2020.06.14

期待の外国籍デュオを軸にリーグ最高の攻撃力で魅せたマブス/2019-20NBA通信簿チーム編26

スロベニア出身のドンチッチ(左)とラトビア出身のポルジンギス(右)[写真]=Getty Images
NBA好きが高じて飲食業界から出版業界へ転職。その後バスケットボール雑誌の編集を経てフリーランスに。現在はNBAやBリーグのライターとして活動中。

新型コロナウイルスの感染拡大を防止すべく、世界最高峰のエンターテインメント、NBAは3月13日(現地時間12日、日付は以下同)より2019-20レギュラーシーズンを中断することを余儀なくされた。6月に入り、7月31日からフロリダ州オーランドで22チームが参戦し、シーズンを再開することが決まった中、65試合前後を消化した各チームならびにその主要選手たちを振り返っていきたい。
※データは日本時間3月12日終了時点、%=パーセント、評価は上から順にS、A、B、C、D、Eの6段階

2019-20シーズンNBA通信簿チーム編26 ダラス・マーベリックス

ウェスタン・カンファレンス(サウスウェスト・ディビジョン)
総合評価:A

■ここまでの戦績
今季戦績:40勝27敗(勝率59.7%/ウェスト7位)
ホーム戦績:19勝15敗(勝率55.9%)
アウェー戦績:21勝12敗(勝率63.6%)

■主要チームスタッツ(カッコ内はリーグ順位)
平均得点:116.4(3位)
平均失点:110.3(15位)
平均リバウンド:47.0本(4位)
平均アシスト:24.5本(13位)
平均スティール:6.3本(28位)
平均ブロック:5.0本(16位)
オフェンシブ・レーティング:115.8(1位)
ディフェンシブ・レーティング:110.0(17位)

ステフの弟セス・カリーは3ポイント成功率(45.3%)、成功数(平均2.3本)でいずれもキャリアハイを記録[写真]=Getty Images

■主要スタッツリーダー
平均出場時間:ルカ・ドンチッチ(33.3分)
平均得点:ルカ・ドンチッチ(28.7得点)
平均リバウンド:クリスタプス・ポルジンギス(9.5本)
平均アシスト:ルカ・ドンチッチ(8.7本)
平均スティール:デロン・ライト(1.2本)
平均ブロック:クリスタプス・ポルジンギス(2.1本)

■主な開幕後の選手またはコーチの動き
加入:ウィリー・コーリー・スタイン、マイケル・キッド・ギルクリスト
退団:ジャスティン・パットン

ドンチッチ、ポルジンギスを中心にリーグ最高の攻撃力で勝利を重ねる

 21シーズンという長期間にわたって、マブスというフランチャイズを支えてきたダーク・ノビツキーが昨季終了後に現役を引退したものの、このチームはすでに核となる選手を2人も擁していた。

 それが昨季の新人王に輝いたスロベニア出身のルカ・ドンチッチ、昨年2月にトレードで加入したラトビア出身のクリスタプス・ポルジンギス。ポルジンギスが一昨年2月に負った左膝の前十字靭帯断裂から完全復活したことで、今季マブスは“魅惑のインターナショナルデュオ”のお披露目となった。

 マブスはこの両輪を中心に開幕から白星を重ねていき、ドンチッチは平均トリプルダブルに迫る圧巻のパフォーマンス、ポルジンギスも徐々に調子を上げていき、ドンチッチに次ぐチーム2番手のスコアラーとしてだけでなく、リムプロテクターとしても存在感を発揮。

 だがドンチッチが足首などを痛めて計13試合、ポルジンギスが膝の痛みなどで計16試合を欠場。さらにはピック&ロールで優秀なフィニッシャーとして活躍していたビッグマン、ドワイト・パウエルが1月22日のロサンゼルス・クリッパーズ戦で右足アキレス腱を断裂して今季絶望と、決して順風満帆と呼べるシーズンではなかった。

 それでも、ドンチッチ不在の試合で6勝7敗、ポルジンギスが欠場した試合で10勝6敗と踏ん張り、パウエル離脱後はマキシ・クリーバー、トレードで獲得したウィリー・コーリー・スタイン、あるいはポルジンギスがセンターを務めてカバーし、ウェスト7位でシーズン中断を迎えた。

