「みんなは今でも俺たちの間にはなんらかの問題があると思っている。でもそんなことないんだ」

　昨シーズン。ロサンゼルス・クリッパーズはウェスタン・カンファレンス8位の42勝40敗でレギュラーシーズンを終えるも、プレーイン・トーナメントで2連敗を喫してしまい、4シーズンぶりにプレーオフ進出を逃した。

　カワイ・レナードが2シーズンぶりに復活し、ポール・ジョージが健康体を取り戻して迎えた今シーズン。クリッパーズはウェスト5位の44勝38敗を残し、2シーズンぶりのプレーオフ出場を決めた。

　このチームがファーストラウンドで対戦するのは、ウェスト4位の45勝37敗を残したフェニックス・サンズ。4月17日（現地時間16日、日付は以下同）からサンズのホーム、フットプリント・センターでシリーズが幕を開ける。

　サンズにはデビン・ブッカー、クリス・ポール、ディアンドレ・エイトンに加え、NBA史上最高級のスコアラーとして知られるKDことケビン・デュラントというスーパースターがいる。

　今シーズン、両チームはレギュラーシーズンで4度対戦し、互いにアウェーゲームを制して2勝2敗。クリッパーズはジョージがケガのためシリーズ途中まで欠場の見込みながら、この2チームは現有戦力で戦ったことがないこともあり、注目を浴びている。

　クリッパーズは2月のトレードデッドラインでエリック・ゴードン、メイソン・プラムリー、ボーンズ・ハイランドを獲得。さらにロサンゼルス・レイカーズからユタ・ジャズへトレード後にウェイブ（保有権を放棄）されたラッセル・ウェストブルックをロスターへ加えた。

　クリッパーズへ加入後、先発ポイントガードとなったウェストブルックは、21試合の出場で平均30.2分15.8得点4.9リバウンド7.6アシスト1.1スティールにフィールドゴール成功率48.9パーセントをマーク。

　2021年のワシントン・ウィザーズ以来、2年ぶりのプレーオフを迎えるウェストブルックは、オクラホマシティ・サンダーで8シーズンを共闘したデュラントと、プレーオフで初対決することとなる。

サンダー時代のデュラント（左）とウェストブルック（右）[写真]=Getty Images

　13日にメディア応対をこなしたウェストブルックは、デュラントとの関係について「みんなは今でも俺たちの間にはなんらかの問題があると思っている。でもそんなことないんだ。俺からすれば、メディアやファンにとっていいネタなんだと思う」と口にしていた。

　あふれんばかりの闘争心を前面に押し出し、アグレッシブなプレーの数々でコート上にインパクトをもたらすウェストブルックに対し、デュラントは冷静沈着に振舞い、黙々と自身のプレーを遂行してチームを勝利へと導くべくプレーしている。

　今シーズン途中にブルックリン・ネッツからサンズへ移籍後、デュラントは8試合の出場ではあるものの、平均33.6分26.0得点6.4リバウンド3.5アシスト1.3ブロックに加えてフィールドゴール成功率57.0パーセント、3ポイントシュート成功率53.7パーセント（平均2.8本成功）という好成績を残している。

　そんな元チームメートについて、ウェストブルックはこう話す。

「でも問題なんてない。ケガから復帰し、彼がこれまでのキャリアで成し遂げてきたことを思うとリスペクトしかない。だから問題はないんだ。ただ、彼は俺が立ち向かっていくと分かっている。それに俺も彼が競い合うと分かっている。それがすべてさ」

　デュラントは通算11度のプレーオフで、NBA歴代4位の平均29.4得点を誇るスーパースコアラー。ここ数年、クリッパーズはデンバー・ナゲッツのニコラ・ヨキッチ、ダラス・マーベリックスのルカ・ドンチッチ、ジャズのドノバン・ミッチェル（現クリーブランド・キャバリアーズ）といったスター選手たちと対戦してきたのだが、ベテランフォワードのニコラ・バトゥームはデュラントをこう評していた。

「僕は彼らのことをリスペクトしている。でも彼は異なるカテゴリーにいる。KD（デュラントの愛称）は彼らとは別格なんだ。彼らは素晴らしい。けどKDはKDなんだ。彼はチャンピオンで、歴代最高の選手の1人で、リーグ史上でもベストなスモールフォワードの1人。彼のような相手とマッチアップするのは簡単なことじゃない」

　デュラントは208センチ108キロのサイズで小柄なガードのようにスムースにボールを操り、誰がマッチアップしていようと高精度なジャンパーを軽々と放り込んでくる。アイソレーションから1対1で攻め立てるだけでなく、チームメートたちとの連係からキャッチ&シュート、トランジションからイージーショットも決めることもあり、プルアップから繰り出す3ポイントシュートは脅威そのもの。

サンズにはブッカー（左）とデュラント（右）というリーグ屈指のスコアラーが2人もいる[写真]=Getty Images

　クリッパーズはジョージの出場が微妙のため、デュラントにはバトゥームやマーカス・モリスSr,、ロバート・コビントンを刺客として送り込んでくるだろう。

　そして勝負どころでは、リーグ有数のディフェンダーとして定評のあるレナードをストッパーとしてぶつけることが予想されている。

　サンズとクリッパーズのシリーズは、ウェストブルックとデュラントによる元チームメート同士の対決だけでなく、レナードとデュラントの超豪華なマッチアップにも期待したいところだ。