2020.06.12

フォックスを軸に1月から好転し、“第二幕”へ臨むキングス/2019-20NBA通信簿チーム編25

チームのトップスコアラーへと成長したフォックス[写真]=Getty Images
NBA好きが高じて飲食業界から出版業界へ転職。その後バスケットボール雑誌の編集を経てフリーランスに。現在はNBAやBリーグのライターとして活動中。

新型コロナウイルスの感染拡大を防止すべく、世界最高峰のエンターテインメント、NBAは3月13日(現地時間12日、日付は以下同)より2019-20レギュラーシーズンを中断することを余儀なくされた。6月に入り、8月1日からフロリダ州オーランドで22チームが参戦し、シーズンを再開することが決まった中、65試合前後を消化した各チームならびにその主要選手たちを振り返っていきたい。
※データは日本時間3月12日終了時点、%=パーセント、評価は上から順にS、A、B、C、D、Eの6段階

2019-20シーズンNBA通信簿チーム編25 サクラメント・キングス

ウェスタン・カンファレンス(パシフィック・ディビジョン)
総合評価:C

■ここまでの戦績
今季戦績:28勝36敗(勝率43.8%/ウェスト11位)
ホーム戦績:14勝17敗(勝率45.2%)
アウェー戦績:14勝19敗(勝率42.4%)

■主要チームスタッツ(カッコ内はリーグ順位)
平均得点:109.0(23位)
平均失点:110.9(17位)
平均リバウンド:42.5本(27位)
平均アシスト:23.4本(22位)
平均スティール:7.6本(16位)
平均ブロック:4.2本(25位)
オフェンシブ・レーティング:109.0(19位)
ディフェンシブ・レーティング:110.8(18位)

クイックリリースから放たれる高精度なショットで得点を重ねたヒールド[写真]=Getty Images

■主要スタッツリーダー
平均出場時間:ハリソン・バーンズ(34.9分)
平均得点:ディアロン・フォックス(20.4得点)
平均リバウンド:リショーン・ホームズ(8.3本)
平均アシスト:ディアロン・フォックス(6.8本)
平均スティール:ディアロン・フォックス(1.4本)
平均ブロック:リショーン・ホームズ他1人(1.4本)

■主な開幕後の選手またはコーチの動き
加入:ケント・ベイズモア、ジャバリ・パーカー、アレックス・レン
退団:トレバー・アリーザ、ドウェイン・デッドモン

リーダー格のバーンズは、攻防両面で安定したプレーを見せた[写真]=Getty Images

ケガと新加入選手の不振で黒星先行も、1月下旬から復調して第二幕に参戦

 2006年を最後にプレーオフから遠ざかっているキングスは、ウェスト9位の39勝43敗に終わった昨季終了後、3シーズン指揮を執ったデイビッド・イェーガー前HC(ヘッドコーチ)を解雇し、ルーク・ウォルトンを新たな指揮官としてチームに招いた。

 ウォルトン新HCの就任会見で「我々はとても興奮している。このチームを一緒に構築して、次のレベルへと進むことができるでしょう」と期待を寄せたブラデ・ディバッツGM(ゼネラルマネージャー)の下、キングスは昨夏のフリーエージェント(FA)戦線でベテランのコリー・ジョセフとトレバー・アリーザ(現ポートランド・トレイルブレイザーズ)、ドウェイン・デッドモン(現アトランタ・ホークス)、リショーン・ホームズの獲得に成功。

 ところが、初戦でフェニックス・サンズに大敗を喫すると、そのまま開幕5連敗とスタートダッシュに失敗。その後の5試合で4勝を挙げて復調したかに見えたが、その間に司令塔のディアロン・フォックスが足首を痛めて戦線離脱となり、勝率5割には届かぬまま、時間が過ぎていった。

