2020.04.01

選手との溝が埋まらず指揮官交代、リーグ下位に沈むキャブズ/2019-20NBA通信簿チーム編⑦

2年目の今季、トップスコアラーへと成長したセクストン(左)と就任1年目の途中に辞任となったビーラインHC(右)[写真]=Getty Images
NBA好きが高じて飲食業界から出版業界へ転職。その後バスケットボール雑誌の編集を経てフリーランスに。現在はNBAやBリーグのライターとして活動中。

新型コロナウイルスの感染拡大を防止すべく、世界最高峰のエンターテインメント、NBAは3月13日(現地時間12日、日付は以下同)より2019-20レギュラーシーズンを中断することを余儀なくされた。シーズン再開は早くても6月中旬から下旬にかけてと現地メディアが報じている中、65試合前後を消化した各チームならびにその主要選手たちを振り返っていきたい。
※データは日本時間3月12日終了時点、%=パーセント、評価は上から順にS、A、B、C、D、Eの6段階

2019-20シーズンNBA通信簿チーム編⑦クリーブランド・キャバリアーズ

イースタン・カンファレンス(セントラル・ディビジョン)
総合評価:D

■ここまでの戦績
今季戦績:19勝46敗(勝率29.2%/イースト15位)
ホーム戦績:11勝25敗(勝率30.6%)
アウェー戦績:8勝21敗(勝率27.6%)

■主要チームスタッツ(カッコ内はリーグ順位)
平均得点:106.9(25位)
平均失点:114.8(23位)
平均リバウンド:44.2本(20位)
平均アシスト:23.1本(24位)
平均スティール:6.9本(25位)
平均ブロック:3.2本(30位)
オフェンシブ・レーティング:106.9(26位)
ディフェンシブ・レーティング:114.8(29位)

司令塔という大役を務めるガーランド[写真]=Getty Images

■主要スタッツリーダー
平均出場時間:コリン・セクストン(33.0分)
平均得点:コリン・セクストン(20.8得点)
平均リバウンド:トリスタン・トンプソン(10.1本)
平均アシスト:ダリアス・ガーランド(3.9本)
平均スティール:コリン・セクストンほか1人(1.0本)
平均ブロック:トリスタン・トンプソン(0.9本)

■主な開幕後の選手またはコーチの動き
加入:ダンテ・エクサム、アンドレ・ドラモンド(いずれもトレード)
退団:ジョーダン・クラークソン、ジョン・ヘンソン、ブランドン・ナイト(いずれもトレード)
ヘッドコーチ(HC):ジョン・ビーライン→JB・ビッカースタッフ

球宴後に指揮官となったビッカースタッフ(中央)と、シーズンを追うごとに台頭しているポーターJr.(左)[写真]=Getty Images

大物食いを見せるも、若手とベテランの温度差もあり、イースト最下位に

 昨季までミシガン大学のHCを務めてきたジョン・ビーラインを新たな指揮官に迎えた今季。コリン・セクストンダリアス・ガーランドという若手にジェディ・オスマン、そしてインサイドにはケビン・ラブトリスタン・トンプソンという2016年の優勝メンバーでスターターを形成して迎え、9試合を終えて4勝5敗と、予想外の健闘を見せた。

 だがその後の15試合で14敗を喫して急降下。4試合連続で100得点未満に終わるなどオフェンスがなかなかかみ合わず、ボールを回さないセクストンに対してベテランのラブがフラストレーションをあらわにするなど、若手とベテランの間に温度差があることを象徴する一面も。

 ここまでのシーズン全体で見ると、イースト最下位ながらセクストンや新人ケビン・ポーターJr.らの活躍もあり、ウェスト上位のデンバー・ナゲッツ相手に2戦無敗、ホームでイースト上位のマイアミ・ヒート、フィラデルフィア・セブンティシクサーズを撃破するサプライズがあった。

 だがチームとしてはまだまだ未熟であり、シーズン序盤からラブやトンプソンに関するトレードのウワサが駆け回り、ビーラインHCと選手間に溝があると報じられるなどコート内外で集中力を削がれることが多かったことも否定できない。

 2月のトレードデッドラインではラブとトンプソンのトレードは成立しなかったが、主力を放出せずに元オールスタービッグマンのアンドレ・ドラモンドの獲得に成功。その一方で、選手たちとの溝が深まり、元の関係への修復が困難になったことでオールスターブレイク中にビーラインHCが辞任し、球団内の別の組織へと移動。JB・ビッカースタッフがHCへと昇格し、5勝6敗を記録する中でシーズン中断を迎えた。

2月に加入後、ドラモンドは攻防両面で奮闘している[写真]=Getty Images

選手個々の成績が上がってきた中で中断後、ラブが率先して行動を起こす

 チームがなかなか勝てない状況の中、2年目のセクストンは平均20得点の大台を突破。185センチ86キロのスコアリングガードで、フィールドゴール成功率47.2パーセント、3ポイント成功率38.0パーセントと成功率も上々。オールスター期間中のライジングスターズチャレンジでも21得点と実力をアピール。

 チームトップの平均アシスト数は新人ガーランドの3.9本というのは厳しいものの、中堅のマシュー・デラベドーバ、ダンテ・エクサムがカバーする形となっており、貴重な経験を積んでいると言っていいだろう。

 ラブ、トンプソンも決して不調ではなく、トンプソンの平均得点とリバウンドはキャリアハイと同等で、ペイントエリアで強烈な存在感を発揮。途中加入のドラモンドについても、持ち前のハードワークは健在で、出場試合数がまだ少ない中で平均リバウンド、スティール、ブロックでトップの数字をたたき出している。

 延長の末に勝利した3月9日のサンアントニオ・スパーズ戦では、セクストンが26得点を挙げたほか、ドラモンド(28得点17リバウンド)、ラリー・ナンスJr.(19得点10リバウンド)、ラブ(14得点18リバウンド)、デラベドーバ(14得点11アシスト)と、4選手がダブルダブルを記録する快挙を達成。キャブズとしては1990年以来の珍事となった。

 また、新型コロナウイルスの影響により、3月13日からシーズン中断になっている中、ラブの積極性が際立っている。中断中、無報酬になってしまうアリーナのスタッフへ、自身のSNSで10万ドル(約1,070万円)を寄付することを発表してNBA選手たちの先陣を切ると、19日には『Today Show』へ出演し、このようなメッセージを発信。

「今こそ僕らNBA選手がコミュニティのリーダーになる時。皆はそれぞれ給料をもらって生活が成り立っている。今こそNBA選手自らが行動を起こしてアスリート以上の存在になる時なんだ。自分たちのコミュニティで働く人たちや、少なくとも年間41試合のホームゲームで働いてくれている人たちがいる。今回の寄付は、彼らがストレスや大きな不安を感じている期間をうまく切り抜けてもらうためにやったことの1つにすぎない」。

 新型コロナウイルスの感染者(31日時点)は全世界で75万人を超えており、3万6,000人以上が命を落としている。アメリカは世界最多となる16万人以上が感染し、3,000人を超える死者が出ているため、シーズンを再開できるかは不透明と言わざるをえない。

 それでも、ラブがここ2週間で見せている行動の数々は、アスリート以上の価値があると言っていいのではないだろうか。

シーズン中断後、積極的なアクションを起こしているラブ[写真]=Getty Images

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