えず。昨季から在籍していたノックスやデニス・スミスJr.、アロンゾ・トリアーといった選手たちは精彩を欠いており、今後のチーム構想を練るうえで、ロースターの入れ替えは必須になってくるだろう。

バレットにはアウトサイドシュートを磨いてほしいところだ[写真]=Getty Images

 その点、ニックスは希望が持てるかもしれない。というのも、ランドルを除くロースター全員が来季終了後に制限なしFA、または制限付きFA、あるいはチームオプションとなっており、大物FA選手を獲得可能なキャップスペースもあるため、一からチームを作り直すことができるチャンスがあるからだ。

 シーズン再開となれば今季、そして来季の間に今後チームに残すべき選手たちを見極めて、プレーオフへ返り咲くことができるチームへと移行していきたい、というのがローズの考えるシナリオと言っていいだろう。

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