2020.07.13

プレーメイカーとして指揮官から絶大な信頼を得たローズ/2019-20NBA通信簿選手編⑬

ケガ人続出のピストンズで大活躍したローズ[写真]=Getty Images
NBA好きが高じて飲食業界から出版業界へ転職。その後バスケットボール雑誌の編集を経てフリーランスに。現在はNBAやBリーグのライターとして活動中。

新型コロナウイルスの感染拡大を防止すべく、世界最高峰のエンターテインメント、NBAは3月13日(現地時間12日、日付は以下同)より2019-20レギュラーシーズンを中断することを余儀なくされた。6月に入り、7月31日からフロリダ州オーランドで22チームが参戦し、シーズンを再開することが決まった中、65試合前後を消化した各チームならびにその主要選手たちを振り返っていきたい。
※データは日本時間3月12日終了時点、%=パーセント、評価は上から順にS、A、B、C、D、Eの6段階

2019-20シーズンNBA通信簿選手編⑬デリック・ローズ

所属:デトロイト・ピストンズ(イースタン・カンファレンス13位)
総合評価:A

■プロフィール
生年月日(年齢):1988年10月4日生まれ(31歳)
ポジション:ガード
身長/体重:188センチ/90キロ
NBAキャリア:11年目
  
<今季ここまでの功績>
特になし

<2019-20シーズン 個人成績>
平均出場時間:26.0分
平均得点:18.1得点
平均リバウンド:2.4本
平均アシスト:5.6本
平均スティール:0.8本
平均ブロック:0.3本
フィールドゴール成功率:49.0%
3ポイント成功率:30.6%
フリースロー成功率:87.1%(リーグ20位)

■主要項目におけるシーズンハイ(相手チーム名は略称)
出場時間:36分59秒(20年1月26日/対ネッツ)
得点:31得点(2度)
リバウンド:7本(20年1月10日/対キャバリアーズ)
アシスト:12本(19年12月15日/対ロケッツ)
スティール:4本(19年12月29日/対スパーズ)
ブロック:2本(19年10月27日/対シクサーズ)
フィ―ルドゴール成功数:15本(20年2月29日/対サンズ)
3ポイント成功数:5本(19年12月13日/対マーベリックス)
フリースロー成功数:10本(20年1月6日/対レイカーズ)
★=キャリアハイ

今季は自己最高のフィールドゴール成功率を残した[写真]=Getty Images

プレーメイカーとして自己最長の14試合連続20得点超えを達成

 昨季ミネソタ・ティンバーウルブズでローズは平均18.0得点4.3アシストに加え、キャリアハイの50得点を叩き出し、相次ぐ膝のケガから見事に復活。昨年1月下旬に『SLAM』のインタビューに応じた際、ローズは2011年に史上最年少でシーズンMVPを獲得した当時と今を比較し、こう話していた。

「本音を言うと、僕は今のほうがいい選手だと感じてる。当時は向こう見ずなところがあったからね。あの頃の僕はゲームのことをあまり理解していなかったんだ。今の僕から見て、ブルズでプレーしていた頃の自分は無謀な部分があった。でも今はより落ち着いてプレーできてるし、自分自身をコントロールできてる。どんな状況であろうとリングへと向かっていけるし、賢くなった。バスケットボールIQは明らかに高くなったと思う」。

 そして昨夏フリーエージェント(FA)となったローズが新天地に選んだのはピストンズ。プレーメイカーを欲していたドウェイン・ケイシーHC(ヘッドコーチ)は昨夏来日した際、ローズについて「彼の気持ちを込めて一生懸命プレーする姿勢が、多くのファンに届いているんだと思う」と評し、こう続けていた。

「昨季、彼はキャリアハイとなる37.0%という自己最高の3ポイント成功率を残している。彼を獲得できたことにとても興奮しているよ。彼にはドライブやキックアウト、そこからのショットがあり、オフェンスの起点になることができるから、すごく期待している」。

ドライブからのキックアウトでチームメートたちの得点機会も演出[写真]=Getty Images

 ピストンズは今季、2年連続のプレーオフ進出を目指して迎えたものの、ブレイク・グリフィンルーク・ケナードといった主力がケガのため長期離脱。今年2月にはアンドレ・ドラモンド(現クリーブランド・キャバリアーズ)、レジー・ジャクソン(現ロサンゼルス・クリッパーズ)、マーキーフ・モリス(現ロサンゼルス・レイカーズ)を放出。

