2019.09.07

八村塁と篠山竜青を欠いた日本代表、残る10人でモンテネグロに一矢報えるか

ファジーカスは31得点9リバウンドの大車輪の活躍を見せた [写真]=fiba.com
バスケはもちろん、サッカーや野球、ラグビーにも精通する“球技ライター”

 日本代表は9月5日のアメリカ戦を45-98で終え、加えて試合後には八村塁(ワシントン・ウィザーズ)と主将の篠山竜青川崎ブレイブサンダース)がチームを離れた。残る10人にとっては大きな試練だったが、チームはそれを乗り越えられなかった。

 1次ラウンドを3連敗で終えた日本は順位決定戦に進み、7日にニュージーランドと対戦。ニュージーランドは8月12日と14日に強化試合を戦い、1勝1敗だった相手だ。タイ・ウェブスター、コーリー・ウェブスターの兄弟で組むバックコート陣を中心に早い展開を好み、3ポイントシュートを多投するスタイルだ。

 試合の入りはニュージーランドのペース。日本は第1クォーター残り4分33秒の時点で12-24まで差を広げられてしまう。ここは直後にコートへ入った安藤誓哉アルバルク東京)、安藤周人名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)が流れを引き戻すプレーを見せた。

 日本はニック・ファジーカス(川崎)の3ポイントシュートとセカンドチャンスポイント、渡邊雄太(メンフィス・グリズリーズ)のフリースローなどで連続9ポイントと追い上げる。ニュージーランドベンチはたまらずタイムアウトを取った。

 日本はその後も安藤誓、ファジーカスの3ポイントシュートなどで追い上げ、第1クォーターを29-29のタイで終えた。ファジーカスは10分間で17得点の荒稼ぎだった。

「恥ずかしい試合」と試合を振り返った渡邊 [写真]=fiba.com

 しかし試合は第2クォーターから一気に暗転する。渡邊は振り返る。

「ベンチから出てきた誓哉さんや周人ががんばってくれて、残り5分を5点ほどで抑えられた。第1クォーターが終わった段階では、自分たちのペースに持ち込めつつあるかなと感じていました。でもああいうよく走るチームに対して、途中から対応ができなくなっていた。最後なんて相手も遊んでいた……。恥ずかしい試合でした」

 第2クォーターに日本が挙げた得点はわずか10点。この10分間でビハインドを16点まで広げられてしまった。

 ニュージーランドはコーリー・ウェブスターが持ち味を存分に発揮し、パワフルなドライブと3ポイントシュートで日本を振り回す。

コーリー・ウェブスターには27得点をマーク [写真]=fiba.com

 田中大貴(A東京)はこう振り返る。

「(相手が)速く攻めてくるというスカウティングはありましたが、その中でも決めてくる9番(コーリー・ウェブスター)の力はすごいと思います。一人ひとりがフィジカルでやらせないところは必要だったと思います」

 日本は大量55点を奪われ、前半を折り返すことになった。

 第3クォーターもニュージーランドのパワーフォワード・アイザック・フォトゥーに9点を決められリードを21点差まで広げられる展開。日本はファジーカス、比江島慎宇都宮ブレックス)らがスコアを重ねていくが詰められない。

 相手の速攻に振り回され、3ポイントへのコンテストも後手。八村、篠山の不在はあるにせよ、不甲斐ない展開が続いてしまう。

 日本は第4クォーターの終盤、竹内譲次(A東京)がスティールから「コースト・トゥー・コースト」で決めたダンク、安藤周の今大会初得点と、ささやかな抵抗は見せた。しかし最終的に日本はすべてのクォーターでニュージーランドにアドバンテージを奪われ、26点以上を許し、81-111の大敗を喫した。

 渡邊は沈痛な表情で、反省の弁を述べていた。

「自分自身もこんな試合になるとは思っていなかった。向こうの方が勝ちに対してハングリーだったのかなと思います。このままでは日本に帰れない。沢山応援してくださっている方、代表合宿一緒にやって落ちたメンバーもいる中で、選ばれた12人としてふさわしくない、絶対やってはいけない試合だった」

 そんな試合の中にも「輝き」はあった。日本は相手を7本上回る16本のオフェンスリバウンドを奪い、セカンドチャンスからの得点で相手を上回った。ファジーカスは31得点を挙げ、八村の穴を埋める活躍を見せた。

 ファジーカスは言う。

「(八村)塁がいなくなり、オフェンスの得点源が無くなるのは分かっていた。(自分が)国際試合で30点近く取れることを証明したかったし、それができた。次のモンテネグロ戦もアグレッシブに戦っていきたい」

篠山の穴を埋めるため約31分間プレーした田中 [写真]=fiba.com

 篠山が欠場した中で、田中はポイントガードとしての重責を担い、30分59秒のプレータイムを得た。彼はこう述べていた。

「HCから色んなフォーメーションの指示は出ますけれど、プッシュできるところはプッシュしようと声をかけてやっていました。ここまで来て、こういうレベルで試合ができるわけなので、開き直ってどんどんチャレンジすればいい。持っているものをぶつけて、足りなかったものをこれから先どう伸ばしていくかだと思うので、変に縮こまる必要はないと思います」

 今大会のラマス・ジャパンは、試合のペースを少し落とした戦いを志向していた。アドバンテージである八村が去り「守備から速攻」というオプションの優先順位はどうしても上がる。速攻を出す前提は堅い守備だが、ニュージーランド戦はそこが機能せず、混乱してしまった。

 もちろん中1日の再建は容易でない。しかし日本バスケにはFIBAの制裁処分を乗り越えた、W杯1次予選の4連敗を乗り越えた「カムバックの歴史」がある。

 最終決戦は9日のモンテネグロ戦。日本は攻撃の思い切りを失わず、守備のやれることを整理し、相手に一矢を報いてW杯を終えて欲しい。

文=大島和人

BASKETBALLKING VIDEO