NBAのルーキーには毎年、ドラフトの結果を良い意味で裏切ってくれる優良株がいる。
2019年組で言えば、マイアミ・ヒートのケンドリック・ナンは、新人王候補にまで名前が挙がるほどのサプライズとなった。また、ワシントン・ウィザーズで躍動した八村塁のゴンザガ大学時代の戦友であり、渡邊雄太のチームメートであるメンフィス・グリズリーズのブランドン・クラークも全体21位指名以上の活躍をし、大きなインパクトを残したと言える。
グリズリーズは開幕当初、誰もが低迷を予想していた。しかし、蓋を開けてみれば、プレーオフ圏内まであと1勝という大健闘。ルーキー・オブ・ザ・イヤーが有力視されているジャ・モラント率いる同チームは、若いメンバー構成ながらも、確実に正しい方向へと進んでおり、来年以降も楽しみな存在だ。
クラークは、ベンチからのスタートでもスターター顔負けのスタッツを残した。1試合平均12.1得点、5.9リバウンドは、十分過ぎる貢献度。また、12月には14日のサンアントニオ・スパーズ戦で25得点、続く18日のオクラホマシティ・サンダー戦で27得点と、2試合連続でキャリアハイを塗り替え、ルーキーランキングのトップ5にも名を連ねた。さらに、プレーオフ進出をかけたポートランド・トレイルブレイザーズとの試合後、モラントがクラークのインタビューに割り込み、カメラに向かって「ブランドン・クラークはオール・ルーキー・ファーストチームだ」と叫ぶなど、同期からも大きな信頼を勝ち取っている。
そんなメンフィスの背番号15が今シーズン、とあるNBA記録を塗り替えた。ルーキーのフィールドゴール成功率だ。これまでの歴代最高は、1980-81シーズンにカンザスシティ・キングス(現サクラメント・キングス)のスティーブ・ジョンソンが記録した61.3パーセント。しかし、クラークは61.8パーセントという成功率で今シーズンをフィニッシュし、同記録を39年ぶりに更新。この数字は、今シーズンのリーグ平均の46.0パーセントを約16パーセント近くも上回るものである。さらに、2ポイントシュートに限定すれば、その成功率は65.6パーセントに上昇。純粋な得点はもちろんのこと、ショットミスを減らし、確実性を高めることは、チームに勢いをもたらすと同意義である。
ちなみに、1シーズンの歴代最高フィールドゴール成功率は、ウィルト・チェンバレンがロサンゼルス・レイカーズ在籍時の1972-73シーズンに記録した72.7パーセント。ポテンシャルを感じるクラークだからこそ、この偉業を目指し、さらなるシュート精度の向上に期待したい。
文=Meiji