 その過程で、プレータイムに納得がいかないデッドモンがメディアを経由してトレード志願したり、勝敗を決める第4クォーターに出場時間を削られたバディ・ヒールドが「俺は自分がこのチームですごくいい選手の1人だと感じている。だからこそ、チームに勝利をもたらすべく、第4クォーターはコートにいるべきだと思ってる。俺はそのためにこのチームでプレーしているんじゃないのか?」と『The Athletic』へ漏らすなど、なかなかチームがまとまらなかった。

 昨年12月下旬に8連敗、今年1月には6連敗を喫したものの、1月25日のシカゴ・ブルズ戦で勝利を収めたことで事態は好転。ボグダン・ボグダノビッチをスターター、ヒールドをシックスマンへと転向させ、フォックス、ハリソン・バーンズネマニャ・ビエリツァと先発を組み、ハリー・ジャイルズがセンターに入ると、キングスは1月末から5試合で4勝を挙げるなど復調。

 オールスター後はウェスト4位の7勝3敗と調子を上げていき、ウェスト11位でシーズン中断を迎えた。8位のメンフィス・グリズリーズと3.5ゲーム差だったことで、8月1日からフロリダ州オーランドで行われる今季の“第二幕”への出場権も勝ち取り、14年ぶりのプレーオフ進出をかけた激しい戦いへ挑むこととなった。

ボグダノビッチ(右端)が1月下旬からスターターへ昇格し、キングスは白星先行へと好転した[写真]=Getty Images

伸びざかりの若手を豊富に抱えるキングスが屈辱的な下馬評を覆せるか?

 今季途中のトレードで、キングスはチームにフィットしなかったデッドモンやアリーザを放出し、スイングマンのケント・ベイズモアやビッグマンのアレックス・レン、フォワードのジャバリ・パーカーらを獲得。ローテーション入りしているのはベイズモアとレンくらいだが、このチームはオールスター選手こそ不在ながら豊富なタレントがそろっている。

 バックコートにはフォックス、ヒールド、ボグダノビッチにジョセフ、フロントコートにもバーンズ、ビエリツァ、ホームズ、マービン・バグリー3世、ジャイルズがおり、出場試合数に差があるとはいえ、計8選手が平均2ケタ得点をマーク。

 1月28日のミネソタ・ティンバーウルブズ戦では、第4クォーター残り2分49秒で17点ビハインドを背負いながら、フォックスやヒールド、ボグダノビッチらが加点し、延長の末に大逆転勝利をモノにしており、爆発力も備わっていると言っていいだろう。

 そして3年目のフォックスがオールスター後に平均23.4得点5.8アシストにフィールドゴール成功率50.3%と絶好調。リーグ随一のスピードを誇る22歳のポイントガードは、チームのトップスコアラーと化し、リーダーシップも発揮し始めている。

 とはいえ、ウェストのプレーオフ最終スポットである8位のグリズリーズを追うチームは5つもあり、キングスが再開後のレギュラーシーズン8試合で大きく勝ち越すことができたとしても、4.0ゲーム差以内でプレーイン・トーナメントまでこぎ着けることは厳しいというのが現状。

 先日『ESPN』がSNSへ掲載したウェスト8位予想でも、9位のポートランド・トレイルブレイザーズが35.3%、8位のグリズリーズが32.4%、10位のニューオーリンズ・ペリカンズが29.4%、12位のサンアントニオ・スパーズが2.9%と、キングスとサンズはリストアップさえされていなかった。

 これにはフォックスも「おいおい、俺たちの可能性は0%なのか(笑)。(チームの)名前すら入ってないじゃないか」と不満も交えてツイッターでリアクションせざるをえないだろう。

 キングスが今季、プレーオフへ滑り込む可能性は低い。だが伸び盛りの若手を中心とするロースターで戦うこのチームにとって、失うものなど何もない。屈辱的な下馬評をモチベーションへと変えて、リーグを驚かせてほしいところだ。

リーグ最高級のスピードを持つフォックス。キングスがサプライズを起こすためにはこの男の爆発が不可欠となる[写真]=Getty Images

2019-20NBA通信簿チーム編のバックナンバー

BASKETBALLKING VIDEO