2020.04.21

的確な補強で攻撃力が増すも、球宴後に守備が崩壊したジャズ/2019-20NBA通信簿チーム編⑳

今季そろってオールスター初選出となったゴベア(右)とミッチェル(左)[写真]=Getty Images
NBA好きが高じて飲食業界から出版業界へ転職。その後バスケットボール雑誌の編集を経てフリーランスに。現在はNBAやBリーグのライターとして活動中。

新型コロナウイルスの感染拡大を防止すべく、世界最高峰のエンターテインメント、NBAは3月13日(現地時間12日、日付は以下同)より2019-20レギュラーシーズンを中断することを余儀なくされた。シーズン再開は早くても6月中旬から下旬にかけてと現地メディアが報じている中、65試合前後を消化した各チームならびにその主要選手たちを振り返っていきたい。
※データは日本時間3月12日終了時点、%=パーセント、評価は上から順にS、A、B、C、D、Eの6段階

2019-20シーズンNBA通信簿チーム編⑳ユタ・ジャズ

ウェスタン・カンファレンス(ノースウェスト・ディビジョン)
総合評価:A

■ここまでの戦績
今季戦績:41勝23敗(勝率64.1%/ウェスト4位)
ホーム戦績:21勝10敗(勝率67.7%)
アウェー戦績:20勝13敗(勝率60.6%)

■主要チームスタッツ(カッコ内はリーグ順位)
平均得点:111.0(17位)
平均失点:107.9(9位)
平均リバウンド:45.1本(13位)
平均アシスト:22.2本(26位)
平均スティール:5.9本(30位)
平均ブロック:4.0本(29位)
オフェンシブ・レーティング:112.1(8位)
ディフェンシブ・レーティング:108.8(11位)

ミッチェルに次ぐ2番手のスコアラーとなったボグダノビッチは、クラッチショットでも脚光を浴びた[写真]=Getty Images

■主要スタッツリーダー
平均出場時間:ルディ・ゴベア(34.5分)
平均得点:ドノバン・ミッチェル(24.2得点)
平均リバウンド:ルディ・ゴベア(13.7本)
平均アシスト:ジョー・イングルズ(5.2本)
平均スティール:ドノバン・ミッチェル(1.0本)
平均ブロック:ルディ・ゴベア(2.0本)

■主な開幕後の選手またはコーチの動き
加入:ジョーダン・クラークソン、レイジョン・タッカー
退団:ダンテ・エクサム、ジェフ・グリーン

クラークソン加入で白星量産も、守備崩壊で球宴後に成績ダウン

 開幕から順調に白星を積み重ねていたものの、新加入選手たちの出来は両極端だった。ボーヤン・ボグダノビッチドノバン・ミッチェルに次ぐスコアラーとして定着してきた半面、昨季までのキャリア12シーズン全てをメンフィス・グリズリーズでプレーしてきた司令塔マイク・コンリーはシューティングスランプに陥り、12月上旬からハムストリングを痛めて戦線離脱後、復帰してからはベンチスタートに変更。

 今季シックスマンとして迎えたジョー・イングルズをスターターへスライドさせると、ジャズはさらに調子を上げていく。12月下旬にインスタントスコアラーのジョーダン・クラークソンをトレードで獲得すると、圧巻の10連勝。クラークソンがベンチから安定して2ケタ得点を記録するパフォーマンスもあり、チームは15戦で14勝を挙げる。

 その後5連敗と調子を落とすも、ヒューストン・ロケッツやマイアミ・ヒートといった強豪から奪った勝利を含む4連勝でオールスターブレイクに突入。ウェスト4位の36勝18敗というリーグ上位の成績を残したことで、攻防の要であるミッチェルとルディ・ゴベアをオールスターに送り込んだ。

