2020.07.21

全てにおいて“クリエイティブさ”を磨き続ける実力者ハーデン/2019-20NBA通信簿選手編21

今季も得点王争いで爆走するハーデン[写真]=Getty Images
NBA好きが高じて飲食業界から出版業界へ転職。その後バスケットボール雑誌の編集を経てフリーランスに。現在はNBAやBリーグのライターとして活動中。

新型コロナウイルスの感染拡大を防止すべく、世界最高峰のエンターテインメント、NBAは3月13日(現地時間12日、日付は以下同)より2019-20レギュラーシーズンを中断することを余儀なくされた。6月に入り、7月31日からフロリダ州オーランドで22チームが参戦し、シーズンを再開することが決まった中、65試合前後を消化した各チームならびにその主要選手たちを振り返っていきたい。
※データは日本時間3月12日終了時点、%=パーセント、評価は上から順にS、A、B、C、D、Eの6段階

2019-20シーズンNBA通信簿選手編21 ジェームズ・ハーデン

所属:ヒューストン・ロケッツ(ウェスタン・カンファレンス6位)
総合評価:S

■プロフィール
生年月日(年齢):1989年8月26日生まれ(30歳)
ポジション:ガード
身長/体重:196センチ/99キロ
NBAキャリア:11年目
  
<今季ここまでの功績>
オールスター選出(8年連続8度目)
月間最優秀選手:1度(12月)
週間最優秀選手:2度

<2019-20シーズン 個人成績>
平均出場時間:36.7分(リーグ2位)
平均得点:34.4得点(リーグ1位)
平均リバウンド:6.4本
平均アシスト:7.4本(リーグ9位)
平均スティール:1.7本(リーグ6位)
平均ブロック:0.9本
フィールドゴール成功率:43.5%
3ポイント成功率:35.2%
フリースロー成功率:86.1%

■主要項目におけるシーズンハイ(相手チーム名は略称)
出場時間:48分31秒(19年12月4日/対スパーズ)★
得点:60得点(19年12月1日/対ホークス)
リバウンド:16本(20年2月1日/対マーベリックス)
アシスト:14本(2度)
スティール:5本(19年12月6日/対ラプターズ)
ブロック:3本(5度)
フィ―ルドゴール成功数:20本(19年12月12日/対キャバリアーズ)★
3ポイント成功数:10本(2度)★(キャリアハイタイ)
フリースロー成功数:24本(19年12月4日/対スパーズ)★
★=キャリアハイ

フリースローは試投数、成功数ともに今季を含めて6シーズン連続でリーグトップを記録している[写真]=Getty Images

スコアリングに磨きをかけ、11月には圧巻の平均39.5得点を奪取!

 昨季までのキャリア10シーズンを終えた時点で、ハーデンはシーズンMVP(18年)や最優秀シックスマン賞(12年)を手にしたほか、オールNBAチームに6度、オールスターに7度、得点王には2度、17年にはアシスト王にも輝いている。

 現役屈指の実力者という称号こそ手に入れたものの、この男が満足することは決してない。ハーデンは昨年9月に『Bleacher Report』へこう話していた。

「俺はまだ、自分が(NBAで)達成したいことの半分も成し遂げちゃいない。複数回の優勝とかだ。俺はこの先もずっと語り継がれるバスケットボール選手の1人になりたいんだ。皆はきっと、コービー・ブライアント(元ロサンゼルス・レイカーズ/優勝5度)やマイケル・ジョーダン(元シカゴ・ブルズほか/優勝6度)、ドウェイン・ウェイド(元マイアミ・ヒートほか/優勝3度)のことを覚えているだろう。俺も彼らと同じようになりたい。複数回の優勝と数々の記録を残して、ベストなシューティングガード(SG)の1人として記憶されたい」。

 昨年10月。ハーデンはプレシーズン期間にジャパンゲームズで来日し、オクラホマシティ・サンダーに在籍していた2012年以来、約7年ぶりにラッセル・ウェストブルックとの“MVPデュオ”を形成して今季に臨んだ。

 ハーデンは開幕3試合でフィールドゴール成功率がいずれも40.0%未満、3ポイントに至っては25.0%未満とショットがリムに嫌われたものの、フリースローでカバー。開幕4戦目となったワシントン・ウィザーズ戦では本来のシュートタッチを取り戻し、59得点9アシストの大暴れ。

 ウィザーズ戦終了後、「練習さ。毎日練習をすること。俺はそのことに自分を捧げている。自分を追い込まなければ、偉大な選手にはなれないのさ」と語ったハーデンは、徐々にシュートタッチを取り戻し、10月から12月はいずれも月間平均36.8得点以上をマーク。

ジャパンゲームズでもフローターやレイアップに加え、ステップバックスリーを何度も突き刺した[写真]=伊藤 大允

 圧巻だったのは11月。15試合で平均39.5得点6.3リバウンド7.6アシスト1.9スティールの大暴れを見せたハーデンは、月間平均でフィールドゴール成功率46.4%、3ポイント成功率38.9%、フリースロー成功率83.7%をたたき出して猛威を振るった。