 7月31日からフロリダ州オーランドでスタートする今季の“第二幕”へ参戦するマブスは、8位のメンフィス・グリズリーズと7.0ゲームも離れていることから、2016年以来のプレーオフ出場は確実視されている。

 シーズン中断時点でマブスはリーグトップのオフェンシブ・レーティングを記録しているものの、オールスター以降に絞ってみると、リーグ10位の112.7までダウン。3点差以内で決着がついた試合で2勝9敗、勝率5割を上回るチームとの戦績で10勝16敗と、リーグ上位チームとの対決に不安を残すものの、“ルカ・マジック”でゲームの流れを一変させるドンチッチ、“ユニコーン”の異名を持つポルジンギスがそろえば、何かサプライズを起こしてくれそうな雰囲気を感じさせるのがこのチームの魅力の1つと言っていいだろう。

オフェンシブ・レーティングを昨季の20位からトップへと伸ばしたカーライルHCの手腕もお見事[写真]=Getty Images

両輪を有能なスコアラーやロールプレーヤーで固める布陣が奏功

 キャリア2年目にオールスター初選出をスターター枠で飾ったドンチッチは、リーグ屈指の選手へと成長。プレーメイカーを務めつつ、スムーズな体重移動から繰り出すステップバックスリーや独特なタイミングで繰り出すドライブでディフェンダーを引きつけ、チームメートへ得点機会を演出するエンターテイナーとしての地位を確立。

 開幕5戦目から20試合連続で20得点5リバウンド5アシスト以上をマークし、マイケル・ジョーダン(元シカゴ・ブルズほか/18試合連続)の記録を抜き去り、NBAとABAが統合した1976-77シーズン以降では史上最長記録を樹立したことも今季の特筆すべき記録だ。

「いくらなんでも、ちょっとスタッツ面が強調されすぎてると思う。マイケル・ジョーダンと比較することなんて、誰であろうとできないよ。彼はそういう選手なんだ。(僕の記録は)あくまでスタッツにすぎないよ」と謙そんしたドンチッチだが、周囲の期待は高まるばかり。

 そのドンチッチが欠場した期間、マブスはポルジンギスを中心にミルウォーキー・バックス、フィラデルフィア・セブンティシクサーズというイースタン・カンファレンスの上位チームを撃破。

「ロッカールームのケミストリーもそうだし、コート上でもいい状態だ。僕らはコートに出て、それぞれの選手がやるべきことをこなし、ハードにプレーしている。(好調の)秘訣なんてないさ。このチームには最高のベンチメンバーがいる。それが僕らの強みなんだ。このチームにはものすごい数の武器(スコアラー)があるってことさ」。

適材適所の補強で戦える布陣をそろえたマブス[写真]=Getty Images

 12月21日のシクサーズ戦終了後にポルジンギスがそう語ったように、マブスはシュート力のある選手をロースターにそろえていたことも今季好成績を残した要因の1つと言っていい。

 昨季のトレードでポルジンギスと共に加入したティム・ハーダウェイJr.や昨夏フリーエージェント(FA)で獲得したセス・カリー、デロン・ライトが援護射撃し、ジェイレン・ブランソンドリアン・フィニー・スミス、クリーバーといった昨季から在籍していた選手たちが主力選手不在時にステップアップした。

 ポルジンギスも年明け以降に調子を上げていき、32得点以上を5度も奪取。3月2日のミネソタ・ティンバーウルブズ戦では6本の3ポイント成功を含む38得点に13リバウンド4アシスト5ブロックと攻防両面でゲームを支配し、ドンチッチ不在のチームを勝利へと導く殊勲の働き。

 これにはリック・カーライルHC(ヘッドコーチ)も「リーチが非常に長く、ロングレンジからショットを打てて、ドライブもパスもこなせる。それにリムをプロテクトできるし、リバウンドだって奪える。彼はまだ若いけどバスケットボールを理解していて、すばらしい選手だ」と絶賛。

「シーズンが中断される前、僕とルカはお互いが本当にいいリズムに乗りつつあったんだ」とポルジンギスは悔しがっていたが、7月末に再開されるシーズン第二幕までまだ時間は十分あるだけに、万全な状態まで引き上げて臨んでほしいところだ。

マブスがプレーオフを勝ち上がるためには、ドンチッチ(右)とポルジンギス(左)の活躍が不可欠だ[写真]=Getty Images

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