数多くの問題を抱えるNBA…「変革期にある」と発言したアダム・シルバーの真意とは

NBAのコミッショナーを務めるアダム・シルバー[写真]=Getty Images

 NBAは今、様々な問題を抱えながらリーグを開催している。例えば、観客を動員できないことによる収益分配。『ESPN』によれば、ニューヨーク・ニックスの球団社長を務めるジェームズ・ドーランは、ニックスやレイカーズのような人気球団が他チームのお財布事情を肩代わりすることに難色を示しているという。

 また、プレーイントーナメントの実施についても、リーグと選手間の乖離は大きい。従来であれば8位までの球団がスムーズにプレーオフに進出できたにもかかわらず、なぜ試合数を増やして、中位のチームで決勝戦顔負けのハードなゲームをしなければならないのか、というのが選手側の意見だ。一方で、リーグはそうしたデメリットを理解しているものの、開催にはレギュラーシーズンの結果を踏まえた“ボーナス”を生み出すというメリットも存在する。例えば、ヨーロッパのサッカーでは、上位チームにUEFAチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグの出場権が与えられ、下位チームには降格という厳しい現実が突きつけられる。NBAのレギュラーシーズンでも、ホームコートアドバンテージや対戦カードの優位性といったメリットが用意されているわけだが、それらのメリットをより魅力的にする施策がプレーイントーナメントという考え方もあるようだ。

プレーイントーナメント開催には否定的な声もあったが、熱戦が繰り広げられた[写真]=Getty Images


 何より、こうした問題を生み出している元凶は、新型コロナウイルスによる世界規模のパンデミックだろう。選手1人の存在が勝敗を左右するNBAにおいて、欠場は球団の功績はおろか、収益にまで影響を及ぼすこととなる。特に、プレーオフとなればその影響はより大きくなる。そのため、リーグは今シーズン、選手・関係者のワクチン接種に多大な時間とリソースを費やした。名物記者エイドリアン・ヴォジナロウスキーの情報源によれば、NBA選手全体の75パーセントがワクチン接種を完了しているものの、コミッショナーのアダム・シルバーは引き続き、選手のさらなる安全確保に向けて、各球団のフロントオフィスに訴えかけているようだ。

選手・コーチ陣と若手審判の対立、ジャッジ論争など問題は山積

 金銭面、スケジュールなど、問題に問題が重なり、NBAは未だかつてないほど疲弊しているように思える。そうしたストレスもあってか、近頃のオンコートでは、選手・コーチ陣と若手審判の対立が問題視されている。経験不足や選手たちとの希薄な関係性、そして、審判長と球団のコミュニケーションが行き届いていないことなど、原因は明白。瞬間的なものであればまだしも、選手たちが度々審判に詰め寄り、不満を吐露するシーンは後を絶たず、球団はネガティブ要素の増加によるファン離れを懸念しており、リーグもこの現状を芳しく思っていない。

 また、レフリーのジャッジ論争についても、未だ収束の目処が立っていない。ジェームズ・ハーデン(ブルックリン・ネッツ)やトレイ・ヤング(アトランタ・ホークス)らに代表される不自然なモーションからファウルを誘発する行為は、クレバーと捉えることができる反面、現行のルールに則ると明らかにオフェンス優位な状況を作り出してしまっている。ディフェンス陣のフラストレーション、スピード感の欠如、ゲーム時間の延長など、これにより発生する問題は決して少なくない。

ハーデンのような不自然なモーションからファウルを誘発する行為には批判の声も[写真]=Getty Images


 タフな2年を送ったNBAは、リーグとして経験値を積んだ。しかし、その前例のないできごとの連続により、課題が浮き彫りになったことも事実。『ESPN』によると、シルバーはプレーイントーナメントを前に、重役たちに対して「我々は変革期にあります」と高らかに宣言。そして、念押しかのように「私たちは視聴者を獲得しなければなりません」と伝えたという。

 NBAは、ファウル規定やチャレンジシステムの導入をはじめ、これまでも柔軟にルール変更に対応してきた過去がある。果たして、リーグは今後、関係者やファンの声をどのように反映させていくのだろうか。シルバーが口にした「変革期」の“内容”に注目が集まる。

 文=Meiji

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