新型コロナウイルスの感染拡大を防止すべく、世界最高峰のエンターテインメント、NBAは3月13日(現地時間12日、日付は以下同)より2019-20レギュラーシーズンを中断することを余儀なくされた。シーズン再開は早くても6月中旬から下旬にかけてと現地メディアが報じている中、65試合前後を消化した各チームならびにその主要選手たちを振り返っていきたい。
※データは日本時間3月12日終了時点、%=パーセント、評価は上から順にS、A、B、C、D、Eの6段階
2019-20シーズンNBA通信簿チーム編⑬マイアミ・ヒート
イースタン・カンファレンス(サウスイースト・ディビジョン)
総合評価:A
■ここまでの戦績
今季戦績:41勝24敗(勝率63.1%/イースト4位)
ホーム戦績:27勝5敗(勝率84.4%)
アウェー戦績:14勝19敗(勝率42.4%)
■主要チームスタッツ(カッコ内はリーグ順位)
平均得点:112.2(15位)
平均失点:108.9(11位)
平均リバウンド:44.5本(16位)
平均アシスト:26.0本(5位)
平均スティール:7.4本(19位)
平均ブロック:4.5本(22位)
オフェンシブ・レーティング:112.2(7位)
ディフェンシブ・レーティング:109.2(14位)
■主要スタッツリーダー
平均出場時間:バム・アデバヨ(34.4分)
平均得点:ジミー・バトラー(20.2得点)
平均リバウンド:バム・アデバヨ(10.5本)
平均アシスト:ジミー・バトラー(6.1本)
平均スティール:ジミー・バトラー(1.7本)
平均ブロック:バム・アデバヨ(1.3本)
■主な開幕後の選手またはコーチの動き
加入:アンドレ・イグダーラ、ジェイ・クラウダー、ソロモン・ヒル
退団:ジェームズ・ジョンソン、ジャスティス・ウィンズロウ、ディオン・ウェイターズ
抜群のケミストリーを構築、3Pシューターを複数配置したことが奏功
長年チームを支えていたドウェイン・ウェイド(元ヒートほか)が昨季終了後に現役引退。するとヒートは昨夏のトレードでリーダー格のジミー・バトラーを獲得。攻防両面に秀でたバトラーの周囲に、ドラフト外のケンドリック・ナン、2年目のダンカン・ロビンソン、成長著しいバム・アデバヨと、センターに“ストレッチ5”のマイヤーズ・レナードでスターターを形成。
開幕14試合で11勝3敗というスタートダッシュを切ると、今年1月中旬までの37試合で、ヒートは一度も連敗することなく白星先行で勝ち続けた。セカンドユニットには元オールスターのゴラン・ドラギッチやシュート力のあるケリー・オリニク、驚異的な身体能力を誇るデリック・ジョーンズJr.に強心臓ルーキーのタイラー・ヒーローなど厚い選手層を擁し、エリック・スポールストラHC(ヘッドコーチ)の下でイースト上位をキープ。
「俺は今、本当にプレーを楽しんでいるんだ。コーチやこの組織、選手たちが俺についてきてくれているからね。俺が(ここに来て)いつも笑っていられるのは、今ハッピーだからなのさ。『ホームにやって来た』って感じかな。この組織における全て、ロースター全員がフィットしている」。
12月中旬に『USA Today』へ語ったバトラーの言葉が、今季のヒート好調を表していると言っていいだろう。バトラー自身はアグレッシブにペイント内を攻め立て、リバウンドやアシスト、ディフェンス面でも勝利に大きく貢献。
昨夏のFIBAワールドカップを前に行われたアメリカ代表のトレーニングキャンプに追加招集されるも、ロースター入りを逃したアデバヨはチーム第2の男へと飛躍し、オールスターに初選出されるなど急成長。シーズン中断となった3月中旬に「メンバーに選ばれなかったことで、今まで以上に『やってやる』という気持ちになったんだ。自分は出場するのにふさわしいと感じていたからね。その後カレンダーをチェックして、シーズンが始まったら旋風を巻き起こしてやるって思っていた」と『The Athletic』へ話していた。
ヒートと言うと、激しいディフェンスのイメージがあるのだが、今季はオフェンス面の向上が印象的だ。昨季はオフェンシブ・レーティングが106.7でリーグ26位、ディフェンシブ・レーティングは107.1で7位だったのだが、今季はそれぞれ7位、14位と攻防におけるバランスが上昇。
その大きな要因として挙げられるのが3ポイントシュートだろう。昨季は成功数(平均11.3本)でリーグ16位、成功率34.9パーセントでリーグ21位と中位だったが、今季は平均13.4本の成功でリーグ6位、成功率38.3パーセントはリーグベストと飛躍的に向上していることは見逃せない。
プレーオフ経験豊富なベテラン陣を加え、イーストのダークホースに浮上
今季のチームにはロビンソン、オリニク、レナード、途中加入のクラウダー、ヒーローと、3ポイント成功率39パーセント以上を誇る選手が5人もおり、ロビンソン、クラウダー、シックスマンへ転向したドラギッチ、ヒーロー、ナンの5人が平均2.0本以上も決めている。
特に2年目のロビンソンは一躍リーグトップレベルの3ポイントシューターへと飛躍。昨季わずか10本のみの成功に終わった男は、今季ここまで243本も沈めており、成功率44.8パーセントという高精度。レギュラーシーズンを17試合残した時点ながら、1シーズンにおけるフランチャイズ史上最多の243本に達しており、ドラフト外の選手として史上最多の成功数をマーク。
「今シーズンのトレーニングキャンプの時点で、NBA選手たちに『ダンカン・ロビンソンは誰だ?』という質問をしたら、おそらく70パーセントの選手たちは知らなかっただろう」と指揮官が『NBA.com』へ明かしたように、ロビンソンはこの1年でシャープシューターとして開眼し、ヒートの勝利に不可欠な選手へと成長したのである。
また、オールスターのサタデーナイトではアデバヨがスキルズチャレンジ、ジョーンズJr.がアーロン・ゴードン(オーランド・マジック)との激闘の末に制し、ヒートの2選手がチャンピオンとなったことも良い兆候と言っていいだろう。
2月のトレードデッドラインで百戦錬磨のアンドレ・イグダーラ、3ポイントとディフェンスで活躍するクラウダー、タフなディフェンスに定評があるソロモン・ヒルをロースターに加えたことで、プレーオフの経験値を増し、より屈強なロースターを構築したヒートだが、NBAファイナル進出候補に加えるのはまだ早いというのが現状だ。
オールスター期間中に地元メディア『South Florida Sun Sentinel』へ掲載された記事の中で、バトラーが「俺たちは悪いチームじゃない。だが自分たちが望む位置にはいない。まだね。でもいいさ。俺たちは向上し続けて前に進んでいく。これからも試合に勝つための方法を模索していくだけ。特にアウェーではね」と話していたように、アウェーでも着実に勝利することが課題。
とはいえ、イーストトップ2のミルウォーキー・バックス、トロント・ラプターズにはここまで負けなしの4連勝と、チームとしての底力はイースト有数のものを持っている。もしシーズンが再開されれば、プレーオフでダークホースになること間違いなしの好チームである。