 11月下旬に「シーズンを通して、相手チームは俺にダブルチームを仕掛けてきている。NBAで素晴らしいディフェンダーや選手たちが、トップ・オブ・ザ・キーでダブルチームをしてくるのは今まで見たことがない」と『Sports Center』へ語っていたにも関わらず、驚異的な数字を残していたのだから恐ろしい限り。

 年明け以降は相次ぐ厳しいマークもあり、平均得点は下降していった。それでも1月は平均28.6得点、2月は同31.9得点、3月も中断時点までの5試合で同28.2得点と、リーグ有数の数字を残している。今季だけで5度の50得点以上をクリアしており、12月1日のアトランタ・ホークス戦では第3クォーターだけで29得点を挙げる大暴れを見せ、わずか30分41秒のプレータイムでシーズンハイの60得点。

 これにはマイク・ダントーニHC(ヘッドコーチ)も「彼がこなしている全てが信じられないね」と語れば、オースティン・リバースも「こんなパフォーマンスは見たことがない。第4クォーターでプレーせずに60得点も取るんだから。今のNBAで同じことができる選手がいるなら教えてほしいくらいだ」と脱帽。

 ハーデンはこの日、キャリア4度目の60得点ゲームとなり、ジョーダンと並んで歴代3位タイに浮上。『StatMuse』によると、ハーデンは1試合で20本以上のフリースローを沈めた試合が8つ目(シーズン中断時点で計9度)となり歴代最多で、60得点以上を挙げた選手のうち、フィールドゴール試投数24本は史上最少。さらに、開幕から10本以上のフリースロー試投数を20試合連続で記録した史上初の選手になった。

 シーズン中断時点で、ハーデンは平均34.4得点とリーグトップを独走。今月末から始まる第二幕では、2位のブラッドリー・ビール(ウィザーズ/平均30.5得点)が出場しないため、3シーズン連続の得点王は決まったも同然と言える。

ホークス戦では圧巻のスコアリングショーを演じた[写真]=Getty Images

第二幕へ向けて順調な仕上がりを見せるハーデン
リーグ有数の実力者が思い描く“最終的な目標”とは?

 シーズン中断期間も精力的にワークアウトをこなしたハーデンは、良好なコンディションをキープしている。家族の事情により、開催地でチームと合流するまでに時間を要したものの、17日に約4か月ぶりにチーム練習へ参加。

「ここにいることができてうれしいね。実際のところ、チームメートたちと一緒に練習して自分たちのスタイルを追求できて本当にいい感じだった。これからは1日1日が新たな挑戦になっていくだろうね」とハーデン。

 ハーデンのコンディションには指揮官も「彼はここに来る前から、ハードに練習してきたんだ」と太鼓判を押しており、「彼はすでに準備できてるように見えるね。彼がどれだけ強い男なのか、皆忘れてるんじゃないかな。彼はこのリーグの中で最も強靭な選手の1人なんだ」とロケッツのリーダーを絶賛。

 相棒のウェストブルックも新型コロナウイルスから回復し、21日にはオーランドに乗り込む予定。その後ホテルの部屋で隔離を終え、問題なければ2日後にはチームへ合流することだろう。

 ロケッツは現在、ウェスト6位ながら、5位のサンダーとはゲーム差なし、4位のユタ・ジャズとは1.0ゲーム差、3位のデンバー・ナゲッツとも2.5ゲーム差のため、シーディングゲーム8試合で順位を上げる可能性も十分ありそうだ。

 もっとも、『NBA TV』のインタビューでグラント・ヒル(元デトロイト・ピストンズほか)が「ロケッツは第6シードだとしても、上まで勝ち上がれるさ。どのチームも対戦したくない危険な存在だね。最も重要なのは、ジェームズ・ハーデンが状態のいい今、最も怖いチームだということ」と話しているように、ハーデンは再び猛威を振るう可能性を大いに秘めている。

ディフェンダーを幻惑させるクロスオーバードリブルからドライブ、パス、ステップバックスリーで相手を仕留めるハーデン[写真]=Getty Images

「自分自身はファッションでもバスケットボールでも、やることすべてにおいてクリエイティブなんだ。何をやっていてもインパクトを与えられるようにね。バスケットだと、どうやってこのゲームにインパクトをもたらすか、それこそが俺の最終的な目標だ。子どもたちや若者たちといった次の世代が、俺たちのことを見上げてその技を見てくれている。だから常にジムの中に住みついてるよ。試合後の俺は、いつもショットの練習をしたりスキルを磨いていて、本当に毎日、いつももっとうまくなる方法を探ってるんだ。そうしないと自分が“何をやるべきなのかが分からなくなっちゃう”からね」。

 ジャパンゲームズで「クリエイティブであること」について聞かれた際にそう話していたように、ハーデンは常に高みを見据えている。必殺技のステップバックスリーは年々その距離を伸ばしており、片足でオフバランスから放たれるワンフットスリーなど、ハーデンはクリエイティブなプレーが光る。

 第二幕でロケッツが目指すのはもちろん、フランチャイズ史上3度目のNBAチャンピオンだ。シーディングゲームとプレーオフでも、ハーデンは毎試合自身の足跡を残していくに違いない。

自粛期間を経て第二幕に臨むハーデン。新たなスキルを披露することになるかも?[写真]=Getty Images

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