2023.05.24

指名前のアピール場「NBAドラフトコンバイン」で存在感を示した選手たち

招待選手のみが参加できるドラフトコンバイン。シカゴのウィントラスト・ アリーナに有望選手が集結した [写真]=Getty Images
某ストリートメディアのシニア・エディターを経験後、独立。ひとつのカルチャーとしてバスケットボールを捉え、スポーツ以外の側面からもNBAを追いかける。

 佳境を迎えるNBAだが、フロントは来シーズンへの準備を着々と遂行している。5月17日(現地時間16日)には球団の未来を占うNBAドラフトロッタリー(抽選会)が開催され、サンアントニオ・スパーズが1位指名を獲得。チームを率いる名将グレッグ・ポポヴィッチヘッドコーチは、最上位指名権の獲得を受けて、ビクター・ウェンバンヤマ(メトロポリタン92/フランス)と会談するためにフランスへと飛び立ったことが報告された。

 一方、選手たちにとってもドラフトは今後のキャリアを左右する大きな目標であり、一生に一度の晴れ舞台である。プロ入りのルートはドラフトに限定されないものの、プレーヤーとして球団から指名されることほどの名誉はない。

 だからこそ、NBAデビュー目前の選手たちが一堂に会するドラフトコンバインは、自身の価値やポテンシャルをアピールする貴重な場だ。招待選手のみが参加できるこのショーケースは、球団のゼネラルマネージャーやコーチ、スカウトが参加し、オンコートドリル、身体測定、スクリメージ、個人面談などを実施。緊張下で真価を示すことは指名順位に大きな影響を及ぼし、とりわけ当落線上にいる選手にとっては、仮にドラフトで指名されなくともサマーリーグ招待につながるなど、重要な機会となる。

『The Athletic』でNBAコラムニストを務めるジョン・ホリンガー氏は、例年以上に競争力の高かった「NBAドラフトコンバイン2023」参加者の中から、存在感を示した選手をピックアップした。

■オリヴィエ・マクサンス・プロスパー(マーケット大学/パワーフォワード)

コンバインでは垂直跳びで好記録を残したオリヴィエ・マクサンス・プロスパー [写真]=Getty Images

 カナダ出身のプロスパーは、お世辞にも今シーズンのNCAAで突出した選手とは言い難く、指名予想のモックドラフトにも名前の記載はない。しかし、2度の転校を経て今シーズンをマーケット大学で過ごしたパワーフォワードは、1試合平均得点を前年の6.6得点から12.5得点までアップし、リバウンド、フィールドゴール成功率、スリーポイント成功率でカレッジハイを更新した。

 初日のスクリメージでは、ゲームハイの21得点をマーク。パワーランキング上位のベイラー大学戦で24得点をマークした攻撃力がフロックではないことを証明してみせた。

 身長は靴を脱いだ状態で200センチ、ウイングスパンは215.9センチが計測されたが、特筆すべきは垂直跳び。彼が記録した88.9センチは、コンバインでも2位の好記録だ。

 一方で、これだけの恵体とアスレチック性があるもの、0.1ブロック、0.9スティールという低調なディフェンススタッツは看過できない。また、0.7アシストという数字が示すとおり、ボールムーバーとしての技術も疑問符が残る。もちろん、これらは伸び代としても捉えることができ、ホリンガー氏は球団の目に止まれば、1巡目最後尾での指名もありえるとしている。

トリスタン・ブクチェビッチ(セルビア・KKパルチザン/センター)

所属チームでは出場機会が限られるものの、ドラフトでは2巡目での指名予想 [写真]=Getty Images

 ヨーロッパからの参加者は珍しいが、セルビアのKKパルチザンでプレーするブクチェビッチは、スクリメージで10本のショットで21得点を記録すると同時に、フロアスペースの能力値の高さを示した。

 イタリア生まれのブクチェビッチは、同国でプロとしてプレーした父を持つ。ユース時代はルカ・ドンチッチ(ダラスマー・ベリックス)を輩出したレアル・マドリードで過ごし、2019年に同球団でプロデビュー。しかし、3年間の大部分をBチームで過ごしたあと、2022年にKKパルチザンへ移籍を果たしたものの、国内リーグで21回の優勝、ユーロリーグ制覇の実績を持つ強豪では潤沢なプレー時間を確保できていない。

 それでも211.5センチの20歳は近年、ドラフトレーダーで反応を示す選手だった。予想では30位後半から45位中盤での指名が見込まれており、シャーロット・ホーネッツやオクラホマシティ・サンダーなど、本年のドラフトでその域の指名権を複数所有する球団にとっては、可能性を秘めた選手に映ることだろう。

アマリ・ベイリー(ベイラー大学/ポイントガード)

アマリ・ベイリーはかつて全米トップ10に名を連ねた実力者 [写真]=Getty Images

 ベイリーは、「Class of 2022」で全米トップ10に名を連ねる実力者だった。高校卒業後はカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)に進学すると、今シーズンは平均11.2得点2.2アシスト、3ポイント成功率38.9パーセントの成績を残した。

 このスタッツを見る限り、スコアリングガードのような印象を受けるかもしれないが、元々はプレーメイキングの素質が評価されているプレーヤーだ。2022年のジョーダン・クラシックでは15得点6アシスト、3ポイント成功率75パーセントを記録。コンバインのスクリメージも2試合で14アシストをマークし、優れたコートビジョンでNBAのフロント陣にアピールしてみせた。

 懸念点は、191.1センチというサイズ感と体の線の細さだろう。UCLAへの復帰も選択肢として残されているようだが、もしプロ入りを決断すれば1巡目後半から2巡目前半の指名が有力視されている。

文=Meiji

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