インハイ出場
開志国際キャプテンの
『俺のバッシュ』

NBAの2021-22シーズンは、まもなくレギュラーシーズンの折り返し地点を迎える。安全・衛生プロトコルによる部分的な戦力の上下はあるものの、クレイ・トンプソン(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)や八村塁(ワシントン・ウィザーズ)をはじめとする離脱者も戦線に復帰。これから冬のトレードマーケットを控えているとはいえ、概ねリーグのパワーランキングの格付けは済んだ印象だ。
開幕当初は圧倒的な戦力を有するブルックリン・ネッツや、ラッセル・ウェストブルックを加えて豪華ビッグ3を形成したロサンゼルス・レイカーズがリーグを制圧するかのように思われていた。しかし、蓋を開けてみると両者ともに首位堅守とはならず、現在の順位表は多くの人の期待を良い意味で裏切る結果となっていることだろう。
そのため、今シーズンはNBAの博識者たちも見逃していた球団の台頭が目立つ。かつてアメリカ代表やサンアントニオ・スパーズでも分析担当を務めた『ESPN』の敏腕アナリスト、カーク・ゴールズベリーは、昨シーズン比で最も勝率がアップしている球団をグラフ化。以下ではそのデータをもとに、現状の“最優秀躍進チーム”をランキング形式で紹介していく。
昨シーズン比勝率:129.4パーセント
21-22シーズン勝率:60.0パーセント/20-21シーズン勝率:30.6パーセント
キャバリアーズは、まさに今シーズンの“Xファクター”と言うにふさわしい存在だ。ネガティブは昨シーズンチームのエースを担ったコリン・セクストンの不在以外は見当たらず、思い切りの良さに拍車がかかったダリアス・ガーランドの成長、5度のオールスター選出歴を持つケビン・ラブの復調、そしてリッキー・ルビオ、ラジョン・ロンドという経験豊富な正統派ポイントガードの加入など、ポジティブな要素の全てが噛み合っている印象を受ける。
なかでも、ドラフト3位指名で加入したエバン・モーブリーとリーグトップクラスのリムプロテクターとして評価されるジャレット・アレンの相性は、JB・ビッカースタッフにとっても嬉しいサプライズだったに違いない。今シーズンのキャブスは、100ポゼッションにつき相手に与える失点を示すディフェンシブレーティングで、リーグ3位の105.0失点をマーク。昨シーズンが113.5失点でワースト5位だったことを思えば、劇的変化と言っても過言ではない。また、アフロヘアと可愛らしい笑顔で愛されるアレンが、リーグ全体2位となるフィールドゴール成功率69.9パーセントをマークしていることについても特筆しておくべきだろう。
モブリーは新人ながらチームをけん引する活躍を披露している[写真]=Getty Images
そこにストレッチ性能の高いラウリ・マルカネンも加わり、勝率は昨シーズン比で129.4パーセントも向上。ディフェンス面が大きな鍵を握る現代バスケにおいて、今年のオールスターゲームの開催地に拠点を置くキャブスは、ポストシーズンもダークホースの一角として警戒されるはずだ。
昨シーズン比勝率:121.2パーセント
21-22シーズン勝率:64.3パーセント/20-21シーズン勝率:43.1パーセント
一体、何人がレギュラーシーズンの折り返し地点で、ブルズがイーストの首位に立っていることを予想していただろうか。
現在はコアメンバーの不在で停滞気味だが、ビリー・ドノバン率いる古豪は花々しい復活を遂げた。一時は退団も危惧されたザック・ラビーンは、昨シーズン途中に加入したニコラ・ブーチェビッチに加えて、デマー・デローザン、ロンゾ・ボール、アレックス・カルーソなど多様なタレントを携え、伸び伸びとプレーしている姿が印象的。メディアセッションでもチームメートに賛辞を送るシーンを度々見かけ、チームは過去数年で最も充実している様子がうかがえる。
ラビーンは昨季退団が噂されるも、今季は充実したシーズンを過ごしている[写真]=Getty Images
ネットレーディングはリーグ全体10位の2.1と、それなりの出来だが、それでも首位を堅守しているのは勝負強さの証明とも取れる。それには、スコアラーとしてのデローザンの存在があまりにも大きい。1試合平均25.6得点は、キャリア2位の好成績。また、デローザンはミッドレンジのスペシャリストでありながら、スリーポイント成功率も34.7パーセントでキャリアハイを更新中だ。さらに、今年はじめに『StatMuse』が公開したデータによれば、同選手は第4クォーターでの得点率でリーグトップの数字を叩き出しており、NBA史上初の2試合連続のブザービーターなど、試合終盤にハイライトを量産している。
デローザンは2度の決勝弾を沈めるなど勝負強さが光る[写真]=Getty Images
昨シーズン比の勝率はキャブスに次いで121.2パーセントと高水準をマーク。ラビーンやボールら主力が復帰すれば、2010-11シーズンぶりのカンファレンスファイナル進出も現実的な目標となるだろう。
昨シーズン比勝率:117.9パーセント
21-22シーズン勝率:72.1パーセント/20-21シーズン勝率:54.2パーセント
王朝復権に歓喜しているNBAファンは少なくない。過去2シーズンは主力の不在により我慢が続いたが、名将スティーブ・カーはその間も着実にチームの底力を高めてきた。
トンプソンの復帰は他チームにとって大きな脅威だ[写真]=Getty Images
自信をつけたジョーダン・プールは、得点、リバウンド、アシスト、フィールドゴール成功率のすべてでキャリアハイを更新しており、チームの勝利に必要不可欠なピースとしてMIP級の活躍を継続中。また、トレード要因と揶揄されてきたアンドリュー・ウィギンスもエースを支えるセカンドスコアラーとして、ドラフト1位のポテンシャルを遺憾なく発揮している。
無論、アンドレ・イグダーラの復帰や、ゲイリー・ペイトン2世、ネマニャ・ビエリツァ、オット・ポーターJr.をはじめとする隙間を埋めるような的確な補強策も功を奏している。攻守の潤滑油となるドレイモンド・グリーン不在時にもまくられるシーンが少ない理由は、ベンチプレーヤーの貢献の賜物にほかならず、現在のウォリアーズは試合をとおして安定したパフォーマンスを発揮。その結果、ネットレーディングは驚異の8.0をマークし、堂々のリーグ1位に君臨している。
復帰が待望されたクレイ・トンプソンも戦列に復帰し、チームのムードは高まる一方。数年の鬱憤を晴らす準備は整った。
上位3チームの以下には、ミネソタ・ティンバーウルブス(昨シーズン比勝率:113.7パーセント)、メンフィス・グリズリーズ(昨シーズン比勝率:114.6パーセント)、トロント・ラプターズ(昨シーズン比勝率:113.7パーセント)が続いているが、その数値はいずれも僅差で、数週間で順位が激しく入れ替わる状況にある。
一方、カワイ・レナードとポール・ジョージの二枚看板を欠くロサンゼルス・クリッパーズ(昨シーズン比勝率:83.6パーセント)をはじめ、ポートランド・トレイルブレイザーズ(昨シーズン比勝率:83.6パーセント)、アトランタ・ホークス(昨シーズン比勝率:85.0パーセント)など、勝率低下が著しい球団は、そのデータに比例するかのようにプレーオフ圏外に沈んでいる。
Better Or Worse. What Jumps Out? pic.twitter.com/jKonNky84s
— Kirk Goldsberry (@kirkgoldsberry) January 11, 2022
※本稿のデータは、1月19日執筆時点のもの。
文=Meiji