2020.09.17

ケビン・デュラントがニックスではなく、ネッツを新天地に選んだ理由を説明

デュラントがネッツを選んだ理由とは?[写真]=Getty Images
某ストリートメディアのシニア・エディターを経験後、独立。ひとつのカルチャーとしてバスケットボールを捉え、スポーツ以外の側面からもNBAを追いかける。

 ケビン・デュラント(ブルックリン・ネッツ)は、佳境に突入した2019-20シーズンのプレーオフを、どのような心持ちで見つめているのだろうか。昨年のNBAファイナルで右足のアキレス腱断裂という選手生命を左右しかねない大ケガを負い、今季は万全を期すためにシーズンを全休。4度の得点王は少なからず、プレーできないもどかしさを抱いているに違いない。

 しかし、スティーブ・ナッシュを新監督に迎えた来季は、溜めに溜めたフラストレーションを発散してくるだろう。ゴールデンステイト・ウォリアーズ時代に築いた2人の信頼関係は、我々が想像する以上のものと見る。現に、ウォリアーズでアシスタントコーチを務めるブルース・フレイザーは、「ケビンは、誰のアドバイスにも耳を傾けなかった。だが、ナッシュの声には耳を傾け、多くの変化を受け入れたんだ」とコメント。この名コンビを、現体制を率いたジャック・ボーンがヘッドアシスタントコーチとして支えるとなれば、2020-21シーズンはネッツが念願のNBA制覇を成し遂げるかもしれない。

 そんなデュラントはウォリアーズ退団後、ネッツのライバル球団であるニューヨーク・ニックスへの加入も噂されていた。当時、ニックスはサラリーキャップに大幅な余力があり、ニックスファンはスター選手の到来を待望。しかし、その夢は水の泡となり、最終的にデュラントは、ネッツでカイリー・アービング(ネッツ)と超強力デュオを形成することを選択した。

ネッツで形成されたデュラントとカイリーの強力デュオ[写真]=Getty Images

 最近、デュラントはJJ・レディック(ニューオーリンズ・ペリカンズ)がホストを務めるPodcast番組『The Old Man and the Three』に出演。そこで、ニックス移籍についての話題を振られると、「微塵もニックスに行くつもりはなかった」と、かつての噂を改めて一蹴した。

 また、KDは「ニックスやニューヨークの救世主になりたくなかった」と続け、「ニューヨークの王様になる気はなかったね。全く惹かれなかった。ブロードウェイにも興味はない。俺はただ、バスケットボールをプレーして、ベッドに寝転がり、ゆっくりしたいだけ。ブルックリンは、それが体現できる場所だと思う」とし、メジャー感の強いニックスよりも、よりローカルな空気が流れるエリアでバスケットボールに集中することを選んだと、ネッツ移籍の理由を説明している。

■カーメロがニックスを選んだ理由は?

2011年から2017年にかけてニックスでエースとして活躍したカーメロ[写真]=Getty Images

 ここで、かつてニックスの王として君臨したカーメロ・アンソニー(ポートランド・トレイルブレイザーズ)のコメントを振り返ってみたい。メロは昨年、『New York Daily News 』に対して、誰もがニックスでプレーするプレッシャーを望んでいるわけではないと語っている。

「俺は、それ(プレッシャー)を求めていた。あそこでチャレンジしてみたかった。失敗しようと成功しようと、俺はあそこでプレーしたんだと言いたかった。『あの地へ行け』という声が聞こえたんだ。ただ、俺はチャレンジしたかっただけで、誰もが同じメンタリティーではないとも思う」

 ニックスは、NBA屈指の熱狂的なファンを持つ球団であり、そのファンのなかには著名人も多い。しかし、近年は低迷期から脱出の糸口を見つけられておらず、2012-13シーズン以降はプレーオフにも進出していない。毎年のようにビッグネーム獲得の噂が挙がるものの、結局はすべて噂止まり。ニックスファンの不満は年々大きくなり、それと比例して期待値も膨れ上がっているはずだ。

 こうした状況を加味し、自分のライフスタイルと照らし合わせたうえでネッツに加入したデュラントの決断は、英断と言えるかもしれない。「ブルックリンには、俺が思うすべてがそろっていた」、KDはその内訳を付け加える。「チル(のんびり)で、喧騒から離れ、(ジャージも)オールブラック。俺たちは静かに、ただバスケットボールだけに集中できる。俺たちの試合にショー要素はなく、メッカのマディソン・スクエア・ガーデンでもないんだ」

 そう語る言葉からは、優勝へ対する並々ならぬ情熱が滲み出ている。「俺たちはただフープをして、ブルックリンに新しい何かを築き上げるんだ。去年の2月から3月にかけて、そんな想いが芽生えはじめ、そしてFAになった。時が来た、と感じたんだ」

 デュラントの「時が来た」の言葉のとおり、来季のNBAはブルックリン・ネッツが、勢力図をガラリと塗り替えるかもしれない。

文=Meiji

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