悲願のNBA制覇を果たしたPJ・タッカー(ミルウォーキー・バックス)。フェニックス・サンズを執拗なディフェンスでシャットアウトし、要所でコーナーからスリーポイントを沈めるいぶし銀な働きは、まさしく影の功労者だった。
そんな名脇役を務めたタッカーには、スニーカーコレクターというもうひとつの顔が存在する。彼のスニーカーにまつわる数々の逸話については枚挙に暇がないが、NBAファイナルで優勝を決めたゲーム6でも、初タイトルを祝すにふさわしいゴージャスな一足の存在が明らかになった。
ベースとなるモデルは、スニーカーの王様として君臨する不朽の名作『エア ジョーダン 1』。しかし、その価格は1足のシューズとしては天文学的数字とも言える25万ドル(約2700万円)にものぼる。これは、通常の『エアジョーダン1』が定価で1500足以上も購入できる法外な金額だ。
タッカーのコレクションに新たに追加されたAJ1は、世界中のトップセレブにオンリーワンのジュエリーを提供し、NBAでは昨年、ロサンゼルス・レイカーズのチャンピオンリングを制作したことで知られる「ジェイソン・オブ・ビバリーヒルズ」と、スニーカーリメイクのパイオニアである「ザ・シュー・サージョン」が共同でカスタマイズしたもの。
アッパーは、革の最高級品に分類されるアメリカンアリゲーター(ミシシッピワニ)のなかでもトップグレードの評価を受けたレザーのみを使用。そして、サイドのスウッシュやブレスレッドを兼ねるジップタイなどには、2020粒のラウンドブリリアントカットのダイヤモンドと、重さ150グラムを超える14カラットのホワイトゴールドがちりばめられている。
もちろん、革の縫製からダイヤモンドの装飾まで、カスタムはすべて専門の職人の手作業により施されたが、その制作時間は100時間以上を超えるとのこと。一足に2700万円とはいささかやり過ぎなような気もするが、タッカーにとってNBAチャンピオンを祝うにはこれだけの価値があるという喜びの表れとも言える。
優勝直後の記者会見では、エースのヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス)も、タッカーの常軌を逸した偏愛ぶりに言及。
この世界に一足しか存在しないタッカーならではのウェアラブルトロフィーは、チャンピオンリングと並べて、自宅で最もお気に入りのスポットにディスプレイされるに違いない。
文=Meiji