2020.06.15

NBA再開に暗雲…カイリー・アービングらがリーグの再始動に否定的な見解を示す

NBA再開に対して否定的な見解を示したカイリー・アービング[写真]=Getty Images
某ストリートメディアのシニア・エディターを経験後、独立。ひとつのカルチャーとしてバスケットボールを捉え、スポーツ以外の側面からもNBAを追いかける。

 今年2月、パウ・ガソル(前ポートランド・トレイルブレイザーズ)に代わり、NBPA(NBAの選手労働組合)の副会長職に就いたカイリー・アービング(ブルックリン・ネッツ)。去る6月13日(現地時間12日、日付は以下同)、アービングは一部選手を招聘し、約80人のNBAおよびWNBA選手が参加したテレビ電話会議を取り仕切った。

 議題は、未だ「予定」の域を抜けないNBAの再開について。報道では、オーランドでのリスタートが有力視されているNBAだが、ネッツの背番号11はこの選手会議でリーグのNBA再開プランに待ったをかけたようだ。

 アービングは、電話内で参加者に以下のメッセージを投げかけたという。

「僕はオーランド行きを支持できない。この体系的な人種差別は理解しがたいものだからだ。何か怪しいニオイを感じずにはいられない。社会の構造変化のためなら、持っているもの全ての投げ出す覚悟だ」

 アービングが再開に反対する理由は、白人の元警察に殺害されたジョージ・フロイド氏の死をきっかけに世界的な抗議運動へと発展している根深い黒人差別問題にある。同選手は、NBA再開をきっかけに、現在多くのコミュニティから発せられている「声」がメディアによってかき消されしまうこと懸念しているのだ。

 アービングの意見には、ドワイト・ハワード(ロサンゼルス・レイカーズ)がいち早く理解を示している。

「僕はカイリーの意見に賛成だ。この瞬間、バスケットボールを含むエンターテイメントは必要ないし、気晴らし程度にしかならない。もちろん、僕もキャリア初のタイトルを獲得したいと思っている。しかし、今はチャンピオンシップよりも僕たちが団結することが重要で、この機会を逃す手はないはずだ」

 ハワードのほかにも、カーメロ・アンソニー(ポートランド・トレイルブレイザーズ)やドノバン・ミッチェル(ユタ・ジャズ)を筆頭に、一部選手がリーグの再開に否定的な意見を持っている。JJ・レディック(ニューオーリンズ・ペリカンズ)は自身のポッドキャストチャンネルで選手会長のクリス・ポール(オクラホマシティ・サンダー)と話したことを明かし、「彼は『これ(再開したNBAへの参加)は、みんなが自分で決めなければいけない』と言っていて、まさにそのとおりだと思う」とコメントしている。

 このテレビ会議には、CP3のほかにもケビン・デュラント(ネッツ)やラッセル・ウェストブルック(ヒューストン・ロケッツ)、アンドレ・イグダーラ(マイアミ・ヒート)らが参加。しかし、そこにはNBAのキングことレブロン・ジェームズ(レイカーズ)の姿はなかったようだ。

 レブロンは、これまで幾度かNBA再開を支持するようなコメントを発していた。だが、これは決して黒人差別問題に関心を向けていないからではない。

 レブロンは、まもなくに迫る大統領選挙に備え、トレイ・ヤング(アトランタ・ホークス)らとともに黒人に選挙投票を促す非営利団体「More Than A Vote」を設立。レブロンの政治活動はこれが初めてのことで、同選手は「我々の声に世界が耳を傾けている。今こそ、変化を起こすときだ」という力強いコメントとともに、減少傾向にあった黒人の選挙参加を訴えかけた。

 SNSでは、アービングらの意見に賛同する人もいれば、黒人コミュニティを象徴するスポーツとしてNBA再開に期待を寄せている人も存在する。

 以上を踏まえると、全選手が今季再びコートに戻る可能性はかなり低いように思える。無論、多くの選手が不参加を表明すれば、リーグも再開自体を見直さなければならない。

 NBAの未来は、いかに。今後も協会や選手たちの動向を注視していく必要がありそうだ。

 文=Meiji
 

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