 ベテラン陣が退団後、ピストンズはオールスター後に平均24.0得点9.6リバウンドとブレイクしたクリスチャン・ウッドのほか、スビ・ミハイリュク、ブルース・ブラウン、セクー・ドゥムブーヤといった若手が躍動したものの、シーズンを通してこのチームを支えていたのは間違いなくローズだった。

 開幕から好調を維持するローズに対して、ブルズ時代の恩師トム・シボドーが「彼は健康であれば、すごくいいプレーをしていた。昨シーズンは実にすばらしかった。彼は今シーズン、(ピストンズで)驚異的な存在になると思うよ。彼の活躍はすごくうれしいし、私は彼のことをとても誇りに思うよ」と10月末に『ClutchPoints』へコメント。

 今年1月にはケイシーHCが「デリックは真のポイントガード。物事をコントロールしなければならないなかで、いい仕事をしてくれている。それに試合が厳しい展開になって彼の得点が必要になった時、彼はそれをこなしてくれるんだ」と『Bleacher Report』をとおして称賛している。

 ケガ人続出というチーム状況により、今年1月中旬にシックスマンからスターターへと昇格したローズは、キャリア最長となる14試合連続で20得点以上をマーク。今季はキャリア11年目にして自己最高のフィールドゴール成功率を残しており、充実したシーズンを送ったと言っていい。

プルアップジャンパーの決勝弾を放り込むなど、豊富なスキルを使い分けて円熟味を増したローズ[写真]=Getty Images

新GMが就任したピストンズ、ローズは来季も主力として残ることが濃厚

 プレーメイカーとして上々のパフォーマンスを続けていたローズに対して、ロサンゼルス・レイカーズやロサンゼルス・クリッパーズといった優勝候補が今年2月7日のトレードデッドラインを前にトレードで獲得することを目論んでいると『The Athletic』が報じており、ローズがトレードされる可能性もあった。

 だが2月1日にローズは地元メディア『Detroit Free Press』へ「僕はここに残りたいけど、それを決めるのは僕じゃない。(トレードは)そういうものだってことは君たちも知ってるでしょ?」と胸の内を明かしていた。この思いが通じたのか、結局トレードは成立せず、ローズはピストンズの一員として今季を終えた。

 イースト13位のピストンズは、今季の第二幕へ参戦できないため一足早く今季を終えると、早くも来季に向けて動き出した。6月19日、ピストンズはここ2シーズン空白だったゼネラルマネージャー(GM)にトロイ・ウィーバーを招へい。オクラホマシティ・サンダーで12年間エグゼクティブを務めてきたウィーバーは「私は非常に高いレベルで競い合うためのピースを集めて、このチームを勝者へと構築していくというチャレンジに興奮しています」と話しており、来季に向けてチーム強化を図っていくこととなる。

ローズと言えばやはりドライブ。来季もこのドライブからディフェンス陣を突破していくはずだ[写真]=Getty Images

 今年2月に『The Detroit News』へ「僕はデトロイトが大好きなんだ。ホーム(シカゴ)にも近いしね。もちろん、もっと勝利を重ねたかった。けど僕はこのチームのスタッフやフロントオフィスが好きだし、デトロイトにいることが大好きなんだ」と語ったローズ。

 契約は来シーズンまで残っており、ケイシーHCが「我々は彼に長い間このチームにいてほしいと思ってる。このチームにおいて最大の貢献者なんだ。ハードにプレーし、ペイントエリアへ到達できるという私たちが望むプレースタイルを持っている」と話したように、ローズが来季までにトレードされることはさすがにないはず。

 それはウィーバー新GMが「我々は健康体の彼ら(グリフィンとローズ)が戻ってくることに興奮しており、このチームが前進していくことを助けてくれるでしょう」と話したことでも明らかだ。

 グリフィンとローズという元新人王デュオでオールスターにも複数回選ばれた実績を誇るベテラン陣は、来季巻き返しを狙うチームの中心にいることだろう。

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