 だがオールスター後に4連敗を喫して5連勝、シーズン中断前にトロント・ラプターズに敗れて5勝5敗と調子を落としてしまった。勝利した相手はボストン・セルティックスを除くといずれも勝率5割未満のチームで、上位チーム相手に勝利を収めることができなかった。

 その大きな要因として挙がるのはディフェンスだ。オールスター前はディフェンシブ・レーティングでリーグ8位(107.6)だったものの、オールスター後はリーグ23位(115.2)と大幅にダウン。もし今後シーズンが再開されるのであれば、ディフェンス力の改善がマストとなる。

ディフェンス改善にはチームとしての結束力が不可欠だ[写真]=Getty Images

新型コロナ感染によるミッチェルとゴベアの関係修復が今後の成功のカギ?

 オールスターに初選出されたミッチェルはキャリアハイの平均得点を残し、ゴベアもフィールドゴール成功率(69.8パーセント)とリバウンドで自己最高を記録。昨夏の補強で戦力アップに成功したチームを両輪が引っ張ったことで、ここ10シーズンで最も高い勝率を残すことに成功。

 ボグダノビッチがオールスター後に平均16.3得点、フィールドゴール成功率40.2パーセントと数字を落としているものの、2月からスターターに復帰したコンリーが平均14.9得点と復調し、ショット全般における成功率も上がっており、オフェンシブ・レーティングについては安定している。

 クラークソンはチーム3番手の得点源となり、平均15.6得点に自己最高ペースとなるフィールドゴール成功率(48.2パーセント)をマーク。イングルズ、ロイス・オニールが先発と控えを行き来しながらチームを支え、エマニュエル・ムディエイやジョージ・ニアーンといったロールプレーヤーたちが脇を固めている。

オールスター後から復調傾向にあったコンリー[写真]=Getty Images

 だが心配なのは新型コロナウイルスの影響によるチームケミストリーだろう。アメリカで感染拡大前、新型コロナが話題になった際にゴベアが試合後の会見でメディアのマイクやレコーダーをわざと触っており、3月12日のオクラホマシティ・サンダー戦前に陽性が判明。

 その後ミッチェルも感染していることが明らかとなり、一時は両者が会話を持たない時期もあったという。あれから約1か月が経過した4月13日、ゴベアは地元メディア『The Salt Lake Tribune』へ「マイクを触った行為によって、僕に対する印象はすごく悪くなってしまった。世間は1つの行動や短い映像で、人物を判断することがある。決してそんなことはないのに、僕はあの行動によって他人の命や健康に配慮できない人間と思われてしまったんだ」と語っていた。

 現在はゴベア、ミッチェルともに回復し、陰性と診断されたことで、自宅でトレーニングを続けているのだが、ミッチェルとの関係についてゴベアは「しばらくの間、僕たちが話をしていなかったのは事実」と認めている。

 もっとも、ゴベアは「数日前に連絡をとったんだ。僕たちは優勝を目指すチームのために全力を尽くす準備はできている。プロフェッショナルとして振る舞うことが全て。皆それぞれが異なる関係で、たとえ結婚していようとも完璧なものではない。だから僕とチームメートとの関係も完璧ではない。でも最終的に僕たちは、勝利という同じ目標に向かっている。お互い大人の男だから、勝利のために一緒に戦うよ」と前向きに捉えていた。

 今季終了後、クラークソンとムディエイは制限なしフリーエージェント(FA)となり、コンリーは来季の契約がプレーヤーオプション、来季終了後にはミッチェルが制限付きFAで、ゴベアは制限なしFAとなる。

 昨夏契約したボグダノビッチ、今季途中に延長契約を結んだオニールを除くと、主力が軒並みそろってプレーできるのは来季までという中、ジャズがどこまで結束力を高めて覇権争いへ参戦できるのか。現有戦力で戦える時間は決して多くないだけに、今後の動向に注目していきたいところだ。

トレード候補に挙がるゴベアだが、守護神の放出はさすがにないだろう[写真]=Getty Images

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