カーメロ・アンソニー(ポートランド・トレイルブレイザーズ)は、去る5月4日(現地時間3日)のアトランタ・ホークス戦で、NBA通算得点ランキング10位に浮上した。
2003年10月29日のサンアントニオ・スパーズ戦、初得点は得意のポストプレーからベースライン際に鋭く切れ込み、ゴール下で決めた2ポイントだった。それから約17年半、シラキュース大学出身のフォワードは、通算得点数を27314得点へと伸ばし、殿堂入りの名手エルビン・ヘイズ(元ヒューストン・ロケッツほか)を上回り、遂にトップ10入りを果たした。
ヘイズの記録更新の瞬間も得意の1on1からだった。右45度から手慣れた手付きで間合いを図ると、多くの選手が手を焼いてきた美しいジャンパーでスリーポイントを成功。さらに、相手ディフェンダーからファウルを誘うボーナスつきとなり、3本指でこめかみ付近を叩くお馴染みのジェスチャーで自らのマイルストーンを祝福した。
First ballot. pic.twitter.com/B6sGr7kSQl
— Portland Trail Blazers (@trailblazers) May 4, 2021
「辛抱し、強くあり続けた」
この日14得点をマークしたメロは試合後、ロッカールームに戻るとヘッドコーチのテリー・ストッツから祝福の言葉とゲームボールを受け取り、仲間に囲まれながら手短なスピーチを披露。派手に喜ぶようなことはなく、ベテランらしい重みのある言葉でこう語っている。
「数年前、俺はこの瞬間に立ち会えるとは思っていなかった。俺は訳あって、リーグを離れていただろ。辛抱したよ。強くあり続けた。自分自身に忠実であり続け、そして今、俺はトップ10にいる」
“A couple years ago I ain’t think I was gonna be in this moment. I was out the league for whatever reason… I’m back. I persevered. I stayed strong I stayed true to myself & now I’m here in the Top 10.” pic.twitter.com/QkmI0FbF3S
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ニューヨーク・ニックスを退団以降、アンソニーのキャリアは一変。オクラホマシティ・サンダーでは、ラッセル・ウェストブルック(ワシントン・ウィザーズ)とポール・ジョージ(ロサンゼルス・クリッパーズ)とともにビッグ3を形成するも、期待通りに機能せず。また、トレードでヒューストン・ロケッツへと籍を移した頃には攻守共にチームの足を引っ張ることとなり、わずか10試合で構想外となってしまった。
それから約1年間、稀代のスコアラーは未所属の状況が続いた。「このまま引退か」という声が日に日に大きくなっていくなか、アンソニーはスキルコーチのクリス・ブリックリーらと鍛錬に励み、次第に本来の姿を取り戻していく。そして2019年11月、見事ブレイザーズとの契約を勝ち取り、NBAにカムバック。巧みなジャブステップからのジャンパーは未だ錆びることのない伝家の宝刀であり、アンソニーは“ヴィンテージ・メロ”としてポートランドで新たな居場所を見つけた。そんなアンソニーが口にしたショートスピーチには、チームメートはおろか、多くの人が心を打たれたに違いない。
また、アンソニーは記録達成を成し遂げた試合後、「ESPN」の取材に応じ、こうも語っている。
「この瞬間(歴代通算得点10位)は理解していたけど、他のタイミングは実感がなかったね。15位、13位、11位になった瞬間も意識することはなかったけど、10位は特別だ。それを感じたね。試合中もだ。俺は達成を急ぐことも、強引に成し遂げることもしたくなかった。試合の日になり、自然に成し遂げたいと思っていたんだ。今日はいい気分だったし、序盤からショットも決まって、いいスタートが切れた。だから、達成がよりイージーだったと思う。息を吐き、リラックスできたよ」
9位モーゼス・マローン(元ヒューストン・ロケッツほか)の27409得点、8位シャキール・オニール(元オーランド・マジックほか)の28596得点の背中も見えてきただけに、アンソニーにはまだまだ現役を続けてもらいたいものだ。
文=Meiji