2023.04.17

レイカーズで八村塁を支えるフィル・ハンディAC「レブロンから得られることは多い」

史上最高の選手の一人であるレブロン(左)とプレーする機会を得た八村(右)[写真]=Getty Images
ロサンゼルス在住。1995年に渡米、現在は通信社の通信員として、MLB、NBAを中心に取材を行っている。

 八村塁がロサンゼルス・レイカーズにトレードとなり、はじめてホームのクリプトドットコム・アリーナで練習を行ったときから指導しているのが、フィル・ハンディアシスタントコーチ。2011年にレイカーズの選手育成コーチになって以降、コービー・ブライアントレブロン・ジェームズカイリー・アービングカワイ・レナードらから厚い信頼を受けるなど、多くのNBA選手から頼られるコーチだ。

 NBAでも有数の育成コーチとして知られ、キャバリアーズでACを務めた2015-16シーズンから3シーズン、ラプターズのACとなった2018-19シーズン、そして再びレイカーズに戻り、ACに就任した2019-20シーズンと5年連続でNBAファイナルに進出し、3チームすべてで計3度の優勝を経験。大舞台で戦ってきた選手たちの縁の下の力持ちとなった。

 八村自身も、レイカーズのゲームにどう絡んでいけばいいか悩んでいたときに「フィルとも、ずっと毎日のように話しています」と語るなど、プレー面のみでなく、精神面でも選手の支えとなっている。

トレードでシーズン途中に加入した八村を支えるハンディAC(右)[写真]=山脇明子

 レギュラーシーズンも残り数試合となった試合前、ハンディACに八村について伺った。

八村の成長を加速させる育成コーチ『もっといいディフェンダーにしてみせる』

ーー八村塁(以降塁)がレイカーズに移籍してからのプロセスをどのように見ていますか?

ハンディAC 塁は信じられないほどの素晴らしい精神を持った若者の一人です。才能に満ち溢れた若手選手で、とても強い。多くの人は、彼のスキルセットを理解していないと思います。彼はいいシューターであり、とてもいいディフェンダーです。ミッドレンジで優れた選手であり、リムでも得点できる。そして、まだまだ学んでいます。彼のボールハンドリングもとても良くなっています。私は、彼の潜在能力は非常に高いと思っています。

ーー彼が持つスキルは、レイカーズにどのようにフィットすると思いますか?

ハンディAC すべてでフィットします。塁は多くの選手にマッチアップの問題を起こします。塁に大きな選手をつけても、大きな選手にとって塁はあまりにも速いし、小さなガードをつければ、塁はその選手よりもあまりにも強い。彼はレブロンやAD(アンソニー・デイビス)を助けることができる存在です。サイズがあるウィングとしても貢献できます。とてもいいリバウンダーであり、ブロックショットの才能も見せ始めています。彼のサイズ、強さ、得点能力はこのチームの大きな武器です。

ーー特にトレード期限後は、チームにアジャストするのに少し苦しんだように見えました。そのときは、どのように彼と話していたのですか?

ハンディAC 彼が苦しんでいたとは、私は思っていません。環境が変化したということだと思います。トレードにより、選手たちは新しいチームメートやコーチングスタッフ、新たな都市と自らを取り巻く環境がすべて変わります。その中で彼はこのチームにおける自らの役割を見出し、アジャストしようとしていました。そして私は毎日、塁に『頑張り続けろ』と言っていました。『私たちも君の毎日の練習に一貫性をもたせるし、日々、着実にアプローチできるようにする。だからやり続けろ。そうしているうちにうまくいくから』と言い続けていました。

ハンディACの指導を吸収し、レイカーズにアジャストしていった八村[写真]=山脇明子

 彼は本当によく頑張っていました。私たちが彼に求めたことをすべて受け入れ、今では素晴らしいチームプレーヤーとしてやってくれています。正直、慣れなければならなかったのは、塁だけではありません。チームメートもコーチングスタッフも彼のことをもっとよく知る必要がありました。人は誰でもアジャストするのに少し時間がかかるものです。今、彼がこのチームにどれほどのことをもたらしてくれているかを見て、うれしく思います。

ーーチームにフィットしようとしている間、波もありましたが、それを乗り越えてきました。なかなかうまくいかなかったとき、彼が自信を失っていると感じたことはありますか?

ハンディAC 得点する機会がある試合があれば、その機会がない試合もあったというだけで、それが自信の低下に繋がることはなかったと思います。その“機会”というのは、時に対戦相手にもよりますし、試合のシナリオによっても変わります。私から見れば、塁は常に自信に満ち溢れていましたし、コートに出れば、いつもプレーする準備ができていました。試合を重ねるごとに彼はアジャストし、自信を増しています。このチームでプレーすればするほど彼の役割は増し、チームメート、コーチらすべての人からの信頼度も高まっています。

ーー塁のディフェンス面での成長はどのように見ていますか?

ハンディAC 塁がこのチームに来たとき、私が最初に彼に伝えたことは、『君をもっといいディフェンダーにしてみせる』ということでした。彼のサイズ、強さ、運動能力を生かしてリバウンド、阻止、ブロックショット、これらの3つの面で優れたディフェンダーになれるように厳しく指導してきました。そして彼は日々成長しています。

ーーレブロンとプレーすることは、塁にとってどれほど価値のあることだと思いますか?

ハンディAC レブロンとプレーすることは、塁に起こり得る最高のことの一つだと思います。それはどの選手にとっても同じです。史上最高の選手の一人と一緒にプレーする機会なのですから。レブロンと一緒にプレーすることで、バスケットボールについての知識、競争心、ゲームへの理解、どのように努力するか、非常に多くのことを学べます。塁がこのチームに来て、レブロンから学べることをどれほど喜んでいるかは私にもわかります。レブロンと塁は同じようなポジションですし、自らのキャリアをより高いレベルに押し上げ続けていくために、レブロンから得られることはあまりにも多くあります。

レブロンとともにプレーする貴重な経験は、八村のキャリアにとっても大きな分岐点に[写真]=Getty Images

ーー多くの人が、塁はカワイ・レナードに似ていると言いますが、ラプターズ時代にレナードを指導していたあなたはどう思いますか?

ハンディAC とても似ています。すごく似ています(笑)。二人は違う選手ですが、特徴やサイズ、得点能力、塁はカワイのように大きな手を持っていますし、カワイのように強い。そして、どちらもマッチアップを引き起こします。塁のプレーを見ていると、カワイを思い出させるものがあります。再度言いますが、彼らは二人の異なる選手です。ですが、たくさんの類似点があります。塁にはカワイのいろんな面を自分のプレーに取り入れ、その後自分がどんな選手になれるか見てほしいと思います。

「カワイ(右)を思い出させる」と語ったハンディACは、八村の今後の成長に期待を寄せる[写真]=Getty Images

取材・文・写真=山脇明子

BASKETBALLKING VIDEO