2022.05.11

カリーがインタビューで「キングスにトレードされた気分」とコメントした理由とは

「僕らは一夜にしてキングスにトレードされたような気分だったよ」と語ったカリー[写真]=Getty Images
某ストリートメディアのシニア・エディターを経験後、独立。ひとつのカルチャーとしてバスケットボールを捉え、スポーツ以外の側面からもNBAを追いかける。

 現在プレーオフを戦うゴールデンステイト・ウォリアーズは、メンフィス・グリズリーズとのシリーズを3勝1敗でリードしている。しかし、第4戦の白星は決して誇れるようなゲームではなかった。

 ウォリアーズは天下無敵のスプラッシュ・ブラザーズを擁しているにもかかわらず、試合開始から15本連続で3ポイントシュートを失敗。スコアも101ー98と拮抗しており、グリズリーズが絶対的エースのジャ・モラントを欠いていたことを考慮すると、結果以上に課題が残る一戦だったと言える。

 そして、この試合スティーブ・カーヘッドコーチが新型コロナウイルス感染症の陽性判定を受けたため、アシスタントコーチのマイク・ブラウンがHC代行を務めた。ブラウンはティップオフの数時間前、来シーズンからサクラメント・キングスの新指揮官に就任することが発表されたばかりだった。

 第4戦で32得点を記録したステフィン・カリーは、出来の悪さとブラウンの去就のニュースを掛けて、試合直後のインタビューにおいて以下のようなコメントを残している。

「ウォリアーズの数ある歴史のなかでも、シューティングは史上最悪だった。彼(ブラウン)は24時間で2度もヘッドコーチに任命されたからね。僕らは一夜にしてキングスにトレードされたような気分だったよ。どう言葉にしたらいいか分からないね」

 キングスは2005-06シーズンを最後にPOから遠ざかっているが、ウォリアーズはその間に3度のリーグ優勝を経験しており、戦績の差は一目瞭然だ。こうした背景もあって、カリーのコメントがキングスを揶揄するように聞こえた人も多いことだろう。

 ポストゲームのインタビューではすぐさまこの発言に説明が求められたが、カリーは決してキングスを口撃したわけではないと弁明している。

「(あの発言は)マイクがコーチだったからだよ。彼が(キングスの)HCに就任したという話題が広く報道されていたから、僕たちは全員トレードされたように感じたということだった。事実、彼は今夜は間違いなく僕らのヘッドコーチだった。つまり、僕らがどのようにプレーしたかではなく、キングスのヘッドコーチになるマイク・ブラウンが率いたという雰囲気のことを言いたかったんだ」

 ブラウンはコーチとして素晴らしい経歴を残してきた。名将グレッグ・ポポビッチのACとしてキャリアをスタートしたブラウンは、クリーブランド・キャバリアーズを率いていた2009年に最優秀コーチ賞を受賞し、オールスターゲームでもHCを担当。また、2020年からはナイジェリア代表のヘッドコーチに就任し、東京オリンピック前の親善試合では絶対王者のアメリカ代表に勝利した。

 そのブラウンはウォリアーズで2度のリーグ優勝に貢献。2017年にも離脱を強いられたカーHCに代わってウォリアーズを率いた時期もあり、11勝0敗という圧倒的な成績でHC不在を見事に埋めてみせた。カリーはそうした長年の信頼関係もあって、簡単な言葉でブラウンと「さよなら」をしたくはなかったのだろう。

 同じく試合後にメディアの取材に応じたブラウンは、カリーについて「ステフは最も一緒にいることが簡単なスーパースターなんだ。彼のそばにいるだけで、彼がいつも次はどのようにしてチームを助けられるかがわかる。彼は常に次のプレーを見据えているから、いつも自信に満ち溢れているんだよ」とその人間性と選手としてのクオリティを手放しで賞賛している。

 来シーズンは別々の道を歩む両者。キングスもドマンタス・サボニスを獲得するなどポテンシャルのある楽しみな球団だけに、両者の激突が待ち遠しい。

 文=Meiji

PO第4戦を指揮したブラウンは、来季キングスのHCに就任する[写真]=Getty Images

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